労働新聞 2006年9月15日号・4面 労働運動

暴露される大企業の違法行為
労働者使い捨ての「偽装請負」

根絶へ労働組合は全力を

 最近、マスコミ報道などで「偽装請負」(注)の問題がクローズアップされている。この間、トヨタや松下、日立、キヤノンなど「名だたる」企業の製造部門で偽装請負がまん延していることが暴露されている。こうした事態を受けて、厚生労働省は9月4日、偽装請負などへの監督・指導の強化を徹底するよう求めた通達を全国の労働局長に出した。また連合も「労働組合側にも責任の一端」(高木会長)と認めた上で、厚労省への申し入れや、傘下産別に実態調査を行うよう求めている。直接雇用すべき労働者を派遣や請負など「安上がり」な形で雇用するというこうした大企業の姿勢を許さないために、労働組合の役割が重要だ。


発覚続く「偽装請負」
 〇四年に製造業への労働者の派遣が解禁された。以降、派遣労働者について企業側は、一定期間経過後には直接雇用を申し込む義務が発生する。また、企業側が他社の労働者を指揮・命令して仕事に従事させるためには「労働者派遣法」にもとづいて使用者責任や安全衛生上の義務を負わなければならない。
 このため、多くの企業が「偽装請負」から派遣への切り替えに極めて消極的だ。
 製造業の構内請負は、一九八五年の労働者派遣法の成立以来急増し、厚労省の推計(二〇〇四年)でも八十七万人に達している。
 全国の労働局は二年ほど前から立ち入り調査を強化。昨年度だけでも、請負を発注した六百六十社のうち、半分以上の三百五十八社で偽装請負に絡む問題が発覚し、文書による「指導」を受けている。〇五年度までに指導件数は年々倍増している。当然、「指導」に至るケースはわずかであることが考えられ、まだ多くの「偽装請負」がまん延していることは明白だ。
 そして、こうした偽装請負の現場で働く労働者は、ボーナス、昇給などなく、社会保障の加入もない。業績不振などあれば、ただちに首が飛んでしまう不安定な状況に追いやられている。

日本経団連会長おひざ下でも横行する「偽装請負」
 こうした「偽装請負」が横行しているのが大企業の製造部門である。
 トヨタ自動車グループの部品メーカー「トヨタ車体精工」(TSK、愛知県高浜市)の高浜工場で今年三月、請負労働者が全治四週間のケガをしたにもかかわらず、TSK、請負会社共に労働安全衛生法で義務づけられている労災の報告をしていなかったことが分かり、同工場では、TSKが請負労働者に直接指揮・命令する「偽装請負」が行われていたことが明るみになった。
 また、同じように「偽装請負」が労災隠しの要因になった例として、いすゞ自動車系列の自動車部品工業(神奈川県)で、労災隠しが発覚、厚木労基署は「偽装請負を知られたくないという動機があった」と認定、昨年二月、同社と当時の幹部らを書類送検している。
 日本経団連の御手洗会長率いるキヤノンでは子会社である「大分キヤノン」(大分市)で昨年夏、「偽装請負」があったとして労働局から改善指導を受けていたが、一年たった今でも「偽装請負」が続いている事実が暴露された。しかも、キヤノンでは子会社ばかりでなく本社工場(宇都宮市)も労働局の指導を受けているのである。
 一連のマスコミ報道にあわてたキヤノンでは御手洗会長自ら記者会見を開き、「『偽装請負』の解消をめざすため日本経団連内に検討委員会を設置する」と言い出すなど防戦一方である。

大企業とその政府にこそ責任
労組・活動家は実態つかめ

 九五年五月、日経連(当時)が出した「新時代の『日本的経営』」では労働者を(1)長期雇用の長期蓄積能力活用型(正社員)(2)長期雇用を前提としない高度専門能力活用型(企画・研究開発などの専門職)(3)多様な就労形態に対応する雇用柔軟型(パート、アルバイト、派遣など)の三つのグループに分けた形で、雇用流動化を進めることを唱っている。
 非正規雇用労働者の増大、成果主義の拡大など労働者をめぐる現在の状況はまさにこの日経連のシナリオ通りだ。
 そして、「構造改革」を叫ぶ小泉改革の下で経済財政諮問会議が発足、わが国多国籍大企業の要求に沿って有期労働契約や裁量労働制の見直し、派遣労働法制における対象範囲拡大など、雇用流動化の加速化が進められてきた。
 問題となっている「偽装請負」もこうした「総人件費削減」を求めるわが国多国籍大企業の雇用政策が大きなバックボーンになっているのである。事実、「偽装請負」の多くはトヨタ、キャノンなどわが国多国籍大企業の足下でまん延していることからも明らかである。
 労働者を使い捨てにする「偽装請負」を職場から一掃・根絶するためには労働組合がその圧倒的多くが未組織におかれている派遣・請負労働者に声をかけ、実態をつかみ、いっしょに企業、請負会社に要求を突きつけることである。
 「労使自治」を前提に経営側の姿勢を「過大評価」する一部労組幹部の発言も伝えられているが、そうした認識ではまったく不十分だ。
 「偽装請負」の一掃・根絶は労働組合、労働運動にとって大きなテーマである。

注:偽装請負 メーカーなどの企業が、人材会社から事実上、労働者の派遣を受けているのに、形式的に「請負」と偽って、労働者の使用に伴うさまざまな責任を免れようとする行為。職業安定法あや労働者派遣法に違反する行為。違法な人貸しは、請負会社も発注企業も、一年以下の懲役か百万円以下の罰金がつく犯罪。


JAM
派遣・請負労働者の実態調査
派遣・請負労働者が正社員比6割近くも

 JAMでは今年四月から業種別部会を構成する労使代表を対象に、「派遣・請負労働の実態ヒアリング調査」を行っている。その中間集約によれば、調査できた三十四事業所のうち、派遣・請負労働者の正社員に対する比率は五七・六%と、六割近くにも達している。
 また、派遣労働者を受け入れている事業所は九四・三%、請負労働者を導入している事業所は七四・三%にものぼっている。導入している事業所における人数は正社員比(一〇〇%=正社員)で四五・二%と半数近い。また、請負労働者が正社員比で半分以上を占める事業所は二〇%に達している。
 こうした派遣・請負労働者の仕事の特徴としては「組立ラインによる流れ作業」「単調できつい業務」があげられる。
 また、「製造部門における派遣・請負労働者の導入理由」として「コストダウン」「固定費の圧縮」「仕事の付加(繁閑)調整」「人手不足」などがあげられている。
 JAMでは「法令違反の疑念が残る例もあるが、今後、コンプライアンス(法令順守)を踏まえた雇用管理の適正化を進めていくよう要請する」「当面の利益を重視しすぎて行きすぎたコストダウンを行えば、必ずその反動・弊害が起こるものである。製造現場における雇用の多様化は、日本の製造業の強みを自ら破壊していくことにならないだろうか」として、今後、本調査をまとめた上で、十二月に開かれる春闘討論集会で報告、対応の指針の策定に生かしたいとしている。
 まだ実態調査の段階とはいえ、こうした具体的な活動は重要であり、注目に値する。


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