労働新聞 2007年5月15日号 トピックス

世界のできごと

(4月20日〜5月9日)

仏大統領選、サルコジ勝利に抗議続発
 フランスで五月六日、大統領選挙の決選投票が実施され、保守の国民運動連合(UMP)総裁であるサルコジ前内相が、社会党のロワイヤル元環境相を抑え、第五共和制六代目の大統領に選出された。選挙はほぼ内政をめぐって争われ、サルコジは企業減税や解雇・残業規制の緩和、移民選別政策、治安対策強化などを訴え、国際競争力強化のための改革を望む財界の支持を得た。また、サルコジが移民の暴動を強硬鎮圧した「実績」も、財界に「評価」されたと思われる。しかし、サルコジ当選に抗議する行動が全仏で繰り返されるなど労働者の反発は強く、労働条件の切り下げが行われれば、さらなる抵抗激化は避けられない。

米軍増派のためのイラク安定化会議
 「イラク安定化会議」が三、四日の両日、エジプトのシャルムエルシェイクで開かれた。会議は米国が主導したもので、イラク周辺国のほか国連安全保障理事会常任理事国、日本を含む主要八カ国など計二十三カ国・機関の外相・代表が参加、イラクへの武器流入を阻止するための国境警備強化など「テロとの戦い」での協力強化をうたった共同声明を採択した。イラク駐留米軍の増派を進めるため、米国は会議の「成功」を演出したかった。そこで米国は、「テロ支援国家」などと名指しで批判し二国間交渉を拒んできたシリアと外相級会談を、イランとは大使級会談を行う羽目となった。「敵」に頭を下げずにイラク問題を解決できない、米国の弱さを改めて示したものだ。

韓国、朝鮮との協調推進
 韓国と朝鮮による南北経済協力推進委員会は四月二十二日、南北間連結鉄道の試運転日程のほか、朝鮮へのコメ四十万トンの提供、軽工業・地下資源開発協力事業の六月着手などに合意した。韓国はこれらを朝鮮による核施設停止問題とは切り離して実施、「南北の信頼回復に向け絶対に必要」(李在禎・韓国統一部長官)と協調強化の意義を語った。また韓国は、朝鮮の核問題をめぐる六者会談の合意を実行できるようにするため、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)から朝鮮の関連資金を送金する仲介として韓国の国営銀行の利用を検討するなど、朝鮮との協調をいっそう推進させている。

オーストラリアも朝鮮に支援発表
 オーストラリアのダウナー外相は四月二十七日、朝鮮に対し約四百万豪州ドル(約四億円)相当の人道援助を供与すると発表した。援助は世界食糧計画(WFP)などの国連機関や国際赤十字を通じて実施し、WFPには約百五十万豪州ドル相当を配分する。オーストラリアは米国や日本とともに対朝鮮制裁に最も積極的であったが、朝鮮と国交を持ち、今年二月の六者協議を受け三月には関係修復のため政府代表団を朝鮮に派遣した。日本の朝鮮敵視外交の突出ぶりがいっそう鮮明になっている。

対米自主の南米域内金融協力進む
 エクアドルとアルゼンチン、パラグアイ、ベネズエラ、ボリビア、ブラジルの南米六カ国による経済・金融相会議が五月三日、エクアドルで開かれ、南米銀行金の設立を推進していくことを確認した。南米銀行は米国の手先となって融資国に規制緩和など構造調整政策を強いる国際通貨基金(IMF)などに代わって、域内諸国が協力して資金を融通しようというもの。ベネズエラのチャベス大統領が提案した。同大統領は四月三十日にはIMFと世界銀行から脱退することを表明するなど、米国の干渉を避けて経済の自主運営を進めている。こうした傾向が南米各国で進んでいる。

ロ大統領、米欧との対決姿勢を鮮明に
 ロシアのプーチン大統領は二十六日、上下両院議員らを前に年次教書演説を行った。同大統領は、米国のミサイル防衛(MD)関連施設を欧州に配備する計画を改めて批判、これに対抗し、九〇年代初頭に当時の東西両陣営が通常兵器削減のために締結した「欧州通常戦力(CFE)条約」からの離脱を示唆(しさ)した。また「わが国の内政に直接干渉するために、外国からの資金の流入が増加している。民主主義を装った言葉を使って公共財を盗み取ろうとしているやつらがいる」と、欧米からの野党勢力や「選挙監視団体」への支援を非難した。核大国・ロシアの米欧帝国主義への対抗姿勢は、世界の多極化を進めるものとして注目に値する。

人民のたたかい

(4月20日〜5月9日)


〈世界のメーデー〉
 米国
では移民労働の規制強化に反対するデモが全国各地で行われた。中南米出身のヒスパニック系労働者を中心に全国で二十万人が参加、移民労働者の地位向上などを訴えた(写真)。
 ドイツでは各地のメーデーに五十三万人の労働者が参加した。メルケル政権の労働政策などに抗議する若者中心の激しい抗議行動も行われ、全土で百人以上の逮捕者を出した。
 メキシコの首都メキシコ市では十数万人の労働者が結集、翌二日からは年金制度改悪に反対する教組などによる全国ストが行われ、公立大学の多くの学部が授業中止となった。
 インドネシアの首都ジャカルタでは四カ所で集会が行われ、総勢二万人の労働者が参加した。

 イスラエルのテルアビブで三日、十万人を超える市民が昨年のレバノン戦争の責任を追及、オルメルト首相などの退陣を求める大規模な抗議行動を行った。
 フランスでは六日、大統領選でサルコジ前内相が当選したことに抗議する行動が各地で行われた。パリでは二千人がデモを行い、警察と衝突した。抗議行動は以降も続き、九日にはパリ市内の一部の大学で学生がキャンパス封鎖とストの実施を決定した。





日本のできごと

(4月20日〜5月9日)

首相初訪米、窮地のブッシュを支持
 初訪米した安倍首相は四月二十七日、ブッシュ米大統領と会談し、同盟強化、軍事一体化の加速を約束した。安倍首相は今回の訪米の直前に、イラク特措法二年延長の審議入り、集団的自衛権容認のための有識者懇談会設置、普天間代替基地建設のための沖縄県名護市キャンプ・シュワブ沖での海域調査、米産牛肉の輸入基準緩和などを決め、それらを手土産に訪米。会談では、米国のイラク政策に再度支持を表明した。朝鮮問題では、朝鮮が六者協議合意を「履行しない場合」は圧力を強めることで一致したが、両国には思惑の違いも見られる。ブッシュ政権はイラク戦争で窮地に立っており、安倍首相も参議院選挙を意識せざるをえないという、両国政府の困難が背景にある会談であった。

日米2+2、MD計画前倒しで合意
 日米両政府は五月一日、外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2+2)を開き、「同盟の変革・日米の安全保障および防衛協力の進展」と題する共同発表をとりまとめた。日本はミサイル防衛(MD)システムの国内配備計画前倒しを受け入れ、普天間基地代替施設を二〇一四年まで建設することを約束した。また、オーストラリアやインド、北大西洋条約機構(NATO)などとの協力を強化する方針を確認、アフガニスタンへの自衛隊派兵に、事実上道を開いた。日本が世界的な規模で、米国の軍事展開を補完する役割を担うことを決めた危険な合意である。

米国に屈し、米産牛肉の基準緩和へ
 米産牛肉をめぐり厚生労働省と農林水産省は四月二十四日、「米国が対日出荷施設の査察を受け入れる。問題がないことを確認できた施設から出荷された牛肉は日本での全箱確認を取り止める」ことを発表した。米国は近々国際機関からBSE(牛海綿状脳症)に関連して安全との認定を受け、月齢条件なしに牛肉を輸出できる国と認定される見込み。この措置を受けて日本は、輸入条件を「月齢三十カ月以下」までに緩和する方向を決めた。米国の強い要望に屈し、食の安全を犠牲にした取引は許されない。

集団的自衛権容認へ「懇談会」設置
 塩崎官房長官は四月二十五日、集団的自衛権の研究のための有識者懇談会(座長=柳井前駐米大使)の設置を発表した。メンバーはほぼ集団的自衛権の違憲解釈の変更を求める者などで占められている。容認を望む首相の意向に沿った結論を出すためのとんでもない懇談会だ。同時に、安倍首相は内閣法制局に新たな解釈の検討を指示した。改憲と一対の動きとして安倍政権が一歩を踏み出した。わが国の平和を脅かす危険な動きである。

安倍首相が靖国神社に供物
 安倍首相が四月下旬の靖国神社の春季例大祭に、神前に供える「真榊(まさかき)料」を「内閣総理大臣」名で奉納したことが明らかになった。首相は五月八日、「お供え物を出した出さないということは申し上げない」として国内外の反発を避けようとしたが、不信をますます増幅させるだけ。侵略戦争を美化する靖国神社への奉納は、日本を再び戦争への道に導こうとする勢力を激励する行動である。

安倍首相、財界引き連れ中東訪問
 安倍首相は訪米に続いて中東五カ国を歴訪した。四月二十八日にはサウジアラビアのアブドラ国王と会談、日本からの投資を拡大するために、官民の専門協議機関を設置することで合意した。二日にはエジプトのムバラク大統領と会談、経済支援を通じてパレスチナ経済の自立化を促す「平和と繁栄の回廊」構想を再提唱した。今回の訪問には御手洗会長はじめ百七十人の日本経団連の中東訪問団も随行した。輸入原油の約九割を依存する中東地域との関係を強化し、米国のお先棒を担ぎながらも経済大国にふさわしい政治的発言力の拡大を狙ったものだ。

カザフとウラン供給契約
 ウラン埋蔵量世界二位のカザフスタンを約百五十人の企業トップとともに訪問した甘利経済産業相は三十日、マシモフ首相と会談し、ウランの日本への安定供給などを盛り込んだ共同声明を発表した。丸紅が二〇一四年からウランを年二千トン引き取るなど、官民で二十五件の契約を結んだ。見返りとして日本は、原発技術をカザフに供与し、将来はウラン消費量三〜四割をカザフから確保する。エネルギー確保をめざしたものであると同時に、アザフの隣国、中国をけん制するもの。

インド洋への海自派兵延長へ
 政府は二十四日の閣議で、五月一日に期限切れとなるテロ対策特別措置法に基づくインド洋への海上自衛隊の派兵期限を十一月一日まで半年間延長する基本計画の変更を了承した。派遣機関の延長は十一回目で、なし崩し的に米国艦船への給油活動が続くことになる。必要経費は四十一億円。また、安倍首相は四月二十九日、テロ特措法に基づきインド洋で補給活動をしている海上自衛隊を、五月一日にはクウェートの航空自衛隊部隊を訪問、海外派兵の実績をアピールした。

統一地方選、自民の退潮鮮明
 統一地方選挙の後半戦が四月二十二日、終了した。投票率は知事選を除き軒並み低下。地方選挙での自民の退潮が鮮明となるとともに、議席数で前進した民主党も、改革政治に不満を強める住民の受け皿となっていないこともハッキリした。また、参院の補欠選挙は与野党一勝一敗となった。

朝鮮総聯に不当強制捜査
 警視庁公安部は二児拉致事件を口実に二十五日、朝鮮総聯の関連団体である在日本朝鮮留学生同盟など二団体と個人宅を強制捜査した。当然、総聯中央本部は強く抗議した。現場には事前に報道陣が詰めかけ、朝鮮敵視・排外主義をあおる危険な役割を担った。

全国学力テストが実施、管理強化狙う
 全国学力テストが二十四日、四十三年ぶりに実施された。約三万二千七百の小中学校で小六と中三の子供たち約二百三十三万人が動員された(愛知県犬山市の小中十四校と私立学校の四割は不参加)。生活実態アンケートも実施され、子供たちの個人情報が収集された。テストによって学校の序列化や競争の激化を招くことは必至。生徒や教員の管理強化を狙う「教育改革」の一環である。また、テストはベネッセなどの民間に委託されたが、こうした受験産業に情報が管理されることは大きな問題である。


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