労働新聞 2004年2月25日号 3面・解説

笑い止まらぬ米ハゲタカ・ファンド
新生銀行上場は、国民から奪った結果
これが金融改革の正体

 自分は100円しか負担せず、その代わりに140円も受け取れるといったら、日々の生活に苦労する労働者や中小企業は、さぞうらやましいと思うか、怒るか、どちらかであろう。これとまったく同じことが起こったのが、先頃、株式市場に再上場した新生銀行をめぐる事態である。しかも、この銀行が受け取ったカネ(総額約14兆円)は、わが国国民が働いて生み出した富であり、血税である。新生銀行を所有する外資は、小泉政権の進める金融制度改革のおかげで、まさに「ぬれ手にアワ」の巨利を得、一方、労働者、中小企業など日本国民は犠牲を押しつけられ、収奪された。マスコミがもてはやす、新生銀行の「再生」の実態を暴露する。


 新生銀行が2月19日、東京証券取引場第1部に株式を上場した。株価はすぐさま上昇、株主の米リップルウッドなどは、1日で約1兆円を荒稼ぎした。
 新生銀行は、98に破たんした旧・日本長期信用銀行が、リップルウッドが中心となった投資会社に売却されたものだ。
 このわずか3年数カ月での「再生」は、日本国民の血税を湯水のようにつぎ込んだ結果であり、不良債権処理で多数の中小企業を倒産に追い込み、過酷なリストラで労働者を街頭に放り出し、自殺に追い込むなどした結果として資産価値を高め、「優良行」へと変身、株式上場したものである。
 小泉首相はこれを「経営努力のたまもの」と、天まで持ち上げた。マスコミもまた、「新生銀行の再生に学ぶべき」(日経新聞)など、株式上場を美化しているが、リップルウッドの「努力」など、まるでないのが実態だ。

「泥棒に追い銭」の優遇策

 まず、日本長期信用銀行の破たんに際し、7兆9000億円の血税が投入された。わが国の国家予算の10分の1にも匹敵するばく大な資金が、1民間企業に投入されたことになる。
 第2に、新生銀行が引き継いだ資産が、貸出先企業の倒産・不振などで目減りし、2割以上の損失が生じた場合、国(預金保険機構)はその債権を買い戻すことを約束した。これが、「瑕疵(かし)担保条項」である。新生銀行は、この条項のおかげで、9280億円(簿価)もの巨費を得た。
 第3に、新生銀行は、過酷な貸しはがしを行い、中小企業はもちろん、大企業の1部さえ、破たんに追い込んだ。何しろ、瑕疵担保条項があり、貸出先を破たんさせてしまった方が、その債権を国に買ってもらえるのだから、ある意味「当然」の結果ではある。
 同行は、7兆7000億円あった貸出金をわずか3年で半減させた。つまり、約3兆8500億円にも達する、借り手企業への猛烈な貸しはがしを行ったのだ。
 この結果、多数の中小企業はもちろん、そごう、マイカルなどの1部大企業でさえ、破たんに追い込まれた。「帝国データバンク」によると、新生銀行関連での倒産件数は計152社、負債総額は11兆7000億円にも及ぶ。むろん、これは「氷山の一角」だ。
 もし、貸しはがした約3兆8500億円が、資金繰りに苦しむ中小企業への融資として使われたとすれば、1社当たり3850万円としても、10万社もの企業に行き渡る。年収385万円の労働者、実に100万人分の大金である。
 このあまりのひどさには、野中広務・元自民党幹事長は「国民の血税でできた生い立ちを忘れ、貸し渋りや貸しはがしをしている」と批判した。金融庁も01年10月、「業務改善命令」を出して「中小企業向け貸出残高の増額」を言わざるを得なかった。
 これらの悪行の結果として、同行は「健全化」し、株式を上場できた。
 上場にもおまけがある。株式上場でリップルウッドが得た約1兆円の利益には、何と非課税なのだ。
 では、これだけの国民の富を投入され、もうけた新生銀行を買収するために、米リップルウッドはいくら出費したのか。買収資金は総額1210億円だが、リップルウッドが自らのふところを痛めたのは、紙くず同然の旧長銀株を買った、たった10億円である(残りは株式増資で調達)。その会社に、日本国民の血税や貸しはがしで、合計14兆円あまりが転がり込んだのである。まさに、「泥棒に追い銭」だ。
 リップルウッドはこのほかにも、宮崎のシーガイア、日本コロンビアなどを買収した。わが国の富にたかるその様は、まさに獲物をあさる「ハゲタカ」そのものである。
 新生銀行の示すものは、小泉や竹中・経済財政・金融担当相の進める金融制度改革の正体である。国民を犠牲にし、富を米などの外資貢ぐこの連中は、まさに米国の手先、売国奴と言わねばならない。
 日本国民が働いて生み出した富を外資に差し出すことをやめさせ、国民生活、国内経済が豊かになる経済ステムに転換させることは、ますます重大な意義をもっている。


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