労働新聞 2008年4月5日号・3面 労働運動

08春闘
2年目の「有志共闘」
闘いの「当事者意識」広がる

怒りを要求にして力に
変えるべき

渡邉和夫
「有志共闘」座長・
フード連合会長に聞く

 〇八春闘は、金属労協(IMFーJC)傘下の自動車、電機などの低額回答をよそに中小やパートで成果が出てきている。三月三十一日に連合中小、パート両共闘が発表した集計によれば、中小共闘では妥結組合の六四・五%が、目安としてしていた賃金カーブ確保相当分(四千五百円)以上を獲得(昨年同時期は六一・六%)、パート共闘でも十七・九四円と、昨年同時期(十五・四円)を二・九円上回った。また、内需型産業を中心とした産別で構成される「有志共闘」でも厳しい環境の中、昨年を超える成果を獲得している。「有志共闘」座長で日本食品関連産業労働組合総連合会(フード連合)の渡邉和夫会長に聞いた。(見出し・文責 編集部)


ボリューム感増した「共闘」
 二年目を迎えた「有志共闘」だが、波及効果をより高めていこうという昨年からの議論もあって、セラミックス連合と自治労・全国一般評議会が新たに加わり、八産別の共闘となった。三月十四日までに、八産別八十四単組から状況報告が上がり集約された。現場、単組からの登録組合を増やそうという思いだったが、昨年の五十四単組から約三十単組増え、ボリューム感が増したといえる。
 有志共闘として〇八春闘に臨むにあたっては、わが国経済全体の問題として、外需依存から脱却し、内需産業とそこで働く労働者の底上げで、内需と消費拡大を図るということを強調してきた。こうした、闘いの「当事者意識」は昨年以上にあった。
 結果としては、十四日までに妥結した四十四組合で前年比百四十二円上回る、千百八十二円の賃金改善を獲得できた。それぞれの構成産別の努力もあり、一定の役割を果たしたと前向きに評価している。
 しかし、連合の高木会長の思いも同じかもしれないが、「反転攻勢」「格差是正」という意味では、小幅な引き上げにとどまったことは否めない。
 だが、かつて連合の中でこうした枠組みがなかったときと比較すれば、いわばJCの回答結果に大きく影響を受けてしまう部分に対し、別の流れ、波及力があるということを目に見える形で「認知」させた点は大きい。内需型産業が多く、地場産業的な要素も強いので、後に回りがちになるのだが、年初来から「前へ、前へ」と強調し、三月決着を一定程度実現できた。
 少なくとも、賃上げ額が前年実績を上回ったことで、後に続く中小での労使交渉に一定の波及効果をもたらすと言えるのではないか。

厳しい中、「共闘」組むことでがんばれた
 日本経団連の御手洗会長が経済財政諮問会議の席で賃上げについて「容認する」と発言したと伝えられ、福田首相が賃上げについて「要請」したりという状況もあって、「潮目が変わった。もっと強気に行ってしかるべき」という思いは強かった。
 しかし、三月十二日にJC加盟の自動車、電機の交渉結果が開き、その結果が重たかったのが、正直なところ、いろいろな意味で影響を及ぼしたと思っている。例えば食品の経営者にしても、それを見極めて回答している。消費は冷え込んでいる中で、内需産業を取り巻く環境が厳しい事情もある。
 今回、セラミックス連合が「有志共闘」に参加したが、セラミックスは改正建築基準法の影響で住宅関連が冷え込んでいる厳しい中でもがんばった。紙パ連合も、再生紙偽装問題など、市況が厳しい中での闘いだった。私たちフード連合でも同様の事情があったが、それぞれ役割を果たして、「皆が前に出て積極的に取りに行こう」という強い思いというのが、「有志共闘」を組んだゆえに広がった。
 「有志共闘」に参加した各産別の中では、第一次回答ゾーンに向け、一定の単組数を出すために相当な努力があったと思う。参加したからには応分の責任をそれぞれ果たさなくてはという議論が進んだ意味もあった。
 〇八春闘はまだ続いているが、今後の春闘のあり方については当然議論になっていくだろう。一律ベアという流れが変わったが、それが支払能力があるにもかかわらず、「月例賃金」のアップではなく、手当や一時金の増額という形になってきている。私たちが言う「賃金改善」というのは、本来そういう意味ではなかったはずだ。

適切な価格転嫁求め、産別として業界団体、労組へ要請
 私たちフード連合としては、「先行組合共闘」という形で十四単組が集まり、ヤマ場に向けて二回ほど、内部で交渉の進め方や「こういう目標値で行こう」などという議論を従来よりキツめに行った。
 また、交渉で想定され、結果としてもかなり影響したのが、昨年秋口からの食品原材料の高騰が始まり、それに伴う食料品の値上げが今年二月、三月ピークになったことだ。こうした中、「流通サイドに対して値上げのお願いをしており、賃金引き上げは理解を得られない」という経営側の理屈が出てきた。本来、賃金の引き上げの論議をする春闘と、食品の値上げは切り離して論議することがスジだ。
 こうした経営側の切り口に対して、単組だけではなかなか対応できないので、フード連合として、賃金引き上げの環境づくりのために流通業の業界団体、さらには、UIゼンセン同盟の流通部会、サービス・流通連合などに出向き、原料価格の上昇を適切に食品価格に転嫁することなどを求める要請も行った。
 穀物市況も非常に高騰しており、これは構造的な問題で、一過性ではない。海外との争奪戦になると、原材料をそこに依存している産業として、将来的にはもっと厳しい状況が来るだろう。
 この現状に対して、経営側は「だから厳しい」と言うが、そこで働く者がそれを了解したら、生活はもっと苦しくなる。そこではね返す力がなかったら、いつになっても苦しいままだ。闘い方もいろいろと工夫が必要だと思っている。

自給率向上求め、農政にモノ言う時期に
 これもまたフード連合としての課題だが、昨年、まさに年の言葉が「偽」で、とくに食品にまつわる偽装事件が多かった。「自分たちの職場から不安全なものは出さない」という内部的な意識の浸透というのはそれなりにあったと思う。ただ、食品業界全体で見ると、消費者の信頼を完全に得る道のりはなかなか遠いと感じている。
 同時に中国製ギョーザ問題や、海外に食品原材料を多く依存している現状というのは構造的な問題で、個別労使では対処できない。以前の企業別組合のスタンスでは、「安い海外原材料を安定供給できる努力をするべき」という加工食品メーカーと同じ考え方に立っていたが、そうではなくて、わが国の食料自給率を高めるためにも、日本の農政のあり方にもっと目を向けなくてはいけないという思いも出てきている。メーカー側も、中国のギョーザ問題のような事件がひとたび起きれば、企業の存立基盤が揺らぐ。こうした立場で組合としてモノを言っていく時期になっている。これは消費者の皆さんも同じ思いではないか。

労働運動の問題として「モノわかりいい」運動変えねば
 労働運動のもつ社会的影響力とか、意義とかが希薄になっている。あるいは、従来以上に「モノわかりがよく」なっている。組合のリーダーなのに、自分の個別労使交渉になると、会社の言い分に「その通り」としか言えない現状がある。これでは困る。役員をやっているのだから、ムリしてでも労使交渉のときは組合員の立場で、モノを判断しなくてはいけない。
 職場で働く人が皆、そうなのかといえば、決してそうではないはずだ。怒りを要求にして、方向性を示して、それを力にするということが必要だ。組合が大手正社員のサロンみたいな風情になってしまっている現状は変えなければならない。
 「企業の競争力をなくしたら雇用もすべてなくなる」という経営側との協調路線が、非正規労働者をこんなにも増やしてきた。その結果、若い世代の方が過酷な働き方をさせられているし、それは怒りにつながるはずだ。


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