労働新聞 2006年2月15日号・3面・解説

05年「年次改革要望書」

国民の命危うくする要求続々

 昨年十二月、米国政府から恒例の「年次改革要望書」(以下、「要望書」)が提出された。これは、わが国の市場開放・規制緩和を求める、米国の横暴な要求に満ちている。今年の「要望書」は、日本の医療改革を強く要求するものとなっている。これは、国民の命を危険にさらし、米多国籍大企業に暴利をむさぼらせるものである。不当な対日要求を許さぬためにも、これらの要求を受け入れる小泉政権との闘いが急務である。


 「要望書」は、日米両国が互いの市場開放を求め合い、その進み具合を相互点検するものとして、一九九三年の宮沢・クリントン会談で合意され始まったものである。
 だが、実態は日本の対米従属に規定され、米国がわが国の構造改革・市場開放を求める「採点表」とも言うべきものとなっている。
 そもそも、わが国の構造改革要求されるようになった背景には、八五年に米国が最大の債務国に転落、わが国が世界最大の債権国となったことがある。米国は日米構造協議などでわが国の市場開放を求め、日本政府は「前川レポート」でこれを受け入れた。牛肉・オレンジの自由化や大規模小売店舗法の緩和などは、こうして起こった。
 以降、九三年の日米包括経済協議などを経る中で、わが国の産業構造それ自身の「改革」が迫られるようになった。二〇〇一年、小泉・ブッシュ会談で合意された「成長のための日米経済パートナーシップ」では、日本政府は、米国による対日投資拡大とそのための世論づくりにまでも合意したのである。
 わが国財界の主導権を握った多国籍大企業は、これらの横暴な対日要求を積極的に受け入れる役割を果たした。多国籍大企業は、世界市場で暴利をむさぼるため、自らを米ドル体制に深く組み込むとともに、国内市場を明け渡そうとしている。
 小泉政権が進める諸改革、とくに商法・証券取引法などの改悪、規制改革特区、郵政民営化、耐震偽造問題となってその弊害が露呈した建築基準の緩和なども、こうした中で強行されたのである。

国民の命を危険にさらす
医薬品・機器の市場開放


 〇五年「要望書」は、「米国は日本郵政公社の民営化という日本の改革イニシアティブを特に歓迎する」という文言に典型的に示される通り、小泉政権による改革政治に最大限のエールを送っている。
 さらに、電気通信、情報技術(IT)など十分野での改革を要求している。
 その最大の特徴は、「医療機器・医薬品」分野の要求内容が格段に増えていることである。
 米国の医療分野での対日要求は、〇四年までは「医療機器・医薬品の薬事規制改革」がほとんどであった。つまり、米国製医療機器や医薬品を、すみやかに日本市場で売り込めるようにせよということである。
 今回も「世界的に使用されている百の主要な医薬品のうち、日本では七十三しか入手することができない」などと具体的に述べ、米国産の「革新的な」(=高価で危険な)医薬品の市場開放を求めている。
 これに加え、医療改革を進める場合、「米国医療機関及び医薬品企業に意見を述べる機会を与える」ことまで求めている。
 しかも新たに、薬害エイズ問題で悪名高い、米国産輸入血液製剤の市場開放まで求めている。また、「化粧品および医薬部外品の販売規制緩和」ということで、「効果・効能」の表記に関する諸規制を緩和し、米国産の怪しげな商品を売りつけようというのだ。
 だが、薬害・汚染などの被害を生みかねない医薬品の審査・認可は国の自主的な基準で行われるのが当然であり、これは国民の命と健康にかかわる、重大な主権問題である。
 米国はこの分野での審査迅速化と基準引き下げを要求することで、日本国民の健康をエサに、自国多国籍大企業、医薬産業に大もうけさせようとしている。

日本国民への収奪強める
金融サービス開放


 また、「金融サービス」への要求も、エスカレートしている。
 〇四年までは、投資信託や確定拠出年金(401k)の利用拡大など、主に中所得者以上を対象とする資産運用型のサービスが対象であった。
 だが、〇五年はその第一に「消費者金融や商業金融の法的枠組みを改正する」と述べられているように、低所得者や中小零細事業者向けの金融サービス(貸金業)の市場開放を求めている。その中身は、「金利債務の『グレーゾーン』撤廃」「債務者の保護と債権者の利益をつりあわせる」などである。
 日本では悪徳貸金業者が社会問題となっているが、米国はその比ではない。米国では、日本の「ヤミ金」にあたる業者が労働者の給与を担保に数百%の高利で貸し付けを行う例が後を絶たず、膨大な被害が出ている。当然、これらの背景には、金融大資本がいる。
 「消費者金融や商業金融の市場開放」は、庶民には金利引き上げと債務者保護策の低減などとしてあらわれることは明白だ。事実、在日米国商工会議所は〇二年、わが国の出資法上の制限金利(二九・二%)を「引き下げないよう強く求める」意見書を発表、日本国民への収奪強化をもくろんでいる。

横暴な要求受け入れる
多国籍大企業を暴露しよう


 「要望書」をめぐっては、保守的なマスコミや「知識人」、政治家の中にさえ、不満や批判が高まっている。改革政治の下、国民や中小企業の生活と営業は成り立たず、独占資本の中にさえ矛盾が深まっており、これはある意味で当然である。
 だが、これら「知識人」の圧倒的多数は、だれがこれらの対日要求を受け入れているのかということについて、まったく暴露していない。その意味できわめて不徹底であり、これらの見解では、米国の不当な要求と闘い、打ち破ることはできない。
 横暴な対日要求が実現されているのは、わが国多国籍企業と小泉政権の同意があったればこそではないか。米国の対日要求をはねのけるには、これら売国奴の責任を暴露し、闘うことが重要である。
 多国籍大企業が主導権を握る日本経団連の「奥田ビジョン」が言う「第三の開国」とは、国内市場の開放と改革断行にほかならない。「奥田ビジョン」には、そのための財界による政治介入の強化も宣言されているのだ。
 小泉政権はこの意思にそい、改革政治を推進している。米国と多国籍大企業を暴露し、その代理人の小泉政権と闘う、広範な運動を巻き起こそう。


2005年「年次改革要望書」の主な内容

電気通信
 移動通信分野における競争促進、外国資本によるNTT株式保有への規制撤廃

情報技術(IT)
 電子商取引とオンライン・サービスの促進

医療機器・医薬品
 化粧品・医薬部外品への広告規制撤廃、輸入血液製剤の販売拡大

金融サービス
 金利の「グレーゾーン」撤廃、クレジットへの規制緩和

競争政策
 公正取引委員会の強化、談合防止策の強化

透明性およびその他の政府慣行
 構造改革特別区域拡大、「市民」参加による政策策定

民営化
 公社・公団の民営化推進、郵便貯金と郵便保険での競争条件の同一化

法務制度改革
 外国人弁護士の自由確保、資格基準緩和

商法
 三角合併への税制優遇、買収防衛策の撤回、外国企業の保護

流通
 空港着陸料および使用料の引き下げ、大型店出店規制を行わないこと、クレジットカード利用可能店の拡大


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