労働新聞 2008年2月25日号・4面 労働運動

08春闘
地べたの組合もない
職場の声を発信

「非正規春闘」本気で取り組む

全国コミュニティ・ユニオン連合会
安部誠事務局長に聞く

 〇八春闘では当然ながら、大幅賃上げや中小底上げなどが大きな課題だが、増大し続ける非正規労働者の要求実現、均等待遇も特徴的なテーマとして提起されている。連合は〇八春闘を「格差是正春闘」と位置づけ、「非正規労働センター」を設置するなど非正規労働者の課題を全面的に掲げている。これを単にスローガンに終わらせないためにも、各労組、活動家はこの課題に注目し、積極的な役割を担わなければならない。以前から非正規労働者の課題に取り組んできた全国コミュニティ・ユニオン連合会(鴨桃代会長)の安部誠事務局長に、〇八春闘での取り組みなどについて聞いた。


連合に加盟、派遣労働者問題に着手
 私たちは、〇三年六月に連合に加盟した。現在もコミュニティ・ユニオン全国ネットワークの一員だが、一九九八年の労働基準法改悪、九九年の労働者派遣法改悪などの攻撃を次々に受け、これと闘うには、ナショナルセンターに結集する必要があると感じたグループが結集して全国ユニオンを二〇〇三年に結成した。
 全国ユニオンは三千三百人しかいないが、地べたの、労働組合もないような職場で働く人たちの生の声を多少とも分かっている。それを連合の中で、また世間に発信していくことが私たちの役割だと思っている。
 一つのエポックとして思い出すのは、〇五年の会長選挙だ。その年の七月に憲法問題、特に九条について連合として見解を出そうということで、連合のたたき台に対するアンケートが行われた。この中で、UIゼンセン同盟は「徴兵制のどこが悪いのか?」という形で自らの主張を行った。私たちも、連合案に批判があったが、まったく正反対の批判だ。そのUIゼンセン同盟出身の高木さんが、無投票で連合の会長に選ばれるという。それではということで、鴨会長が名乗りを上げた。結果は、白票を入れれば百五十近い批判票を獲得した。
 ただ、会長になって以降の高木さんに対してなんら他意はないというより、反エグゼンプション闘争、非正規問題、最近では、マクドナルド問題などへの積極的な言動、行動には敬意を表したい。連合会長として立派に職責を果たされていると思う。
 〇六年になると、ホワイトカラーエグゼンプションの問題が焦点となった。私たちが危機感を抱き始めたときに、マクドナルドの高野さんが仲間になってくれ、彼の労働実態(注)がメディアに大きく取り上げられ、エグゼンプションが導入されればどういうことになるかということが示され、このことも運動を盛り上げる大きな要素となった。大衆運動で労働法制を阻止したのは、初めての経験ではないか。ナショナルセンターの枠を超えて、闘いを盛り上げた結果だ。
 続いて、派遣労働者の問題に着手した。派遣関係の担当者が日雇い派遣の現場を体験するために、就労し、劣悪な就労実態を報告した。近所の高校生や中退者を集めて話も聞いた。聞くと、携帯電話での指示一つであちこち回され、拘束時間を考えれば完全な最賃割れ。「安い・不安定・危険」という三点セット、保険ももちろん入っていない。
 高校中退で四社勤めた子は、社会保険に入っている会社で働いたことがないという。使い捨てられているのに、本人は悲惨だと思っていない。子どもたちが何も知らないのは、かれらが怠け者とかではない。これは「大人のせいだ」と、涙が出た。
 財界とか厚労省は、「働き方の多様化」なんて言っているがとんでもない、日雇い派遣の人たちの働き方が証明しているように、企業にとってはきわめて都合のよい、「働かされ方の多様化」だ。

均等待遇/高齢者雇用の延長/派遣法の抜本改正
重点闘争設定して闘う

 連合は今春闘で「非正規も正規も働く仲間 賃金改善」というスローガンを掲げている。どこまでやれるか、各構成組織の努力にもよるが、五、六年前だったら考えられなかった。
 全国ユニオンは、それを踏まえて「均等待遇春闘」として闘っていきたい。
 具体的には、大きな柱として三点ある。
 一点目は、均等待遇の実現だ。非常に問題があるが、パート労働法が四月から施行される。「差別禁止」との文言をどう武器にして闘うかが問われている。
 この課題では、国際電話のコールセンターのKDDIエボルバでの闘いを重点的に闘いたい。百五十人くらいの職場で約三十人ぐらいが組合員だ。
 交換手さんの時給は最初千三百五十円。法定時間の二千時間働いても、年収はわずか二百七十万円だ。〇六年九月から、これまでの一年契約が三カ月か六カ月になり、交通費も出してもらえなくなった。
 なぜ、こんなに低賃金になったのか。これは交換手を、皆非正規社員に替えてしまったからだ。だから、元々の正社員の水準に戻せというのが私たちの要求だ。これから何波かの抗議行動を展開しつつ、スト権も立てて交渉に入る。
 二点目は、高齢者雇用の延長問題だ。六十歳以上の雇用延長の問題というのは、希望すれば、原則すべて雇用しなければいけない。だが、実際は査定ランクをつけるなど、ハードルを設けてあちこちでトラブルが起きている。すでに東京ケーブルテレビで、組合支部長が「スキルがない」ということで、彼女だけ六十歳になって雇い止めになった。私たちとしては、原則六十五歳まで、希望者はすべて現役時の状態で処遇せよということを、組合員のいる企業十社くらいには要求している。
 三点目は、派遣法の抜本改正だ。少なくとも九九年改悪以前の状態に戻すべきだ。一つは専門業務に絞り込んであくまで限定的にすべきだということ。二番目は、登録型派遣を禁止し、原則的常用雇用にせよ。三番目が、派遣会社による中間搾取、マージン(手数料)への規制だ。
 九九年の「原則自由」とした派遣法改悪は、日本の労働者にとって決定的な意味をもっていた。〇四年からは製造業への派遣も解禁された。
 こんにちの派遣法の問題というのは、いわばピンハネの問題だ。戦後、日本の労働者は、ピンハネの排除、それに労働時間の規制、つまり八時間労働制という二つの規制で、ささやかな生活というものを成り立たせていた。だから、この問題というのは日本の労働者にとって生命線だと思っている。

連合内部でも見習うべき闘いが
組織されていない82%の労働者に響く運動を

 連合、各構成組織の取り組みについて言うと、まだ全体として弱いが、具体的な取り組みが出てきている。例えば、全労金労組は、「ベア分は非正規に回せ」と闘って成果を得ている。私鉄総連も昨秋闘で「三年以上の非正規労働者を正規雇用にせよ」という要求を掲げ闘った。荒川区職労の非常勤職員の処遇改善への取り組みもある。自分たちも見習うべき闘いというのが出てきている。
 しかし、それらは全体から見ればわずかで、思い切って目線を変え、労働者全体を問題にした取り組み方をすべきだ。現在、労働組合の組織率は一八%しかない。「左派」を自称する人たちにも率直に言いたいが、その一八%の「既得権を守る」ことだけに関心を持ち、残りの八二%の人たちに響かない運動をやっていてもダメだ。国民運動にしないといけない。そのためにはもっと労働組合が外に、地域に出ていくことが求められていると思う。

ユニオン運動は面白い
 合同労組というかユニオン運動は何が面白いかと言うと、問題が解決するということ。解決しない問題というのはない。やっている途中で本人が逃げ出すのも一つの「解決」。相談が来ることから始まる。たいていは一人だ。本人の希望を聞く。本人が方向性をもっていないと、うまくいかない。逆に請け負ってはいけない。だから、自己決定責任というのは大きい。その上での「文殊(もんじゅ)の知恵」だし、支え合いだと思う。
 最近は中小組合を含めて、要求を出してもうまくいかないから、面白くない。達成感がない。ところが、それができる。若い人たちが、多く運動に参加してきている。例えばフリーター全般労組の仲間はこの一年くらいで五十件くらいの案件にかかわっている。そして、実際取り組み始めると、労働組合が「こんなに便利な道具なんだ」ということが分かって「面白がって」いる。
 組合運動を活性化するために、以前、活動家の短期交換留学もやった。復活させたいと思う。また今後は、学生を対象に「サマーセミナー」みたいのを開いたらどうかと思っている。
 私たちはケーススタディ、実例をたくさん持っている強みがある。
 いまは制度的な仕組み含めて、やればやるほど手応えのある結果が出てくる状況だ。

(注)日本マクドナルドの現職店長で、全国ユニオン・東京管理職ユニオン組合員の高野廣志さんが二〇〇五年十二月に東京地裁に提訴。会社側は「店長は管理職」としているが、実際には、店長には社員採用や店舗の営業時間など管理職に基づく権限がないことが明らかになり、今年一月二十八日、東京地裁は、同社の店長が労働基準法の時間外割増規制の適用除外となる「管理監督者」とは認められないと判断。同社に約七百五十五万円の支払いを命じた。


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