労働新聞 2007年10月25日号・4面 労働運動

連合の新政治方針を批判する

二大政党制に
犬馬の労をとるのか、
それとも挫折させ、
真の活路を切り開くのか

 十月十一、十二日に開かれた連合第十回大会は、「大企業正社員と公務員中心」の連合が、「非正規労働者や中小零細企業で働く労働者への支援・連携の強化、組織化の推進」を最優先する方針を決めた点に注目が集まっている。「非正規労働センター」(仮称)の設置を含め、これはこの間、中小を抱える産別を中心に「中小共闘」「パート共闘」の発展のために闘ってきた成果だが、中小、非正規労働者の要求実現と組織化はこれからで、まさにナショナルセンターの真価が問われる。先進的活動家の皆さんのいっそうの奮闘を期待したい。
 だが、もう一つ、注意を喚起しておかねばならない重要な問題がある。民主党支援をいちだんと強め「政権交代をめざす」とする政治方針である。これは、財界が画策する保守二大政党制の一方の装置である民主党を連合が支援を強め、「政権交代をめざす」もので、二大政党制に犬馬(けんば)の労をとるものである。にもかかわらず、大会では何一つ意見が闘わされず採択された。連合内部に異論がないわけではない。社民党支持の組合、活動家にとってはとても受け入れがたいはずだが、流れに抗して発言する勇気がなかったのだろうか。
 われわれは、この事態を看過することはできない。労働者階級の基本的利害にかかわり、わが国の政治変革にもかかわる問題だからである。
 この際、連合内外の先進的活動家の皆さんに、自らと非正規労働者を含む労働条件の改善のために闘うだけでなく、政治闘争に積極的に踏み込み、真正面から政治方針について争わねば、禍根(かこん)を残すことになると率直に警告したい。民主党がどの階級、誰のための政党か、本質を把握し、民主党のために犬馬の労をとるのではなく、二大政党制を挫折させ、真の活路を切り開くための真剣な議論と行動を開始すべきときではないか。

1、民主党への「政権交代」ーー二大政党制に犬馬の労をとる新政治方針
 連合は大会で、参院選での「与野党逆転」を、「『政権交代可能な政治体制』が現実的なものになった」と高く評価、来る総選挙で「民主党を基軸に、与野党逆転を勝ち取り、政権交代をめざす」ことを決定した。
 そのため、「この二年間、民主党への支援を強化する」として、具体的には「参議院民主党会派との法案対策などでの協議の強化をはかること」と併せて、「中央・地方における民主党の組織と活動の強化に協力する」と、民主党への支援を「組織と活動の強化」にまで踏み込んだ。
 さらに、国政選挙だけでなく、地方選挙でも、「民主党と連携して取り組むことを基本として、地方構成組織は積極的に候補者の擁立を進める。組織内候補は、民主党公認とするよう努めるとともに、当選後については連合推薦議員の統一会派の結成に努める」ことも決定した。
 これはこれまでにない連合としての民主党への肩入れで、まさに民主党への「政権交代」のために、二大政党制推進のために、あえて犬馬の労をとろうとする方針である。高木会長も「次の総選挙で民主党を中心とする野党勢力で衆議院の過半数を占められるようがんばり、政権交代をなんとしても実現したい」と述べた。
 来賓としてあいさつした小沢・民主党代表は、「力を合わせてがんばれば、強力な与党も打ち破れるとの自信を持てたことが最大の成果」と連合幹部を激励し、「来るべき衆院選は最終決戦の場だ」と強調、「政権交代」を実現すれば、国民の苦難が解決できるかのような幻想をあおり立てた。

2、小沢民主党は、財界の二大政党制の一方の装置
 「国民の生活が第一」を掲げ、グローバル化と「改革」政治に見捨てられた農民、建設業者などに照準を定めた小沢の選挙戦術が奏功し、自公与党を打ち負かして参院第一党になったことで、小沢民主党への幻想が広がっている。左派の組合活動家の間にも、「自公政権よりよりまし」「一度政権交代を」などの幻想が広がっている。
 だが、それらはいずれも根拠のない幻想で、誤った結論に導くと言わなければならない。
 肝心なことは、仮に民主党に「政権交代」したとして、「改革」政治で見捨てられた人びとの窮状を救えるのか、あるいは自公政権が踏み出した対米従属下の軍事大国化、米軍再編を阻止できるのか、ということである。
 民主党が今回の参院選でどんな政策を掲げたか、参議院でどんな法律を提案したかで判断するのは、あまりにも早計で一面的と言わねばならない。何を言っているかではなく、何をやってきたか、何をやっているか、実際の行動をある程度長期に観察してこそ正しく判断できるのである。
 小沢民主党の本質を判断しようとすれば、あらためて一九九〇年代の初めから彼がやってきた実際行動を振り返って見るべきで、それは二大政党制を実現するためのキーマンとして概括できる政治行動であった(民主党のマニフェストに誰はばかることなく書き込んでいる)。
 二大政党制とは、わが国多国籍企業を中心とする財界が、八〇年代後半以降、市場開放を余儀なくされ、自民党一党支配ではやっていけなくなって、それに代わる安定した政治システムとして追求するようになったものである。
 財界が呼びかけ、政治家、連合の幹部、マスコミも含めた民間政治臨調が政治再編の世論づくりの組織として発足する中、小沢は平岩・経団連会長らの庇護(ひご)の下、政治再編の表舞台の仕掛け人として登場した。九三年、小沢が自民党の最大派閥を飛び出し、新生党を結成、非自民連立の細川政権を成立させ、自民党一党支配を崩壊させる立役者となったのは周知の通りである。保守二大政党を実現するには、最大野党の社会党の解体が必要だったが、小沢は山岸連合会長と手を組んで社会党を非自民連立政権に引き込み、大臣病に感染させ、小選挙区制の導入を図って解体に道筋をつけた。
 さらに細川連立政権が実行したのは、自民党政権でさえやれなかったコメの自由化であり、小選挙区制の導入であった。未成立に終わったものの「国民福祉税」という名で消費税大増税を画策したことも付け加えておくべきだろう。
 その後、新進党、自由党と看板は変わったが、二大政党制を一貫して追求し、小渕自民党との連立政権も策した。そして二〇〇三年、奥田経団連が政党への資金援助を再開し、政治に口を出す姿勢に転じたとき、小沢はいち早く自由党を解散して民主党へ合流、二大政党制の動きを加速させたのである。
 昨年四月、代表になった小沢は、「自ら変わらねば」とにわかに「共生」「公正」「格差是正」などのスローガンを叫ぶようになった。だが、それは地方組織が弱体な民主党を連合を動員することで補い、参院選挙で「与野党逆転」を実現するための術策であって、真の狙いは二大政党制へ大きく歩を進めることにあった。先進国の保守二大政党制の一方は、労働組合を基盤に取り込んで初めて意味があるからである。昨年九月、民主党と連合が「ともに生きる社会」の共同宣言を発表、小沢の懐刀の平野元参議院議員を使って官公労の「左派」幹部工作を進め、一人区対策で連合会長・事務局長を引き連れて地方連合会対策を強化し、「与野党逆転」を説いて社民党支持の幹部をなびかせることに成功した。
 これが小沢・民主党代表の十五年来の実際行動である。「壊し屋」などと非難を投げつけられながら、財界人が一貫して小沢を擁護し、今日、期待を高めている事実は、小沢民主党がどの階級のための政党かをもっともよく物語るものではないだろうか。小沢民主党は、財界が望む二大政党制の一方の装置、しかも連合労働運動(その上層)を支持基盤にしようとする政党にほかならない。
 したがって、小沢民主党に「政権交代」したとして、労働者や国民の困窮化や国の進路での重大な転換など実現できるはずがなく、財界のもう一人の走狗として国民に犠牲を押し付けることになろうことは明らかではないか。
 民主党への「政権交代」をめざして、いちだんの支援強化を決めた新政治方針は、連合傘下の労働者の利害に反するものであり、財界の二大政党制を促進する反動的なものと言わなければならない。

3、二大政党制を挫折させるために、「議会主義の新党」へ行動を
 労働者階級と国民各層の苦難を解決し、対米従属の軍事大国化、米軍再編を阻止するために、先進的活動家は小沢民主党の「政権交代」の欺まんを見抜き、大衆の高まる不満とエネルギーに依拠して、二大政党制を挫折させ、真の活路を切り開くために戦略的な議論と行動を開始すべきである。
 二大政党制を挫折させるためには、議会の中に二大政党と明確な政策的対抗軸をもった、労働組合から見ても選択肢になりうる一定の議席数をもつ政党の構築が不可欠である。この党は、民主党のように議会内での法案提出に終始するのではなく、院外の大衆行動、国民運動を重視する必要があろう。二大政党だけに有利な小選挙区制下で議席を得るにも、悪政を打ち破るにも、労働者と国民の要求と力こそが確かだからである。わが党はこの間の政治再編の経過と現状から、社民勢力(社民党、新社会党)を軸により広範な人びとからなる「議会主義の新党」を提唱してきた。社民党の中には、民主党との選挙協力、「すみわけ」に活路を求めるムキもあるが、それは民主党次第の自殺行為で、地方や労働活動家の願いにそむくものである。民主党への幻想が広がっている今、社民勢力、とりわけ労組活動家の皆さんが率先して決断し、具体的な流れをつくられるよう訴えたい。
 わが党は、この「新党」には直接加わらないが、支援を惜しまない。
 併せてわれわれは、二大政党制を挫折させ、政治の根本的転換を実現するためには、政権を握る覚悟をもった革命的な労働運動の形成が不可欠で、それは革命的な政党なしにできないことを率直に訴えたい。先進的活動家の皆さんに労働党への結集を呼びかける。
 二大政党制は進んだとはいうものの、「道半ば」である。わが国支配層は列強の中で弱く、取り巻く内外環境も厳しくなっており、二大政党制の政策的違いを認めるほどの余裕はない。少なくとも三〜六年は、議会政治の不安定化は続く。二大政党制を打ち破るチャンスはあるのである。戦略的な展望を明確にし、結束を固めて、行動を開始すべきときである。


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