労働新聞 2007年3月5日号・4面 労働運動

職場超えて組織力高め、
経営者に迫る

青年に「頼れるのは労働組合」と
思われる春闘を

浦 俊治・自治労全国一般
評議会議長に聞く

 いよいよ〇七春闘は主要産別労組の要求が出そろい、闘いのヤマ場を迎えようとしている。昨年以上の賃上げを実現するためには、職場に広がっている労働者の不満と怒りを結集した闘い以外にない。中小零細企業で働く労働者の地域合同労組である全国一般(〇五年に自治労と組織統合)は、その結成以来、企業を超えた地域共闘、団結した力で経営側に譲歩を迫る、パート・派遣を含む未組織労働者を組織化するなど、貴重な経験を重ねている。浦俊治・自治労全国一般評議会議長に〇七春闘をどう闘うかについて聞いた。(見出し・文責は編集部)


将来展望が見えなくなった世の中
 これだけ大企業は利益を上げながら、経営側は「国際競争力の強化」を叫んで、「成果主義賃金」で労働者同士を競争させ、労働法制の規制緩和で低賃金のパートや派遣など不安定雇用労働者を増やし、労働者階級を分断・支配してきた流れをいっそう推し進めようとしている。
 私は三十六年間労働運動をやってきたが、権力側のやり放題、居丈高な攻撃でこんな滅茶苦茶な世の中になったことはいままでない。中小零細で働く労働者は会社の業績が悪くなったら、ある程度勝ち取ってきた賃金もすぐカット、その上都合よく正規から非正規へ切り替えられ、若い組合員は「もう結婚できない」と訴えている。私たちが若い時も労働強化はすごかったが、「働けば家族は養える」という展望を持ちながら仕事ができた。しかし、いまの若い人には将来展望が見えず、大変な状況になっている。
 国会では格差問題が審議されているが、無責任で本質的議論がなされず、将来もっと厳しくなると思わざるを得ない。だから、今年はいちばん大事な春闘ではないかと思う。経営側と正面から対決し、将来展望が見えなくなった若い人たちに「頼れるのは労働組合」と思われるような闘いができるかどうか、かれらの怒りを共有して闘えるかどうかが問われている。

「企業内主義の弱点」の総括が必要
全国一般の経験生かして地域共闘強めたい

 そのためにも、なぜこんな状況になったのか考える必要がある。フランスでは若年層の雇用問題で労働組合が学生といっしょになってストライキで闘い、政府案を撤回させた。しかし、日本では経営側のやりたい放題を許し、政府の戦争への道を許している。私は日本の労働運動の責任として真剣に反省しなければならないと思う。こんにちわれわれの労働運動が抱えている弱点を率直に見ないと、展望は描けない。
 やはり、連合評価委員会の報告が言った、「企業内主義の弱点」が自分たちも含め克服できていないと思う。「企業内主義」では、自分たちの企業がもうけることと、自分たちの分配だけになっていく。これでは、経営側の労働者同士を競争させ、分断・支配するやり方に対して闘えない。
 そこで闘う体制をつくろうと、連合では中小共闘センターが発足した。相当に論争して「地域共闘」の方針を確立した。これには小出JAM会長の存在は大きかった。
 それなりに成果もあるが、肝心な「地域共闘」は支援体制を組んだ実践がない中で言葉だけに終わっている傾向は否めない。それにはこれまでの、大手の「産別自決」という大きな流れ、しがらみが影響していると思う。だから私は、「企業内主義」運動の弊害と限界に対する歴史的な分析が必要だと言っている。
 その上で「地域共闘」を進めていくには、全国一般の経験があらためて大事だと思う。もともと全国一般は中小零細企業で働く労働者の地域合同労組だ。一つの職場だけでは、また数人単位では闘えないので、地域で組合を結集して五百、六百という大きな組織力にして、労使対等の力関係というのをつくって闘ってきた。だから春闘を闘う上で、どういう取り組み方をすれば自分たちの組織力を経営側に見せきれるのかというのが全国一般の大きな役割、課題だった。例えば福岡の北九州支部では、地域の全経営者を集めて統一要求説明会を行い、低額回答のところには「ストライキをやるぞ」と通告をして春闘が始まる。また福岡市でも生コンの経営者を集めて統一要求説明会をやっている。そこが大事なところで、統一要求、到達目標というのがあってこそ、全体的な力で経営の責任を追及でき、労使が対等な立場に立てる。個別で要求し、職場の役員任せでは、組織の力は出てこない。
 だから、私はこうした労働運動の歴史、全国一般の経験の学習、職場を超えた交流活動をもう一度つくり上げ、「あきらめムード」に流されることなく、本当に怒り、憤りをもって「労働組合の役割とは何なのか」ということを明確にして春闘を闘っていく必要があると思う。職場を超えて力合わせ、組織力を高めていくことが肝心だ。

勇気を与える福岡大和倉庫の闘いの経験
 一昨年八月、メグミルク(旧雪印)が一方的に単価を切り下げる中、下請の大和倉庫は従業員六十一人の全員解雇、会社解散という攻撃をかけてきた。これに対し、組合員二十六人全員の解雇撤回、会社存続の団交、メグミルクの親企業としての責任などを求めて闘ってきた。
 しかし、メグミルクの一〇〇%業務委託の会社だったにもかかわらず、メグミルクは「単なる商取引上の下請けだから、親会社の責任はない」といって雇用責任をいっさい認めようとしなかった。一方では、非組合員の二人は再雇用しておきながら、組合の要求にはまったく応ぜず、団交さえ拒否してきた。
 最初は難しい闘いだと思ったが、こんなことがまかり通ることは絶対許されない、苦しいけど闘いぬこうと、二十四人の組合員が決意し、一年半もの間、アルバイトなどしながら闘ってきている。
 この闘いに対して、福岡県下の主要な労組が「福岡大和倉庫支援共闘会議」を結成して、大きく支えてくれた。連合地協をはじめ、自治労、教組、JPU、都市公、私鉄、運輸労連その他、連合以外の国労や全港湾も入っている。
 こうした取り組みの成果もあって、一月四日に県労委からメグミルクの団交拒否を不当労働行為と認定する救済命令が出た。「全面的な雇用責任を持て」という命令ではなく不満はあるが、荷主の不当労働行為を認めたことは大きく評価できる。この判断は、もう一歩雇用責任を追及していくための中労委闘争へと流れをつくった。
 昨日、福岡で報告決起集会に参加してきたが、組合員、すべての支援組合が「いまからが本当の闘いだ」と決意をあらたにしていた。組合を認めない、一方的に下請を切っていくようなメグミルクに対しては、不買運動なども展開し、中労委に上げて、雇用責任を取らせるような闘いにしなければいけない。
 この闘いがすばらしいのは、難しいから闘いを放棄するのでなしに、不条理に対して負けても負けても正していく、これが労働者の闘い、労働組合の役割だと教えてくれている点だ。そしてこの闘いの中で、専従の活動家が生まれている。これは闘いの大きな財産だ。分会の仲間に悲壮感はなく、最後までやりあげるといってくれた。
 もう一つ、最初は二十数人の闘いだったが、福岡県の労働界の闘いに一歩一歩前進してきている実感がある。この点では自治労の仲間が呼びかけて「支援共闘会議」をつくり、二万九千人以上の署名を集めて地労委に要請してくれたり、カンパで闘いを支えていただいた。支援組合の皆さんも「地域共闘とはこんなに大事なんだ」と言ってくれた。ここでも共闘の闘いが活動家を育てている。

未組織の組織化は労働運動の最重要課題
労働組合の必要性を自信を持って訴えよう

 組合のないところに組合を組織することは、労働運動の重要な課題だ。たとえば、福岡の生コンを組織しているが、古い分会と新しく組織されたばかりの分会では、相当に賃金の格差がある。だから、自治労の「公契約条例」やら、「公正労働基準」というのは立派な方針だが、それを要求できる組合がないと「公正労働基準」は成り立たず、最低基準になってしまう。これから、公共民間サービス、現業含めて、入札制度が導入される動きが強まる。その際には、これまで勝ち取ってきた労働条件を切り下げないということが基本で、闘うためには組織しなければならない。だからこそ自治労は、「雇用と労働条件を守る闘いを共に取り組んでいきます」とはっきり言って組織化しないといけない。労働者には、「この組合に行けば守ってくれる」という信頼関係をつくらないと組織化は前進しない。
 私は福岡で組織化してきたからよく分かるが、組織化して、労使対等をつくり上げるまでには、闘いがなければできない。また、闘って初めて、組合員の皆さんはいまの世の中の問題点が見えてくる。よく私は「要求のないところに労働運動はない」と言うが、職場の仲間の権利意識を高め、組織し、要求を出して、「だれが敵で、だれが味方か」というところを明確にしていくということが、未組織の組織化の本当の意味だと思う。未組織の組織化を抜きにして「労働組合の社会的影響力」云々を言っても、不可能だ。
 組織化には二通りある。大手のように産別の力、会社の力を借りて組織するところと、本当の意味で苦しんでいるところの窓口を広げ、組織して、労働者の雇用や権利を守るところ。組合の歴史だから、どうこう言うつもりはないが、まず組合役員が労働組合の必要性をもっとはっきり訴えきれないと組織化は進まない。
 どうしても未組織の組織化は、手間ひまがかかる。また、不当差別や不当解雇に対する裁判闘争など、いろいろな課題が出てくる。しかし、こうした取り組みと闘争が組合役員を鍛えていく。現場と目線をいっしょにしていくということで、未組織の組織化ほど勉強になることはない。実際に自治労で組織化しているところの話しを聞くと、生き生きしている。「この不当な扱いは許されない。立ち上がらなければ」というものすごい迫力が現場からは出てきている。
 全国一般の中小ががんばっただけでは、大きな社会的影響力はもてない。主要な単産の理解と連帯がない限り大きく高まらない。自治労と統合して、共闘運動の再構築、中小労働運動の強化、そして労働運動全体の強化という柱を今こそ実践する、一つの重要な時期である。その展望はあると確信している。

労働組合の役割が無視される労働契約法
憲法改悪阻止も大きな課題

 今春闘でもう一つ重要なのは、労働法制の改悪を阻止する課題だ。労働契約法は、日本経団連がたくらむ「労働ビックバン」の一環であり、断じて許してはならない。
 私たちは現場が分かるだけに、経営側が就業規則によって労働条件を一方的に変更できるという法律が通ったら、労働条件は滅茶苦茶になり、労働組合の役割も無視されていくことは、目に見えている。一部に「労働者にとっていい労働契約法ならいいではないか」という声もあるが、問題がある労働契約法を中途半端に認めたら、派遣法などを含めて次から次へと崩されてきた経過を見てもよくない。自民党は参院選の結果いかんではホワイトカラー・エグゼンプションをいつでも提案できるように準備している。だから、春闘の中でも大きな柱の一つとして闘っていきたい。
 そして今年は、統一地方選、参院選という大事な年でもある。安倍政権は憲法改悪を打ち出しており、重要な局面を迎えている。この間の米国追随の戦争政策と憲法改悪を許さないためにも、この政治決戦に勝利したい。

うら・しゅんじ
 七二年に運送倉庫業で組合結成し全国一般に加盟。八七年福岡地本専従、〇二年から全国一般本部委員長。自治労と組織統合後、全国一般評議会議長。


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