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労働新聞 2007年4月15日号・4面 労働運動
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トヨタ関連で働く労働者の手記
「ベア1000円」
俺たちには関係ない
トヨタ関連労働者 増山 基彦(仮名)
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このシラけた雰囲気は何だ。組合役員の「何か質問はありませんか」の問いにだれも答えようとせず、隣同士で顔を見合ったり、ボーッと工場の天井を眺めたりして沈黙を守っている。百人ほどが集まって昼休みに開催された、組合執行部の賃上げ回答妥結提案説明会でのできごとだ。
「意見、質問がなければこれで説明会は終わります」と役員が言いかけたところで、たまらず手を挙げて「質問がある!」と立ち上がると同時に、始業五分前のチャイムが鳴り出した。「時間がきましたので質問、意見のある人は個別に役員の所に来てください」と言って組合役員は私の発言を押し止めると閉会を宣言し、そのまま振り向くとスタコラと事務所の方向に走るように去ってしまった。
近年、午後の始業時間直前にアリバイ的に職場集会を開いて、組合員の執行部への批判を抑えたり、組合員同士の議論をさせないためにとった戦術だ。役員をつかまえて問い詰めると、「みんな早く終わって喜んでいますよ」という珍答が返ってきた。「バカヤロー! お前たちがそうさせたんだぞ!」と怒鳴ってやったが、こっちの真意は伝わらなかったようだ。以前は役員をコテンパンにとっちめると「君は資本主義を肯定するか、共産主義をめざすのか、どっちだ! 資本主義を肯定するならとことん話し合おう。そうでなければ不毛の議論だから君とは話さない!」と言って逃げたものだが、最近はそんな言い訳すらしない。
今年の春闘も労働側は資本の側に完全に押さえ込まれた。とくに、この自動車会社は今〇七年三月期、連結営業利益二兆円乗せを達成すると目されており、日本企業としては未踏の利益水準で、世界各地の工場での生産台数も更新して世界一の自動車会社になろうとしている。史上空前の好況で株価は一年で二倍にもなり、株主様は大喜びだと言う。ところが今年の労働組合のベア要求は昨年よりわずか五百円アップの千五百円。それでも会社の「一発回答」は昨年と同じ千円であった。その低額回答を「一発回答」で受け入れろというのが先の職場集会だ。組合執行部の妥結提案理由は?会社を取り巻く競争環境が厳しいことを認識し?日本経済の持続的成長に向けた賃上げ、安定した企業基盤の構築…というまさに資本の立場に立ったものだ。しかもベア千円の中身は「賃金制度維持分の確保」となっており、昇格者のベアに充当するというのである。大多数の労働者にはベア千円は無関係なのである。
腹立たしい気持ちで現場に戻ると、ミーティング場では派遣社員の諸君が一斉に立ち上がってラインに就こうとしていた。年長のAさんが近寄ってきて「増山さん、あんたら本工はまだいいよ。俺たちは一円も上がらないしボーナスもゼロなんだから」と慰めてきた。Aさんは三十歳代だが本工と同じ作業をしても年収は本工の半分以下の三百万円程度、しかも雇用期間も決まっている。「僕は共稼ぎだから何とか食えるけど、他の連中は大変だよ」と同僚を見回すAさん。この会社には二万人近い派遣労働者、期間労働者、委託労働者が働いており、そうした労働者の生き血を吸って史上最高の利益を上げた。ここの足元にこそ「格差」の元凶がある。
「会社がもうかっても賃金は上がらない」「仕事はキツくなるばかりだ」「労働組合はわれわれを守らない」と御用組合批判が公然と囁かれ、労働組合不要論も聞こえだした。今こそ、労働者のための「闘う労働組合」が求められている。
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