労働新聞 2007年3月25日号 トピックス

世界のできごと

(3月10日〜3月19日)

イラク安定化会議、手詰まり露呈
 イラクの首都バグダッドで三月十日、イラク安定化会議が開催された。イラクとその周辺国、国連安保理常任理事国が参加した会議で、「治安」協力とイラクからの避難民の扱い、エネルギー供給の三分野での委員会設置と、四月に外相級会議を開くことなどが決まった。これまで米国は「イラク国内の武装集団を援助している」としてイランやシリアとの直接交渉には応じないとしてきた。だが、今回の会議で方針を変えてイラン、シリアと同席したことは、米国のイラク政策の打つ手がない状況を示すもの。会議で米高官はイラン非難に終始、せめてもの虚勢を張ったが、その衰退は隠せない。

米朝、金融制裁解除で合意
 米国と朝鮮民主主義人民共和国は十九日、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)で凍結されている朝鮮関連口座の資金約二千五百万ドルの全額返還で合意した。これは「私には三つの課題がある。イラク、イラク、イラクだ」(ゲーツ米国防長官)というように、中東政策で手一杯の米国が朝鮮半島政策で少しでも点数を稼ごうとした妥協。しかし米財務省は十四日、BDAと米金融機関との取引禁止を正式決定、以降の金融制裁再発動の余地を残すなど、あらゆる手で朝鮮圧殺を仕掛ける政策は変更していない。

ブッシュ中南米歴訪、成果なく帰国
 ブッシュ米大統領は十四日、南米の大国ブラジルや親米国のコロンビアやグアテマラ、メキシコなど中南米五カ国の歴訪を終えた。ブッシュは「面倒をみるのは米国であることを理解してもらう」などと、中南米全体で進む米国からの自立傾向に歯止めをかけ、親米陣営のタガを閉める意図を隠さない。しかしグアテマラやメキシコでは、それぞれの大統領から自国の労働者が米国内で「不法移民対策」として大量逮捕・国外追放されていることに強い不快感を示されるなど、親米国からも批判を受けた。マスコミからも「成果なく帰国の途に」などと報じられるなど、かえって影響力低下を印象付ける結果となった。

中国全人代、私有財産保証
 中国の国会に相当する第十期全国人民代表大会(全人代)第五回会議は十六日、閉幕した。私有財産に対し公有財産と同等の法的地位を与えた物権法を採択し、国内総生産(GDP)の七割を占める私有財産を保障、また農村の土地請負経営権(農地使用権)と宅地使用権について永久所有を容認するなど、土地私有化も事実上認めた。この決定は「現状追認」との評価もあるが、このことを契機としたいっそう失地農民の増加や農村の疲弊(ひへい)なども懸念されている。

人民のたたかい

(3月10日〜3月19日)


 米国で十七日と十八日、イラク開戦四周年に際して反戦集会・デモが首都ワシントンの国防総省前や基地の町ノースカロライナ州フェトエットビルなど、全米各地一千カ所で行われた。ワシントンのデモには現役兵士なども含む二万人が参加した。反戦デモは世界各国で行われ、十七日にはスペインの首都マドリードで四十万人が参加する集会・デモが行われた。
 フランスドイツスペイン英国で十六日、欧州の航空機メーカー・エアバス社のリストラ計画への同時抗議行動が行われた。
 チェコの首都プラハで十七日、米国のミサイル防衛(MD)施設建設に反対する集会が行われた。
 フランス北西部レンヌなど五都市で十七日、政府の原子力発電所建設に反対し、エネルギー政策の転換を求めるデモが行われ、計七万人が参加した。
 ベトナム南部のビエンホワで十五日から、三谷産業や原田工業など日系企業など外資系工場で賃金引上げや労働条件改善などを求めるストが行われ、四千人が参加した。



日本のできごと

(3月10日〜3月19日)

米の対中包囲網補完する日豪安保宣言
 安倍首相は三月十三日、訪日したオーストラリアのハワード首相と会談、両国の外相、防衛相による協議(日豪2プラス2)の新設など、両国間の安保強化を盛り込んだ日豪安保共同宣言に署名した。また両首相は、日米豪の安保強化でも一致した。先にチェイニー米副大統領が両国を訪問、日豪の安保強化を積極的に後押ししている。日豪は共に米ブッシュ政権のイラク侵略戦争を支持、対朝鮮政策でも歩調を合わせるなどしていた。マスコミは「東アジア安定の基盤」(読売)などと言うが、米ブッシュ政権の中国、朝鮮包囲網強化を強力に補完するものでしかない。

中東での大国外交に批判も
 日本政府が主催する形での、初の中東四者協議が十四日、東京で開催された。この協議には麻生外相、ペレ・イスラエル副首相、エレカット・パレスチナ解放機構(PLO)交渉局長、カスラウィ・ヨルダン国王特別顧問が参加した。麻生はヨルダン川西岸地域での農産業団地など経済協力を通じて、イスラエル、パレスチナの「和解」を演出したい考え。麻生はかねてから「自由と繁栄の弧」などと称して、「自由と価値の外交」を中東にも広げる意思を示してきた。しかし、これは米国の中東政策を補完すると同時に、資源確保を狙った大国外交の一環。こうした構想に対して、阿南・前中国大使が公然と「賢明な外交だとは思わない」と批判するなど、外交関係者からも憂慮する声が上がっている。

駐日米大使、防衛費増額を要求
 シーファ駐日米大使は十四日、「米国は〇五年に国内総生産(GDP)の四%以上を国防費に使っている。一方、日本は一%以下。日本がもっと出せば、わが国にとってもいい影響を与える」などと在日米軍再編などの費用負担問題などをあげながら、さらなる防衛費の増額を求めた。まさに内政干渉そのものだ。米国がイラク戦争の泥沼から抜け出せず、戦争予算が増加する一方という状況での発言であり、なりふり構わない米国のみじめな姿の一端を示すものだ。

民主もタダの光熱水費に多額記載
 国会では、松岡農相の国会事務所の光熱水費が、本来無料にもかかわらず六年連続で四百万以上計上されている問題が俎上(そじょう)に上がっている。与党を「追及」する民主党でも十四日、同党の中井・元法相も〇五年に同様に国会事務所の光熱水費を二百八十六万円も計上していることが分かった。統一地方選・参院選を前に盛んに農相の疑惑を追及している民主党だが、その腐敗体質は「二大政党」にふさわしく、まったく自民と同じだ。

相次ぐ臨界事故隠し
 北陸電力志賀原子力発電所一号機(石川県志賀町)で九九年六月、停止していた原子炉の制御棒が外れ、原子炉が再稼働状態になり、制御不能となる臨界事故が発生していたにもかかわらず、国や自治体などへの報告が行われていなかったことが十五日、判明した。また東北電力女川原発(宮城県女川町)でも八八年、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)では九一年にそれぞれ制御棒が外れる事故が起きていたことが十九日、分かった。いずれも、組織的隠ぺいを行ったことは明らか。もはや核武装の意図を隠さなくなったわが国支配層の核政策が、事故と隣り合わせで行われていることが暴露された格好だ。

欺まん的な残業代割増率アップ
 政府は十三日の閣議で長時間残業の割増賃金を引き上げる労働基準法「改正」案を閣議決定した。法案では、月八十時間を超える残業について賃金の割増率を五〇%以上にすることが盛りこまれている。しかし、この案は「過労死ライン」とされている月八十時間残業まで割増率を上げないとするもので、長時間労働の歯止めとしてまったく不十分なもの。また圧倒的多数を占める中小企業に対する適用は、当面見送るという。この割増率引き上げは当初、ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間の規制撤廃)との抱き合わせで導入が狙われていたものだ。参院選を前にホワイトカラー・エグゼンプションの導入を断念した政府・与党だが、この欺まん的な「残業代割り増し」の導入をテコにしようとしており、幻想は禁物だ。


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