労働新聞 2008年4月25日号・4面 労働運動

スト打ち抜き「5200円」
勝ち取る
会社への怒りバネに
24時間スト貫徹

闘いの成果、波及させたい

小田急バス労働組合
畑佳幸・委員長、
池尻司・副委員長に聞く

 〇八春闘は中小を中心とした後半戦のまっただ中だ。とりわけ私鉄総連傘下の中小組合はストライキなどで果敢に闘っている。三月二十五日の統一闘争日には全国で四組合がストを打ち抜いた。その中でも東京・多摩地域や川崎市などに路線をもつ小田急バスでは二十四時間ストを行い、五千二百円を獲得した。経営側の低額回答を打ち破るには、ストなど具体的な闘いこそ有効だ。ストを闘い抜いた小田急バス労働組合(約八百人)の畑佳幸委員長と池尻司副委員長に聞いた。(見出し・文責 編集部)


 初めから「ストありき」と決めていたわけではない。しかし、私たち小田急バスでもこの六〜七年ぐらいは低額妥結が続き、今年に入り、諸物価が上るなど、いろいろな部分で組合員から不満の声が上がっていた。そして、私鉄総連の〇八春闘方針が、「今年は何が何でも月例賃金にこだわる」という中身であり、そのためにも月例賃金アップに取り組もうということで三月二十五日、二十四時間ストを行った。
 なぜ、二十四時間のストを打ち抜いたかと言えば、これまでにない会社のやり方に怒りが強かったからだ。

会社側の姿勢に強い怒り
 三月十九日の十五時までが中小の回答日で、当日十五時に交渉のテーブルについたが、会社がそこで出してきた回答文書に大きな問題があった。
 そこには賃上げについては「四千五百円」という数字を出してきた。これは昨年といっしょだが、臨時給については三六協定(時間外・休日労働に関する協定届)を一年間の期間にしないと、支払わないという条件つきだった。現在は三六協定の期間が二カ月だ。
 その上にその回答文書を、組合を無視した形で一方的に掲示した。これは一般組合員にそれを知らせて、下部から不安をあおることを狙ったものであり、組合分裂工作に等しい行為だ。
 またスト前日の夜中の一時半くらいに会社側はスト決行を知らせる張り紙に「組合の電話番号を書け」と言ってきた。これは利用者から組合に抗議が来ることを狙ったものだ。「会社もビラを作って、『ストライキは組合が勝手やっている』と知らせる」とまで言い出した。ストに入るまで数時間あり、解決までの猶予があるのに会社側は組合を悪者にするための算段ばかりやってきた。私たちとしてはいっそう怒りが強まった。
 ストに入っても会社側は謝罪を行わず、結局、私たちは二十四時間打ち抜いた。
 続いて四月二日からの四十八時間ストを設定、そこに向けた組合員会で、(1)回答文書を勝手に掲示したことへ謝罪を求める(2)会社側は解決に向けて真摯な協議をせよ(3)三六協定を条件から外せーーという申し入れを行った上で、それが解決しない限り、賃金交渉に入らないという決議をした。
 結局会社側は「職場に動揺と混乱を来したことは反省し、今後慎重に対応する」という文書を出し、そこから賃金交渉に入って、「五千二百円」という額を提示し妥結、時間切れで三十分ほどストに入ったが解除した。

「風穴開ける思い」で闘う/総連傘下、他産別から多くの激励
池尻 私たちはものすごく安い賃金で働いている。小田急バスでは初任給が十九万四千七百円だが、各種控除や課税で実際の手取りは十五万円ほどにしかならない。皆、ギリギリのところで闘っている。
 福田首相が本音はともかく「賃上げで内需拡大しないと」というように、私たちが低賃金のまま、何も消費しないともっと日本は悪くなる。ところが、もうかった会社というのは、絶対にカネを出そうとしない。一部の人がマネーゲームでうるおい、国が崩壊しかねないようなことに、風穴を開けてやろうという思いはあった。
 
 会社側が強引に回答書を張り出したときに、抗議の「本部声明」というのをつくった。それをすぐに各支部に配り、支部ごとにも声明をつくって、それを職場ごとに全部交換するなどして、単組内の連帯を強めて闘うことができた。
 こうした闘いや思いは周りに波及してほしい。その意味でも反響の大きさに喜んでいる。私鉄総連の全国各単組から檄文が送られ組合事務所が埋まるくらいだった。他産別からも同じ地域の武蔵野、三鷹などの市職労や、JR関係の労組、連合地協からも激励に来てくれた。
 また、利用者からも激励を受けた。私たちは回答指定日過ぎると、ストまでの間、組合の腕章つけて運転する。それもストに向けた利用者へのアピールになる。利用者は最初は文句を言いたそうだったが、説明すると「がんばってくれ」という応援が多かった。

池尻 スト直前、各職場を回ったが利用者のほとんどが「がんばれ」と言ってくれた。話すとわかってくれる。利用者にも励まされたストだった。
 利用者も同じ労働者だ。だから、労働者として「がんばれ」と本音が出ちゃう。

闘いの経験つなぐ/単組独自で沖縄研修
池尻 九八年に十七年ぶりに半日ストをやった。当時、私は支部長として現場にいたが、このままではストの経験者がいなくなると感じ、若い組合員になんとしてもストを経験させねばと思ってやった。それでストの経験、やり方はつないだ。

 また、翌九九年は、一時金について「冬は別途協議」という提案に対し、二十四時間ストを行った。また〇五年春闘でも二十四時間ストを闘った。

池尻 ストができる職場の態勢はつくっている。役員だけの団結ではなく、一般組合員の中に入り込んで組織をつくってきた。その努力は大変なものだ。そのことに時間は費やすし、本当に大変な思いをしてやっている。

 組合本部が持っている会社についての情報を、どれだけ正確に一般組合員に流すことができるかが重要だ。これによって一般組合員も私たち組合役員と同じ気持ちになれる部分が出てくる。会議も一日かけて行う。
 また、平和運動などの外の集会や学習会への動員を積極的にやっている。単組独自で沖縄研修を、五月の平和行進時期に合わせて単組独自で行っている。

労組は労組らしく/パートの待遇改善が課題
池尻 私たち中小は、大手の人には分からない賃金体系を導入させられ、低賃金が続いている。ストをやっても、必ずしも取れるとは限らない。しかし、格差をなくしていく、食えない人をなくしていく、こうした使命を労働組合はもっているはずだ。

 私鉄の経営者は労働者の賃金下げることが「経営手腕」だと思っている。そして、安全性というのが軽視され、その結果が、〇五年のJR尼崎事故や、バスなど交通産業で多発する事故につながっている。

池尻 ところが、かつて連合内の多国籍大企業のある労組幹部からは「自分たちは海外で競争しているのに、交通産業は規制で守られているではないか」という発言があった。労働組合の中からそういう声が上がって、私はそれが悔しかった。
 労働者としての意識を消させるような論調は強い。「労働者」という言葉が新聞から消えて、それに取って代わって「消費者」「生活者」という言葉でくくられてしまう。
 労働運動のリーダーが会社の代弁者のようになっている現状は間違いだ。「労働組合は労働組合らしく」ということが必要だ。
 バスの案内所には多くの女性のパートさんが働いている。今回のストが終わり、利用者から「賃金が上がって良かったね」と声をかけられたという。でも、実はその人たちの賃金は上がっていない。その人たちは運転手の嘱託とは違う賃金、雇用体系で、今回の賃上げの対象とはなっていない。これは悲しかった。

 毎年八月頃の賃金改定で行われるが、会社側は「今年は上げるよ」とは言っている。その人たちの待遇改善はこれからの課題だ。
 春闘での賃上げは大手から中小、中央から地方への波及など、全国すべての労働者につながっている。そういう意味で全国の労働者の賃上げの一翼を担っているという思いで闘い抜くことができた。


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