労働新聞 2007年4月15日号・1面

教科書検定
「集団自決」は「自発的な死」
ではない!
対米追随の軍事大国化狙う攻撃

安倍政権の歴史わい曲を許すな

 二〇〇八年度から使われる高校日本史教科書の沖縄戦における「集団自決」に関する記述で、「日本軍が強いた」とする文言がすべて削除された。文部科学省は「集団自決」を「自発的な死」とするウソの歴史を子どもたちに教えていくというのだ。これは沖縄戦の実態を隠して美化する、許されざる暴挙である。安倍政権は対米追随の軍事大国化をめざしており、戦争美化策動は米軍再編などを進めるための地ならしである。この暴挙に対し、沖縄では即座に抗議の声があがった。いち早く声をあげた沖縄に続き、全国で歴史改ざんを許さぬ闘いを繰り広げよう。


沖縄戦の事実ねじ曲げる教科書検定
 文科省が「軍の強制」を否定する根拠としているのが、大阪地裁で争われている「集団自決軍命訴訟」における旧日本軍元守備隊長の「軍命を出していない」との証言だ。これは係争中の裁判で、原告側の主張のみを取り上げたことは「結論が出ていない事柄について断定的に記述しない」という教科書検定基準さえも逸脱したものである。
 県民の四分の一におよぶ約十五万人の住民が犠牲になった沖縄戦の象徴的なできごとが、この「集団自決」である。「集団自決」は沖縄各地で起こった。その犠牲者は六百人を超える。渡嘉敷島では三百人を超える住民が自らの命を絶ったり、肉親に手をかける凄惨な「集団自決」となった。「慶良間の『集団自決』は日本軍が駐留した所でしか起きていない」「軍命を確かに聞いた」「日本軍から手りゅう弾を配られた」…生き残った人たちの証言が、何よりも雄弁に日本軍の関与を物語っている。

戦争美化、軍事大国化進める安倍政権
 「集団自決」問題は、先ごろ問題となった安倍首相の「従軍慰安婦」発言と深い共通性がある。それは両方とも「軍隊の関与」を否定し、あくまで自発的なものであったとする点である。
 安倍首相は戦争美化策動を一貫して続けてきた札付きの人間だ。安倍首相が進める「美しい国」は、対米追随の下、日本が再び軍事大国として登場する危険な戦争の道である。そのために教育基本法を改悪して、国民投票法の成立、米軍と一体化した軍事大国化を進める米軍再編特措法成立を画策し、朝鮮・中国への敵視と排外主義を強めている。
 沖縄戦の悲惨な歴史を振り返れば、「集団自決」は当時の皇民化教育と深く結びついていたことがわかる。安倍首相がたくらむ思想統制は、国民を戦争へと動員すための道具なのだ。この安倍首相の策動を打ち破るためにも、教科書の改ざんを許してはならない。

沖縄から反撃始まる
 沖縄では即座に反撃が始まった。「沖縄戦の歴史わい曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」(高嶋伸欣・福地曠昭共同代表)は四月二日、文科省に修正指示を撤回するよう求めた抗議文を発表。同会は六日、沖縄高教組と沖教組などとともに緊急抗議集会を開いた。集会では渡嘉敷島の「集団自決」で生き残った女性などの怒りを込めた証言が続いた。
 いち早く声をあげた沖縄に続き、歴史の改ざんを許さぬ闘いを全国で繰り広げよう。軍事大国、戦争への道を進む危険な安倍政権を追いつめよう。


沖縄戦美化は戦争への道
県民ぐるみの運動で反撃を

沖縄戦記録フィルム1フィート運動の会
代表 福地曠昭 氏

 高校の歴史教科書の「集団自決」について「日本軍の強制」という記述が削除されたことに大きな怒りを感じる。
 文科省は、当時の座間味島の守備大隊の赤松大尉、梅沢少佐の「軍命は出していない」との証言を根拠にしているが、このことはまったく一方的で、バランスを欠いており、許せない。
 一フィート運動は「沖縄戦 未来への証言」や「ドキュメント沖縄戦」などを制作してきた。この中でも「集団自決」の証言や、集団自決した場所も映されている。
 文書としては残っていないが、渡嘉敷島では住民は役場を通して手榴弾を受け取っている。当時、役場は軍の管理下にあり、一つは自決用、一つは敵に投げるためのものとして配られた。「集団自決」の現場は凄惨なものだった。配られた手榴弾は不発弾が多く、親がクワや包丁で子供のノドを刺した。木の枝で肉親を殴り殺したり、ヒモで自分の首を絞めたりして自決した。多くの学童や女性たちも犠牲になった。日本軍は日ごろ、「捕虜になるな」と命令していたし、国に殉ずることを美徳として教育していた。「集団自決」に軍が関与したことは消すことのできない事実だ。
 安倍首相や政府は、沖縄戦の悲惨さを薄めようとしている。「新しい歴史教科書をつくる会」がそのために動いている。また、教科書会社側の自主規制が強まっていることも許し難い。
「集団自決」を「国家のために自ら命を捧げた人びと」、沖縄戦を「日本軍といっしょに何カ月もよく闘った」と美化する。これはたいへん危険なことで、再び戦争する国づくりだ。また、沖縄では米軍再編で基地強化が進んでいるが、これも同じことだ。
 教科書を改ざんして沖縄戦の歴史をゆがめていくことに対して、県民は大きな怒りをもっている。ひめゆり同窓会や遺族も憤激している。沖縄戦では十五万人が犠牲となったが、再び戦争の道を歩まないというのが県民の総意だ。
 私もそうだが、沖縄には戦争体験者がまだまだたくさん生きている。沖縄戦の事実を消し去ろうとする動きに対して、県民をあげた運動で反撃したい。


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