労働新聞 2008年1月25日号 トピックス

世界のできごと

(07年12月10日〜
08年1月19日)

EU新基本条約に調印、政治統合加速
 欧州連合(EU)加盟二十七カ国首脳は〇七年十二月十三日、ポルトガルのリスボンでEU新基本条約(リスボン条約)に調印した。新条約はEU大統領ポストの創設などが柱で、加盟国の批准を経て〇九年の発効を予定している。ハンガリー議会は十七日、最初に同条約を圧倒的多数で批准した。EUの政治統合が新たな段階を迎えるもので、世界の多極化の流れがさらに確実なものとなる。

米国の実体経済が悪化へ
 米労働省が一月四日発表した昨年十二月の雇用統計で、雇用が一万八千人増にとどまり、〇三年九月以降の最低の伸びとなった。業種別では建設業が四万九千人減、製造業が三万一千人減となり、雇用の鈍化が鮮明だ。また、米商務省が十五日に発表した昨年十二月の小売売上高は三千八百二十九億ドルで前月に比べ〇・四%減となり、個人消費の鈍化も鮮明となった。ブッシュ大統領は十八日、約十六兆円の減税を含む緊急景気対策の発表に追い込まれた。サブプライム問題に端を発した金融問題が、米国の実体経済に深刻な影響を及ぼしている。
 
ブッシュ米大統領が中東歴訪
 ブッシュ米大統領は八日から十六日まで中東諸国を歴訪し、十日にはパレスチナ自治区を初訪問した。大統領は「退任前に中東和平条約を結ぶことは可能」と楽観論をふりまく一方、イスラエルによる大規模入植を追認し、シリア、イラン非難に終始した。十四日にはサウジアラビアのリヤドでアブドラ国王と会談、対イラン防衛のために親米湾岸諸国に二百億ドル相当の武器を輸出する計画を提示したといわれる。しかし、サウド外相は「ブッシュ大統領が何を言おうと自由だが、われわれはイランを含む地域の国々の協調を重視する」と述べた。米国外交の弱体化を印象付ける中東歴訪となった。

UAEに初の仏軍基地建設で合意
 フランスのサルコジ大統領は十五日、アラブ首長国連邦(UAE)を訪れてハリファ大統領と会談し、仏軍基地をUAEに新設する協定を結んだ。ペルシャ湾岸では初の仏軍基地となり、兵員四百〜五百人が駐留する。サルコジ大統領は「フランスはこの地域の安定に加わる」と述べた。米国が中東での影響力を後退させている中で、フランスは軍事的影響力を強めることを狙っている。

ブット元首相が暗殺される
 パキスタンで十二月二十七日、最大野党パキスタン人民党(PPP)総裁のブット元首相が殺害された。〇七年十月に亡命先から帰国し、来月八日に総選挙を控える中でのできごと。米政府は「民主主義」の象徴としてブットを登場させ、タリバン掃討に協力してきたムシャラフ大統領との「穏健派連合」による政治安定のシナリオを描いたといわれる。だが、このもくろみは完全にはずれ、総選挙は延期、デモが多発して「民主」勢力の中にも反米感情が強まっている。核保有国でもあるパキスタンの不安定化は、米世界戦略にとって大きな打撃となっている。

韓国大統領に李明博が当選
 十九日に行われた韓国大統領選挙で、野党ハンナラ党の李明博候補が当選した。盧武鉉政権と旧与党は朝鮮との対話・経済交流を進めたものの、米韓自由貿易協定(FTA)締結やイラク派兵、経済の低迷などで国民の支持を失った。李候補は経済の立て直しを掲げた。また、李候補は朝鮮の非核化と改革・開放を前提に大規模な経済支援を提唱している。今回の大統領選ではハンナラ党を離党して対北強硬政策への回帰を主張した李会昌候補が惨敗しており、南北統一に向けたすう勢は揺ぐことはない。

台湾、国民党が圧勝
 三月の「総統」選挙の前哨戦といわれる台湾立法院選挙が一月十二日に行われ、対中融和志向とされる最大野党・国民党が圧勝し、六年ぶりに単独過半数を占め、一党単独で「総統」の罷免・弾劾の手続きを発動できる三分の二の議席を確保した。台湾独立を志向する陳水扁「政権」の与党・民進党は「台湾人意識」をあおり中国離れを加速する戦術をとったが、大惨敗となった。また、独立論の「先輩」ともいうべき李登輝・元「総統」が率いる台湾団結連盟は議席がゼロとなった。

人民のたたかい

(07年12月10日〜
08年1月19日)


 米国ニューヨーク市のウォール街で十二月十日、住宅を購入したものの返済できずに家を手放さざるを得なくなった百人を超える労働者が、集会とデモを行った。サブプライムローンの返済免除など、救済策の実現を政府に強く求めた。
 イタリアのビチェンツアで月十五日、同地にあるダルモリン米軍基地の拡張に反対するデモが行われ、七万人が参加した。参加者は、イタリア軍のアフガニスタンからの撤退や米軍のイラク占領に抗議した。
 ギリシアで十九日、政府の年金改革計画に抗議して、医師やジャーナリスト、法律家などが全国で二十四時間ストを行った。病院や裁判所も緊急以外はストに入り、テレビやラジオのニュース番組は停止した。
 フランスのエールフランスの地上職労組のストライキが、パリ郊外のオルリー空港で二十日、二十一日に闘われた。労組が契約職員の正規雇用化、労働条件の改善を求めたもの。 
 中国・南京で十三日、日本軍の南京大虐殺から七十周年を迎える記念式典が開かれ、約八千人が参加した。式典は、拡張して再オープンした侵華日軍南京大虐殺遭難同胞祈念館で開かれ、午前十時には全市でサイレンが鳴らされた。

日本のできごと

(07年12月10日〜
08年1月19日)

施政方針演説、福田政権の弱さ露呈
 第百六十九通常国会が一月十八日、召集され、福田首相は衆参両院の本会議で就任後初の施政方針演説を行った。首相は、「ねじれ国会」と予想される総選挙を意識して、「国民本意」を乱発するなど、きわめて欺まん的な態度に終始。再度、野党に「協議」を呼びかけた。だが、深刻な経済状況もあり、臨時国会に引き続き、福田政権にとっては多難な国会となることが避けがたい。

08年度予算案、国民負担さらに
 福田内閣は〇七年十二月二十四日、二〇〇八年度予算政府案を閣議決定した。社会保障予算が二千二百億円も削減され、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険の国庫負担も一千億円削減されるなど、医療・福祉への国の責任放棄をいっそう進めるもの。これは「(消費税増税への)橋渡し的な位置付け」(額賀福志郎財務相)とされており、負担を増やすことで国民に消費税増税をのませようとする狙い。公共事業費は「選択と集中」が進み、総額抑制の中で「中枢港湾」への重点化が進んだ。一方、米軍再編関連経費として五百二十二億円、ミサイル防衛(MD)関連予算は千七百十四億円を計上するなど、防衛予算は前年度並みの五兆円規模が維持された。対米追随の軍事大国化も進めるものだ。

新テロ法再可決、民主案も犯罪的
 新テロ対策特別措置法が十一日、臨時国会の衆院本会議で成立した。これに先立ち、参院では野党の反対多数で否決されたが、与党は衆院で三分の二以上の賛成多数で再可決した。新テロ法はアフガニスタンなどに展開する米国を支援するためのもので、わが国は再び、米国の侵略・占領を直接に支えることになる。二度も臨時国会を延長させ同法を成立させた自公与党の犯罪性は明白だが、同時に政府案にさえない恒久法化の内容を含んだ「対案」を提出し、自衛隊海外派兵の拡大に道筋を残した民主党も許しがたい役割を果たした。

福田訪中も実り少なく
 福田首相は二十八日、北京で中国の温家宝首相と会談した。東シナ海の資源開発問題の早期解決や、気候変動や省エネ対策で両国が緊密な協力関係を結ぶことなどの「総論」で一致、キャッチボールを行うなどのパフォーマンスで友好を演出した。だが、ガス田開発などでの具体的な前進はなく、福田首相にとっては実りの少ない訪問となった。逆に南京大虐殺祈念館の展示内容に対し駐上海日本総領事が展示内容の「見直し」を申し入れて中国国民の怒りを買うなど、真の信頼関係構築とは程遠い。

民主党大会に経団連幹部が初出席
 民主党は一月十六日、横浜市内で党大会を開いた。「国民の生活が第一」をスローガンに今年の活動方針を「今こそ、政権交代」とした。しかし、昨年の「大連立」騒動のみならず、「対決」を掲げた国会戦術も腰くだけに終わっている。大会には日本経団連の評議員会副議長・政治対策委員長を務める大橋光夫・昭和電工会長が出席した。経団連幹部の民主党大会への出席は初めてで、「政権交代」が近づけば財界の党としての正体がよりあらわになるだろう。

沖縄戦教科書検定、軍の強制明記せず
 沖縄戦の「集団自決」への旧日本軍の関与をめぐる高校教科書の検定問題で、渡海文科相は十二月二十六日、教科書会社六社八点の訂正申請を承認した。当初の訂正申請では六社のうち三社が強制や強要を明記していたが、教科書検定審議会は「日本軍によって追い込まれた」などのあいまいな表現にとどめた。沖縄県民は文科省に対し検定意見の撤回と「日本軍による強制」の明記を求めている。政府の小手先の修正は認められない。

座間に新司令部、地元住民は抗議
 米陸軍キャンプ座間(神奈川県座間市、相模原市)に「米陸軍第一軍団前方司令部」が十九日、発足した。「基地の恒久化につながる」などとして自治体や地元、住民の反対は根強く、神奈川県や周辺自治体の首長は同日の発足式典に欠席した。米軍再編・強化の具体化を進めるもので許せない。

海自がミサイル実験、MD計画稼働
 防衛省は十七日、海上自衛隊のイージス艦「こんごう」に搭載した海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の発射試験を米ハワイ・カウアイ島沖で実施、米海軍と協力し標的の模擬ミサイル一発を迎撃した。米国以外の国によるSM3の試射は初めてで、既に地上配備が始まっている航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)と合わせ、ミサイル防衛(MD)計画を本格的に稼働させた。日米の軍事一体化を押し進めるものである。

08年経労委報告、改めてベア否定
 日本経団連は十九日、「〇八年版経営労働政策委員会報告」を出した。報告の中では、「日本型雇用システムの新展開」などとして「年功型賃金から、仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度・評価制度の整備を」と「能力主義」をさらに進めるとともに、あらためてベアを「既に過去のもの」と否定した。また「生産性向上・多様な働き方を可能とする制度の整備」などとして、事実上、ホワイトカラーエグゼンプション導入に意欲を示した。景気の失速などを口実とした賃金など労働条件の切り下げ攻撃に対し、断固対決する春闘が求められる。

グットウィル業務停止、国の責任重大
 日雇い派遣最大手グッドウィルは一月十八日、二重派遣などの違法行為を繰り返したとして厚生労働省からの事業停止命令を受け、全国の全七百八事業所で派遣事業を停止した。違法派遣をめぐっては、昨年八月に業界二位のフルキャストが事業停止などを命じられたばかり。労働法改悪を進めて人材派遣会社の暗躍を許してきた財界と政府の責任は大きい。事業停止でしわ寄せを受けるのも派遣労働者であり、政府にはその救済にも責任がある。

薬害肝炎救済法成立、一定の前進
 薬害C型肝炎患者を一律救済するための感染被害者救済特別措置法が、十二月十一日の参院で成立した。法成立を受けて、福田首相は被害者へ「おわび」を表明、原告団と政府は十五日に基本合意書を締結した。救済法はフィブリノゲン製剤と第九因子製剤による感染者を対象に、症状に応じて給付金を支払うなどが柱。政府をわずかでも動かしたのは、被害者の粘り強い闘いだ。しかし、救済にはカルテ等の証明手段が必要で、約三百五十万人といわれるウイルス性肝炎患者に対して救済対象は千人程度に限られる。また、同法が薬害根絶を保証するものではなく、抜本的な解決は今後の課題だ。


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