労働新聞 2007年6月5日号・4面 労働運動

青森
病院廃止計画に住民と共に反撃

圧力強いほど団結強まる

赤平泰衛・平川市職員労働
組合委員長に聞く

 改革政治の下、市場化テストや指定管理者制度など、公共サービスを民間に売り渡す攻撃が行われている。これに「三位一体改革」による財政難が加わり、地方における公共部門切り捨てに拍車がかかっている。影響はとくに医療分野を直撃、各地で公立病院の廃止や民営化に伴う規模縮小などが行われ、地域住民の命と健康は危機にさらされている。こうした中、青森県平川市でも突如、国保平川病院の廃止が打ち出され、住民ぐるみの闘いが繰り広げられた。闘いの中で、当該の自治労平川市職員労働組合は住民の闘いを全面的にバックアップした。全国各地で同様の事態が起きており、平川病院廃止反対闘争の経験は大いに参考となる。赤平泰衛・平川市職労委員長に聞いた。


 今から五年前に県は自治体病院の再編計画というのをスタートさせた。
 その「素案」では、私たちの津軽南地域にある旧平賀病院については「廃止」というものであった。
 その後、三年くらい経ち、今度は同内容の「計画案」というのが出てきた。ここに至る経過の中で、当該首長や院長などで構成する「自治体病院開設者協議会」の中で、町長が廃止に向けた発言を突如、行うなど、廃止に向けたシナリオがスタートしていた。
 また病院運営委員会では「診療所にする」という答申が行われ、庁舎内に検討チームが発足された。しかし、起債の返済や余剰となる残る職員をどうするのかなど、さまざまなことが問題になり、「廃止」「診療所にする」という話はとん挫したかに見えた。
 ところが、二〇〇六年一月一日の合併から、一年経過して、またも病院の廃止というが持ち上がった。
 今年一月には病院運営委員会は「指定管理者制度を導入すべき」という答申を行い、市長も「議会の同意を得た」としてこの答申を受け入れることを表明した。
 しかし、指定管理者制度の導入をめぐる民間病院との交渉も不調に終わり、市の対応に対して当時二人いた常勤医師は四月いっぱいで退職の意向を示すなど、病院は混乱、患者さんや市民に大きな不安が広がった。

「守る会」発足/署名に1万3千も
 こうした状況の中で、市民から病院の存続を求める大きな声が上がり、「平川病院を守る会」が発足した。「守る会」は病院存続と早急な医師確保を求め、申し入れを行ったが、市長は明確な意思を示さなかった。
 そこで「守る会」は四月四日から署名活動を行い、約十日間という短い期間にもかかわらず一万三千八百二十二人もの署名が集まった。これは市民の三分の一をも超える数だ。
 私たちもこの運動に全面的に協力した。
 署名運動を通じていろいろな声が聞こえてくる。当然、「病院に命を助けられた。存続してもらわなければ困る」という声も多くあるが、「医師や看護師の口のきき方、接し方を改めてほしい」という病院職員にとっては耳の痛い声も寄せられた。あらためて公立病院、医療のあり方というものを個々の組合員は考えた。こうした市民の切実な声を受け、私たちとしてはこの運動で病院を存続させ、市民に親しまれる新しい病院としてスタートさせるつもりだった。

座り込みで分限解職阻止する
 しかし、市長はこうした市民の声を無視して、あくまで廃止に固執、「無床の診療所化」、そして、五十五人いる病院職員について「五月三十一日で全員を退職させ、診療所に必要な職員だけを改めて採用試験を行い再採用する」と前代未聞の通知を発する暴挙を行った。
 こうした暴挙に対し、私たちは自治労県本部と共に職員の退職強制方針の撤回と病院の直営存続を求め、現地に闘争本部を設置、中央本部に対して闘争支援要請を行い、市長室前で座り込み行動を開始した。この座り込み行動には多くの一般行政職の組合員も半日年休を取得して参加した。また県内自治労の仲間もたくさん詰めかけた。
 こうした闘いの甲斐あって、団交で市長から「結論として身分を保障する。提案を撤回する」との言質を引き出すことができた。
 しかし、「無床の診療所化」に伴う余剰人員について、市当局は「希望退職を募る」「再就職のあっせん」「一般行政職として働いてもらう」と言う方針を打ち出した。いずれにしても配置転換や希望退職が強いられるわけで、これまで地域医療の担い手としてがんばってきたことが続けられなくなることには変わらない。多くの組合員は不安や怒り、悲しみが入り交じる思いでいっぱいだ。

市民の声無視し、病院廃止が可決
 市長の「無床の診療所化」提案に向けた病院の廃止条例が五月二日の臨時議会で可決されてしまうという情勢を受け、その前日一日には市役所正面で「守る会」主催の「平川病院の廃止・診療所移行反対! 総決起集会」が開かれ、市民を中心に約三百人が参加した。県内各自治労単組からも仲間が支援にかけつけてくれた。
 集会は「市長は議員は市民の声を聞け」という市民の声でいっぱいだった。
 しかし、二日の臨時議会で、廃止条例の可決、診療所の設置が決まってしまった。
 傍聴に訪れた市民の願いは悲鳴に変わってしまった。

座り込みで分限解職阻止する
 今回の病院廃止=無床の診療所設置には市民はだれも納得していない。
 やはり自治体としての責務として「命と健康を守る」というのが第一のはずだ。すべて「財政」から出発して、地域医療のあるべき姿に向けた発想はまるでない。
 周辺には大きな病院はなく、まだ多くの患者さんが病院を必要としている。当然、少ない人員で対応しなければならず、一人ひとりの組合員には過重な労働が強いられる恐れが大いにある。こうしたこともチェックしていく。
 この間の闘いを通じて思うことは、当局の動きを監視し、「最初の芽」の段階で、対策を打つことの必要性だ。この点では遅れたと思っている。こうした意味で、今後、市当局の動向を監視することを意識したい。「そこまでやらないだろう」と高をくくっていると攻められる。
 また強く感じたのは当局の圧力が強いほど、組合員は団結するということだ。正直、私たちの組合はそれほど活動が活発だったとは言い難かった。それが、一度立ち上がると、住民と強く結びつき、看護師さんが年休を取り、マイクを握って署名運動にがんばる。こんなことは考えられなかった。素晴らしい闘いだった。この闘いを見て、一般行政職の組合員も「がんばった」と評価している。「明日はわが身だ」という思いもあるからだろう。
 県内でも同様の問題が起きているところが数多くある。闘いを通じて得たさまざまな教訓、経験などについて声がかかれば、伝えていければと思う。


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