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2012年2月5日号 3面・解説 

ギリシャ、イタリアの新政権
これが「民主主義」の実態

投資家が直接に権力を握る

 リーマン・ショック後の危機打開策として、各国政府は膨大な財政投入を行った。これを背景として、欧州、とくに従来から財政状況が不安定だった、ギリシャ、ポルトガル、イタリアなどの南欧諸国を中心に国家債務(ソブリン)危機が深刻化した。この危機を通じて、いくつかの国では、投資家、財界人が首相や閣僚に就任する事態となった。財界人、資本家が政治権力を握って直接支配を行い、人民への収奪に乗り出したということである。危機の深まりの中、資本主義下における「民主主義」の本質が、よりあらわになっている。


【ギリシャ】欧州支配層に「送り込まれた首相」
 昨年十一月、パパンドレウ前首相の退陣で、経済学者のパパデモス氏を首班とし、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と新民主主義党(ND)の二大政党による大連立政権が成立した。
 パパデモス新首相は、二〇〇二年から一〇年まで欧州中央銀行(ECB)の副総裁を務めた人物だが、ECBのドラギ総裁(元イタリア経済財政相)、国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストであるブランシャールとマサチューセッツ工科大学(MIT)の同窓生でもあった。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長も、同じくMITの出身である。
 さらに、ECB副総裁という経歴からも分かるように、パパデモス首相はギリシャの共通通貨・ユーロへの加盟に役割を果たしてきた人物で、ギリシャのユーロ圏離脱にはもともと否定的である。
 このように、パパデモス首相は、ドラギらを代理人とする欧州の支配層、さらに世界の投資家にとって「信頼できる旧知の人物」で、対ギリシャ債務の返済を「期待できる」として「送り込まれた」人物なのである。
 むろん、パパデモス氏は選挙によって選ばれた国会議員でさえない。ギリシャで政党人でない首相が誕生するのは、一九八九年以来、二十二ぶりのことである。
 さらに、内務相のジアニトシス氏はギリシャ最大の資源会社「ヘレニック石油」の会長である。ギリシャの大連立政権は、財界人、投資家の代理人が直接に政治権力を握った政権である。

【イタリア】財界人が次々と閣僚に
 財政赤字を理由に投資家の攻撃を受けたイタリアは、同じく十一月にIMFの監視下に入ることとなってベルルスコーニ政権が崩壊、経済学者のモンティ氏が首相(経済・財務相を兼任)に就任した。
 モンティ首相も、パパデモス首相と同様、国会議員ではない。わが国マスコミは彼をもっぱら「経済学者」とし、この政権を「学者政権」などと言うが、これは政権の性格をあいまいにさせるものだ。
 モンティ首相は、世界最大手の投資銀行、米ゴールドマン・サックスの国際顧問でもある。同時に、コカコーラの顧問でもあり、むしろ財界人・投資家と言うべきである。この政権の顔ぶれを見れば、パッセラ産業・インフラ・運輸相は、イタリア最大手の金融機関「インテーザ・サンパオロ」の最高経営責任者(CEO)である。日本にたとえれば、メガバンクの代表者が経産相と国交相を兼ねているようなものだ。また、ニューディ観光・スポーツ相は、大手電力会社「エネル」の前会長である。
 このほか、年金研究家のフォルネーロ氏が労働・社会政策相に就任、早速、年金支給年齢の引き上げなどの国民犠牲に乗り出している。さらに、国民の反発に備えてのことでもあろうが、カンチェッリエーリ元警察分署長が内務相、パオラ北大西洋条約機構(NATO)軍事委員会委員長が国防相に就任している。
 なお、パパデモス、モンティとも、米ロックフェラー財閥やブレジンスキー(元米大統領補佐官)らによって設立された政策提言機関、日米欧三極委員会の欧州代表を勤めていた。米国や日本の協力も得やすいと踏んだのであろう。


 両国に共通することは、ソブリン危機を背景に、世界の投資家(選挙で選ばれてもいない)が直接政治に乗り出して権力を掌握したということである。
 両国をはじめ、欧州各国では、「財政再建」を口実に、公務員削減、年金制度改悪、間接税増税などの政策が次々と打ち出され、人民に対する犠牲押しつけが強まっている。これらは当然にも、労働者をはじめとする国民諸階層の反撃を受けている。

【日銀の白川総裁発言】「民主主義の本質問題」
 日本ではどうか。
 小泉政権下、経済財政諮問会議が組織され、奥田・経団連会長(トヨタ自動車会長)が、改革政治の陣頭指揮をとった。
 リーマン・ショック後、日銀は政府と連携し、「危機対応」名目でさまざまな大企業支援策を行った。
 通常、金融機関が行っているコマーシャルペーパー(CP)買い取りを三兆円規模で実施したほか、デフレ不況下で行い、その後中断していた、金融機関保有の株式買い取りも再開。国債や社債、上場投資信託(ETF)などの資産買い取りも始めた。
 これらは、東日本大震災以降、さらに露骨となった。大銀行への百兆円を超える資金供給に加え、日銀が「独自」に成長分野の企業を判断、低利融資を行うことにも踏み込んだ。危機が深まる中、空前の大企業への大盤振る舞いである。
 これは、本来、金融政策を担う日銀が、政府の領域である財政政策にまで踏み込んだことを意味する。
 このような政策を決定しているのは、日銀の政策委員会である。これは九人のメンバーで構成される。国の重大な金融政策が、選挙にもよらない、わずか九人によって決められているということだ。しかもその九人中、日銀総裁、副総裁の計三人がまがりなりにも「国会承認」という手続きがあるが、残りの六人は民間人で、さらに四人が企業経営者である(二〇一二年一月現在)。ここには、形式的な「民主主義」さえない。
 日銀の白川総裁は、一〇年五月の日銀金融研究所での講演で、これらの政策が「非伝統的な」「準財政政策」であると認めている。その上で、「民主主義社会において、中央銀行[日銀]は一般に、そうした政策を政府・議会が遂行する必要があると考えて」いるので、財政的な政策を行うことで、中央銀行は「民主主義社会におけるルールを逸脱しているとの批判に曝(さら)され」かねず、「難しい立場」にあると言い訳する。
 さらに九月の日本金融学会における講演では、財政政策をめぐる政府と中央銀行の役割分担が「民主主義社会における政策決定に関わる本質的な論点」だと言う。
 白川総裁は明言していないが、危機が深いので、日銀が財政政策を行うことが「民主主義に反する」などどという「批判」には構っていられないということである。
 日本では、投資家が直接に首相になったわけではない。だが、白川総裁の発言は、日本の政策も、ギリシャやイタリアなどと同様に、「民主主義」とは縁遠いところで決定されていることを示している。

 「読売新聞」は、ギリシャ、イタリアの事態を指して、民主主義が「市場に敗北した瞬間」と書いた。危機が深まる中、「民主主義」という、資本家による支配をもっともらしく見せかける仕組みさえも投げ捨てられたことを意味する。それほどに危機が深く、世界の投資家、支配層には余裕がないということである。
 さらに、資本主義の下における「民主主義」の正体もあらわになった。かつてレーニンが暴露したように、資本主義下の「民主主義」は資本家による政治支配の道具であり、「結局、ブルジョア独裁にほかならない」(レーニン)。
 この欺まんを暴き出し、投資家が押しつける犠牲を跳ね返すのは、先進国の労働者階級の任務である。その最大の保証は、各国における革命政党の発展である。
 わが国でも、労働者階級の闘いを前進させなければならない。(K)


露骨に投資家・企業家の利益守る布陣

<ギリシャ>
・パパデモス首相:欧州中央銀行(ECB)前副総裁、マサチューセッツ工科大学(MIT)出身、元コロンビア大学教授、元ギリシャ銀行総裁
・ジアニトシス内務相:ヘレニック石油会長

<イタリア>
・モンティ首相・経済・財務相:経済学者、元欧州委員、ゴールドマン・サックス国際顧問、コカコーラ顧問
・パッセラ産業・インフラ・運輸相:
 インテーザ・サンパオロ(金融機関)最高経営責任者(CEO)
・ニューディ観光・スポーツ相:エネル(電力会社)前会長
・パオラ国防相:北大西洋条約機構(NATO)軍事委員会委員長
・セベリーノ法相:弁護士
・フォルネーロ労働・社会政策相:年金専門家(学者)
・サンタアガタ外務相:前米国大使
・カンチェッリエーリ内務相:元警察分署長
・カターニア農林政策相:同省官僚、欧州連合(EU)国際政策部長


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