労働新聞 2007年6月5日号・1面

増え続ける医療難民・介護難民
医師不足で医療崩壊から地域崩壊へ

国民医療切り捨て進める安倍政権
労働組合は住民の先頭で闘おう
命を削る改革政治の転換を

医療関係者、住民が各地で集会
 国の医療制度改革に伴う医療費抑制に反対する闘いが、医療関係者を中心に各地で行われている。
 日本医師会など医療関係四十団体が参加する国民医療推進協議会は五月十八日、東京で「国民医療を守る全国大会」を開き、千二百人が参加した。今月予定されている経済財政諮問会議による「骨太の方針二〇〇七」などの公表に先立ち、政府による「財政再建」優先の医療費削減政策をけん制する狙いで行われたこの大会では、政府の医療費削減政策に対し厳しい批判が続出した。
 日本医師会の唐澤会長は「これまでの日本は先進諸国と比較しても決して高くない医療費水準で、最も公平な医療制度を維持してきた」「今後、医学・技術のさらなる進歩、国民の医療ニーズの高まり、高齢社会の進展等に対応していくためには、医療費は十分な大きさに引き上げられなくてはならない」と指摘、一方で「政府は財政優先の医療費削減政策を断行し、その結果、極限状態での医療提供が強いられ、地域医療の崩壊とも言うべき危機的状況を招いている」「なぜ国民から医療へのフリーアクセスを奪い、患者の負担を増やすような政策を行えるのか」と国を批判した。
 また同様に、各地でも医師会を中心に患者団体や地域高齢者団体なども参加した集会が行われている。これら集会では、より医療問題が切実な地方の状況を反し、切実な訴えが行われている。
 特に大阪や兵庫では、連続して地域での集会が積み上げられるなど、先進的な取り組みが行われている
 大阪では一月二十四日に千八百人の参加して行われた大阪府民大会を皮切りに府内二十八カ所で地域集会を開催、総参加者数は延べ七千人を超えた。国民皆保険制度を守るための署名運動もきわめて熱心に取り組まれている。
 兵庫でも地域での取り組みが積み上げられ、県民にの医療改革の本質と問題点などを訴えている。


 いま全国各地、とりわけ地方での医療危機はきわめて深刻な事態に追い込まれている。地域の医師不足は深刻さを増し、住民の安心・安全な生活を脅かしている。
 特に産婦人科や小児科の医師不足は人命に関わる痛ましい事故をも招き、地域安心・安全な生活は奪われ、もはや「地域崩壊の原因」などの声も聞かれる状況だ。また外科医の人数減少も切実さを増している。
 こうした医師不足が医者の過重労働と医療ミスを引き起こし、さらなる医師不足を招く悪循環も進行している。
 またこの医師不足だけにとどまらず、看護師や助産師の数も圧倒的に不足しており、しかもその事態は今後いっそう進むことが確実だという予測が各方面から出されている。
 「安心して子どもを産み、育てたい」「老いても地域で暮らしたい」……こうした人間としての当然の、最低限の願い・要求を保証のは国と行政の、本来は最も基本的で最低限の責任だ。

医療改革は「死の激痛」
財源的手当てこそ必要

 このような深刻な医療崩壊の事態を許したのは政治の責任だ。状況を好転させるためには十分な財源的手当てを含めた施策が必要だが、与党による改革政治は反対に財源を削ることで事態をさらに悪化させ、国民から医療機会をむしり取っている。
 昨年六月、「痛みを分かち合う」を印籠(いんろう)に、小泉前政権と与党は医療制度改革関連法を強行成立させた。これは、今後高齢化で増加する医療費を削るためのもので、医療費の自己負担引き上げと診療報酬減、長期入院患者の療養病床削減などが盛り込まれた。
 この自己負担引き上げは患者を病院から遠ざけ、加えて医療報酬の引き下げで病院経営は悪化、これが医院の統廃合に拍車をかけ、患者はさらに医療機会を奪われることになっている。
 また国は慢性的な症状の高齢患者が入院している療養病床を現在の三十八万床から二○一二年三月末までに介護保険型は全廃、医療保険型は十五万床に大削減する計画を立てているが、これにより病院を追い出され、介護施設にも入れな大勢の患者・高齢者が「医療難民」「介護難民」へと追いやられることが危ぐされており、そうした事態は少しずつ進行している。
 改革政治は、支配層の言う「痛み」などという生易しいものではなく、「死ぬほどの激痛」となって国民を襲っている。
 ところで、与党として命を削る改革政治を推進しておきながら、事態がさも改善しているかのようなペテンを振りまいているのが公明党だ。公明党は、参議院選挙目当てに「命のマニフェスト」なるものを打ち出している。「病院勤務医の過重労働を解消」などとしているが、今予算では医師不足の対策費はわずか九十二億円。また、小児科・産科の「拠点集約支援」として五・八億円を計上。「さい帯血移植の保険適用」など、相変わらずごく一部の成果を誇大広告して悪政を覆い隠している。
 この党のペテンを許してはならない。

患者らの闘い国動かす
広範な医療守る運動を

 こうした医療改革という国民攻撃に対し、部分的ではあるが貴重な勝利を得ている闘いもある。
 昨年四月から行われた保険の利くリハビリテーション医療に設けていた日数制限は、「リハビリ難民を生むな」などと患者や支援者が日数制限の白紙撤回を要求する全国的な署名運動を展開、四十八万筆の署名を集めて厚労省に迫り、今年四月からの部分的見直しを勝ち取った。
 また厚労省が難病のかいよう性大腸炎とパーキンソン病の患者の公費負担医療を打ち切ろうとしていた問題では、患者団体などが全国で署名運動を展開、改革政治に怒る国民の共感を背景に厚労省に迫り、方針撤回を表明させた。
 しかし現在の闘いは、患者や支援者、また医療関係者などが中心だ。医療の問題は国民生活の問題、地域の問題でもある。国の医療政策を財政重視から国民生活重視へと根本から変えるためには、さらに広範な地域での、そして全国的な闘いが必要だ。
 昨年のメーデーで、連合島根隠岐地域協は隠岐の島町など行政も巻き込んで産科医不足の解消を求める集会とデモを行った(〇六年六月一五日号参照)。また青森県平川市では市職組が病院廃止計画に住民と共に反撃した(4面参照)。こうした、地域の医療問題、ひいては生活の課題での闘いで労働者・労組が先頭に立つことが、今後いっそう求められる。


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