労働新聞 2007年2月15日号・2面 解説

07年度予算案

改革で国民生活をさらに破壊

 安倍政権は「成長なくして改革なし」といい、いわゆる「成長戦略」なるものを掲げている。現在、国会で審議されている〇七年度予算案は、この「成長戦略」に基づく最初の予算である。その内容は、小泉政権以来の多国籍大企業のための改革を加速させようというものであり、大多数の国民にとっては負担増となるものだ。また、米軍再編など対米追随の政治軍事大国化を狙っている。以下、〇七年度予算を暴露する。


 予算編成を直接に担当する尾身財務相が「改革加速・深化の予算」と述べたことは、改革の性格をよくあらわしている。

2兆円近い国民増税
 〇七年度一般会計予算は、総額八十二兆九千八十八億円(前年度比四%増)、歳出は四十六兆九千七百八十三億円(同一・三%増)である。
 「国債発行額を抑えた」と安倍首相が言う通り、国債の新規発行額は二十五兆四千三百二十億円と、九八年度以来の水準。だがこれは、安倍政権の「成果」ではない。小泉政権下の改革政治により、企業が空前の利益をあげ続けていることによる税収増と、定率減税の半減などの国民への増税で、税収が一六・五%増えたことが理由である。まさに、収奪の結果だ。
 今予算案でもくろまれている国民への主な負担押しつけは別掲の通り。
 所得税の定率減税全廃、住民税定率減税全廃によって総額約一兆七千億円の増税が予定されることに加え、低所得の高齢者に対する住民税非課税限度額が廃止される。昨年、公的年金等控除の縮小と老年者控除の廃止によって住民税負担が数倍に上がったことで、多くの自治体で住民が役所に押しかける事態が起きた。今年度予算の増税案が通れば、再度、同じ事態となる可能性がある。
 安倍政権は「財政再建」を国内政策の第一の課題としており、税制面の国民負担増は、これにとどまらない。日本経団連による「御手洗ビジョン」は消費税率を二〇一一年までに七%、以降一〇%に引き上げることを求めているほどだ。

社会保障削減、負担は増加
 社会保障関連では、本来、歳出が六千八百億円の自然増となるところ、二千二百億円も削り込まれた。要するに国民の負担が増え、給付が減らされる。
 まず、〇四年の年金制度改悪で決まった、国民年金保険料・厚生年金保険料の引き上げが続く。
 また、雇用保険の国庫負担が半減されることにより、失業給付期間が百五十日に短縮され(現行は最大三百日)、給付率も減額される。現在、月最高二万三千二百六十円支給されている生活保護の母子加算も縮小となり(以降は廃止)、まるまる国民負担となる。
 障害者自立支援法関連では、障害者団体などの国会行動の成果で「激変緩和措置」を勝ち取ったものの、「原則一割負担」という、障害者に負担を押し付ける制度の根幹に変更はない。
 地方共通の課題である医師不足の解決も急がれるが、対策費は増えたとはいえわずか九十二億円。逆に、小児科・産科の「拠点集約支援」として五・八億円を計上。この政策は医師不足の原因の一つとなっているもので、政府がこの問題の解決に本腰を入れているとは言えない。
 また、フリーター常用雇用化関連予算は六億円減額され、雇用対策費も十一億円減。タダ働きを合法化するホワイトカラー・エグゼンプションなど、労働法制改悪には二千三百万円もの対策費を用意する。
 文教関連でも、無利子奨学金対象者は七千人しか増えない。それどころか、奨学金の利子に変動金利制度を導入するため、四万五千人増やされる有利子奨学金対象者は、将来、金利が上昇した場合には返済額が増えてしまう。低所得者層の学ぶ機会を奪うものだ。
 私立大学経常費補助は三十二億円削減、これは八四年以来のもので、私立大学の学費値上げに直結することは火を見るよりも明らかである。
 安倍首相は、このような予算でよくも「再チャレンジ」「格差縮小」などと言えたものである。

地方・農業・中小を分断
 小泉政権下で進められた「三位一体改革」を引き継ぎ、地方交付税交付金は四・四%減額(税源移譲分除く)され、この七年間で約六兆円という途方もない地方犠牲となる。
 これは、地方公務員への待遇悪化、投資単独事業の削減による中小建設業者の切り捨て、公営サービスの民営化やサービス悪化につながることは疑いない。
 自由貿易協定(FTA)など、課題山積の農業だが、農林水産関連予算は三・一%も減額される。とくに、コメ・麦・大豆の品目別価格政策を全廃、「担い手」に限った品目横断的経営安定対策費が計上される。また、二十ヘクタール以上の集落営農制度を創設、「国際競争力のある農業」をうたい文句にして、保護策を一部の農民に限定、大多数を切り捨てるという分断策だ。
 中小企業対策費は〇・六%増だが、年々削減されてきた経過もあり、一般歳出全体に占める割合は、わずか〇・三五%。これは、八六年の約半分の割合でしかない。対策費全体が縮減される中、「戦略的基盤技術高度化支援事業」「戦略的中心市街地商業等活性化支援事業」「地域IT(情報技術)利活用モデル構築事業」などが軒並み増額された。ごく一部の「戦略的」事業や地域に予算を重点配備するもので、ここにも政府の分断策が見える。
 公共事業も同様で、「国際競争力強化」のための物流インフラ整備事業(羽田空港再拡張、三大都市圏道路、中枢港湾整備など)が三七・五%も増額される中、地方の港湾(一七・九%減)、住民生活に切実な生活道路や下水道整備費(一四・九%減)は削減だ。

米軍再編費も押しつけ
 防衛費総額は、〇・三%増の四兆八千十六億円。ミサイル防衛費千八百二十六億円(〇四年度比で七一%もの増額)、軍事偵察衛星に六百三億円など、対米追随の軍事大国化を進めるものとなっている。
 また、米軍再編関連は三百十三億円。グアムへの海兵隊移転費三億円を日本国民が負担させられるほか、岩国への移駐費(二十三億円)、嘉手納基地訓練の本土移転費(四億円)など。米軍と自衛隊を一体化させ、基地負担を全国に拡大させるものだ。
 また、「地元の負担軽減に資する措置」百六十六億円を別枠扱いにするなど、防衛費全体を低く見せかけていることも見逃せない。

*    *

 このように、〇七年度予算案は、国民への犠牲押しつけが目白押しである。国民生活を豊かにする予算への転換が、切実に求められている。


予定される主な国民負担増
●税制
・所得税の定率減税全廃(1月、年最大12万5000円)、住民税定率減税全廃(6月、年最大2万円)で、総額1兆7000億円の増税
・低所得の高齢者に対する住民税非課税限度額を廃止
●社会保障
・国民年金保険料240円引き上げ(4月、月1万4000円に)、厚生年金は収入の14.996%に(労使折半)
・生活保護の母子加算の縮小(4月、最大2万3260円が1万5510円)・廃止
・雇用保険への国庫負担が半減され、失業給付期間が最大300日から150日に短縮、給付率も減額
・雇用対策費が11億円減
・フリーター常用雇用化予算も6億円減
・障害者自立支援法の「原則1割負担」は変わらず
・有利子奨学金の利子に変動金利制度を導入
●地方制度
・地方交付税交付金が4.4%減額

大企業には優遇策
●税制
・減価償却減税(6000〜7000億円)、証券優遇税制の3000〜4000億円減税を継続
・物流インフラ整備費の大幅増加(羽田空港再拡張、三大都市圏環状道路、スーパー中枢港湾整備など)


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2007