労働新聞 2003年11月15日号 社説

第43回総選挙の結果について

2大政党制は
財界の安定した政治支配を
保証するか

 第43回総選挙が11月9日、投開票され、衆議院での新たな勢力関係が確定した。
 前回衆議院選挙以来の3年余、自公保3党連立の小泉政権の下で、親米、海外派兵、政治反動が進み、わが国の進路は重大な岐路に直面した。失業、倒産など国民経済と国民生活の困難も耐え難いまでに深刻化した。
 イラクへの自衛隊派兵など、小泉政権が進める対米追随の売国政治の継続を許すのか否か。多国籍大企業の利益のために国民経済と生活を犠牲にする「改革政治」の加速化を許すのか否か。さらに財界のための「政治改革」、2大政党制の実現に向けた策動を許すのか否か。労働者階級と国民多数にとって、今回総選挙は本来、これら切実な選択、争点が問われるべきものであった。
 しかし、実際の選挙戦は、基本政策で大差のない各党が、「マニフェスト」などといって些末な数値目標を競い合うような代物で、わが国の直面する重大で基本的問題については、何1つとして真剣な論争もやられない、わい小で、国民の願いをまったく裏切るものであった。
 さらに、選挙結果が明らかになるや、財界、マスコミは一斉に「2大政党制に大きく前進」「改革加速化が課題」などというキャンペーンを強めている。
 わが党中央の、総選挙結果についての正式な見解と態度については、本紙次号で掲載する予定だが、この時点でも、必要で可能ないくらかの観点、評価について、若干でも触れておくことが必要であろう。

有権者引き入れられなかった「政権選択選挙」

 今回総選挙結果の最大の特徴、注目すべき事実は、マスコミあげた「政権選択問う選挙」なるキャンペーンにもかかわらず、投票率が小選挙区59.86%、比例区で59.81%と、史上2番目の低さにとどまったことである。
 支配層、財界は、90年代以降、保守二大政党制を戦略的に追求し「政治再編」を画策してきた。それは、自民党一党支配という戦後の支配層の政治支配のシステムが、内外環境の激変の中で限界を迎えた下で、新たな安定的な政治支配の確立を目指すものであった。
 93年の政治再編第1幕から10年、さらに危機を深めた支配層は、今回総選挙で、合併民主党という新たな受け皿も準備し、執拗(しつよう)に保守2大政党制の完成を急いだ。「マニフェスト」「政権選択」などの大キャンペーンは、それに国民を引き込むためのものであった。
 しかし、4割を超える有権者が棄権するという今回総選挙の結果は、この支配層の狙いが、決して成功していないことを、雄弁に物語るものである。
 また、民主党のいくらかの前進にしても、それは有権者の積極的な支持ではなく、小泉政権の悪政に対する、批判票の受け皿となったに過ぎない。
 多くの有権者は「政権選択」どころか、政権与党はもちろん、改革を競い合う民主党を含め、どの党の政策にも信頼を寄せず、選択肢を見つけられずに、投票所に足を運ぶことすらしなかったのである。

政局はいっそう不安定に

 自民、公明、保守新の与党3党の獲得議席は、全体でも改選前を12議席減らし275議席へと後退した。
 40議席を増やした民主党は、来年の参院選も射程に、当面する特別国会で、イラクへの自衛隊派兵や道路公団問題などで、与党への対決姿勢を強めている。
 接近した与野党の力関係の下で、以降の小泉政権の議会運営は何かと不透明、不安定なものとならざるを得まい。
 また、与党の中心たる自民党は、237議席と改選前を10議席減らす敗北となった。自民党は、都市部だけでなく郡部でも苦戦、幹部らの落選が相次いだ。これは、中小商工業者や農民など改革政治に苦しむ諸階層と地方の離反、歴史的な自民党支持基盤の崩壊を意味している。「小泉人気」の凋落(ちょうらく)は明白で、小泉の党内での指導力の弱体化は避けられない。財界は、選挙結果を受けて、改革加速化を要求したが、小泉がこれにこたえれば、党内「抵抗勢力」も、いよいよ反抗を公然化させ、自民党の内紛は後を絶たないこととなろう。
 さらに、この程度の自民党の議席確保すら、公明党の選挙協力なしには不可能であった。今や自民党は連立政権だけでなく、選挙戦それ自身でも公明票の支えなしに闘えなくなった。公明党の犯罪性は明らかだが、小泉は、その公明党に以降の政権運営でいっそうの配慮をせざるを得なくなった。
 しかし、両党間には年金・社会保障や教育基本法・憲法改悪問題など、政策上の相違がいくつもある。それは、言われるほどの相違ではないにしても、違いがないわけでもない。
 さらに、総選挙直後、大惨敗した保守新党が解党し自民党への合流を決めた。これで与党の枠組みは、自公二党の連立となった。当然、公明党は、与党の悪政に、より直接的に責任を問われることとなる。あからさまな改革加速化は、都市中小業者など公明党の支持基盤の利害を脅かし、揺さぶって、自民党との取り引き、妥協など政治的マヌーバーをやりにくくさせよう。
 総選挙の結果生まれた、新たな与野党関係は、安定的政治システムの確立を狙った支配層、財界の思惑とは異なり、政局をいっそう不安定化させるものとなろう。

2大政党も支配層の狙う議会政治安定を保証しない

 今回総選挙の結果について、多国籍大企業の頭目、日本経団連の奥田会長は、「米国型の2大政党制がいちばんいいと思っていた」「日本にもその芽が見えた」と、2大政党制完成を目指す財界の思惑をあけすけに語った。
 自民、民主の2大政党対決があおり立てられ、少数政党が大きく後退した今回の結果からは、短期で見れば、確かに支配層、財界の画策が成功したと見ることもできる。
 しかし、中・長期に見れば、必ずしも2大政党制が、議会での政治支配の安定をもたらす保証はない。2大政党制の完成と、それによる政治の安定は支配層の野望だが、わが国のおかれた客観的実際がそれを可能にするかどうか、それはまた別問題だからである。
 例えば、財界がモデルとする英国の2大政党制も、それが形成された19世紀当時の、世界に君臨した大英帝国の経済力を抜きには考えられなかった。
 当時の英国の支配層は、全世界の植民地から収奪した富で肥え太り、これを使って国内の階級矛盾を緩和することができた。さまざまな階級政策の余地があり、政治家も買収し、2大政党に収れんできる余裕があった。しかも当時の世界資本主義は発展期で、今よりずっと安定していた。
 米国の保守2大政党制も、第1次大戦前後からの米帝国主義の世界覇権の確立の過程で定着するわけで、同じである。
 しかし、こんにちのわが国をめぐる環境は、それとは決定的に異なっている。
 グローバル化した世界資本主義は過去にないほどばく大な過剰生産、過剰資本を抱え、行き詰まり、同時デフレ下で破局に瀕している。米・ドル体制に深く依存するわが国は、目減りするドル資産を抱え、収奪されながら米経済を支え続け、長期不況からの出口すら見つけられずにいる。その上、改革の加速化はデフレ不況を深刻化させ、失業、倒産を激増させて、国民の中でも企業間でも格差を拡大させている。
 当然にも、国民各層の不満と抵抗はいよいよ高まっている。
 このような中で2大政党制を導入しようとも、それは安定を約束するだろうか。深刻な諸階級、階層間の利害対立は、当然にも諸政党に反映するだろうし、政党内部での対立と分裂、派閥抗争その他となってあらわれざるを得ないだろう。そうでなければ別の形で、つまり、政治不信や議会外での行動となってあらわれるだろう。
 また、対米関係での矛盾の深まりは、財界、支配層内部にも深刻な対立を生み出さずにはおかないし、当然ながら、支配的政党内部での矛盾となってあらわれるだろう。
 さらに、2大政党制の一方の極としての民主党は、労働組合をその主たる支持基盤としている。深まる危機下で労働運動がいつまで黙って抑え込まれているか。すでに、連合内部の矛盾の高まりなど、兆しはある。民主党は、そこに本質的不安定さを抱えている。
 これらにこそ、財界の狙い、また、こんにちの彼らの若干の成功と前進にもかかわらず、二大政党制が議会政治の安定を長期に保証しない、客観的基礎、根拠がある。

展望はどこにあるか

 今回の結果から、あるいは戦後の歴史の総括という観点からも、こんにちの悪政を打ち破る上で、社民党や共産党にとって、展望はどこにあるだろうか。これこそ以降の重大問題である。
 野党が議会的な意味でも成功をおさめようとすれば、基本的な戦略観点が求められている。
 例えば、共産党は典型で、その選挙総括で、2大政党制に対する財界の狙いの暴露が、時間不足で対応できなかったなどと言っている。これこそ、彼らが、情勢の全体と支配層の策略を見抜いていなかったことを自白するようなものである。
 また、社民党の土井党首は、選挙のさなかに、民主党との政権協議に参加するなどとたびたび発言した。
 幻想といえばそれまでだが、これなどは、政党として論外である。
 もし社民党が、この時点で展望を見いだすとすれば、このことを真剣に考えてみるべきである。つまり、どういう路線で再建するか、総括が必要である。
 土井路線は、「市民の党」とか「女性の党」「護憲の党」など言い方は変えたものの、きちんとした政治路線など何もなかった。再建というなら、この点こそが問題である。
 この問題は、すでに社民党という1つの党の問題ではないところにまで来ている。これは、闘うすべての人びとが考えねばならない問題である。
 すでに、社民党の再建とか社民主義者の結集などという枠にとどまらず、根本的に、新しい闘う勢力、あるいは党の建設が必要だという意見が、総選挙の結果を見て、急速に高まっている。
 これは当然であるが、いずれにしても問題はこれからである。
 すでに明らかにしたように、わが国の条件下での2大政党制は、支配層が望むような政治支配の安定を保証するものとはなり得ない。
 支配層に反対し、政治の打開を強く求める国民は、遠からず2大政党制を打ち破って、自らの闘う政党をうち立てるであろうし、展望ある政治を実現するに違いない。


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