労働新聞 2003年10月25日号 社説

亡国の道へまた一歩踏み込んだ
日米首脳会談

イラク占領支援、
自衛隊派兵を許すな

 米大統領ブッシュが10月17日来日、日米首脳会談が行われた。
 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会談へ向かう途上、滞在わずか18時間、実質会談は30〜40分という、異様にあわただしい日程で行われた会談であったが、焦点の日本のイラク「復興」支援の具体策を引き出し、ブッシュは大満足で、「偉大な指導者」などと小泉をほめ上げた。
 イラク軍事占領と統治で苦境に陥り、国際的な孤立にあえぐブッシュにとって、小泉政権に確約させた「カネと人(自衛隊)」の対米支援策は、得難い助け船であった。
 今回の首脳会談では、このイラク「復興支援策」と併せ、対朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政策や日米の為替政策などが取り上げられたが、一連の結果は、わが国を、破たんに瀕した米国の世界支配戦略にいっそう深く組み込み、世界での孤立、亡国の道へと、また一歩、踏みこませるものとなった。

突出するわが国のイラク復興支援

 政府は、ブッシュ来日直前の15日、イラク占領への財政支援について、返済義務のない無償資金の形で04年分として15億ドル(1650億円)を拠出すると発表した。これは、英国の3倍、スペインの5倍にも及び、フランスやドイツの「欧州連合(EU)として拠出する2億3000万ドルの1部は負担するが、独自に追加的資金支援は行わない」という態度と比較しても、極めて突出した額である。さらに後日、04年から07年までの4年間で、「復興」資金総額といわれている550億ドルの約1割に当たる、総額50億ドル(5500億円)にものぼるばく大な金額を拠出することも明らかにされた。これは、米国務長官パウエルが「イラク復興支援国会議に向けて、良いシグナルになる」と評価した通り、国際社会で孤立する米国が、諸外国の資金協力を引き出す上でも、絶好の口実となるものである。
 米高官は、91年の湾岸戦争以来のわが国への法外な資金要求を、「キャッシュ・ディスペンザー(現金自動預け払い機)とは思っていない」などと言い訳したが、まさにここにこそ、米国の本音が現れている。
 デフレで苦しむ国民生活は、改革と財政再建の名で切り捨てておきながら、米国の侵略戦争と占領政策には、ばく大な資金(国民の血税)を惜しげもなく投入する。小泉政権は、まさに米国にとって都合のいい「財布」である。
 さらに、ブッシュ来日当日、石破防衛庁長官は、イラク派遣準備命令を自衛隊に発したことを明らかにした。これで、年内ともいわれる自衛隊派兵が具体的に開始される。すでに派兵地域も、イラク南部ということで最終調整段階とされている。
 政府は、先の国会で「イラク復興支援特措法」を可決。自衛隊のイラク派兵を決定したが、現地情勢の緊迫化と、近づく総選挙対策もあり、具体化を躊躇(ちゅうちょ)してきた。しかし8月、米国務副長官アーミテージが「逃げるな」「お茶会ではない」などとどう喝。今回の首脳会談でさらに追い詰められ、派兵準備を急ぐこととなったのである。
 政府がいくら「人道支援」などと言ったところで、この派兵は、イラク人民から見れば明らかに占領軍の一翼への参加で、軍事力をもってする明確な敵対である。先日スペイン大使が射殺され、ポーランド軍が襲撃された。国連事務所さえ攻撃対象である。米英ら外国軍隊に祖国を蹂躙(じゅうりん)され、軍事占領下にあるイラク人民の怒りと抵抗は当然で、自衛隊はイラク人民の猛然たる反撃に遭遇するであろう。まさにそれは、米軍との集団的自衛権の行使(共同軍事行動)、そして侵略戦争への参戦そのものとなるのである。

世界のすう勢見ないニセの国益論

 政府は、独仏を含む全会一致で採択された、国連安保理での新決議1551を根拠に、「国際合意ができた」などと言って資金拠出と自衛隊派兵を合理化しようとしている。
 しかしこれは、国際社会の実際、すう勢を見ない、まったくの欺まんである。
 今回の安保理決議では、米国と独仏やロシアが対立。米国は頭を下げて、復興支援を求める決議案を提出した上、4回にわたって修正案を出し直すなど、ぎりぎりの譲歩を迫られた。これは米国の孤立とその力の衰退のあらわれである。しかも、決議は妥協の産物で、米国の足下を見すかした独、仏、ロシアは決議に賛成はしたものの、共同声明で資金拠出も派兵もしないと明言している。中国も、同様の態度を明らかにした。
 「国際合意」などといっても、現実の世界、国際社会の大勢はこうなっている。
 こういう中でのわが国の突出した対米協力は、まさに米国の小間使い、侵略の先兵の役回りを演じるものである。それは、多極化の世界で、そのすう勢を見られず、孤立し、国際社会の軽蔑(けいべつ)をあびる亡国の道にほかならない。
 しかも、こうまでして、米国に奴隷のようにこき使われて、その見返りでもあるというのか。
 元外交官で、名うての親米家=売国奴・岡崎久彦は、「死地」の米国を助けることで、「友人として尊敬される対等の日米協力関係を実現し……敗戦以来の旧敵国状況から脱する、絶好の機会」(9月28日・読売)と、イラク占領支援が「国益」といってはばからない。米国の困難を救って信頼を受け、より対等な関係になって、国際的発言権を増し、政治、軍事大国になる、などという妄想を描いているのであろう。小泉らの口振りにも、この願望を見て取ることができる。しかし、それはあくまで妄想で、米国がわが国の貢献にこたえる保証は何もない。
 イラン、アザデガン油田開発問題で、米国が、わが国の独自油田開発をつぶした事実を想起すべきである。湾岸戦争時、増税までして140億ドルもの巨額を拠出しながら「遅い、少ない」と評価もされなかった事実を忘れたのか。米国はあくまで自国の利益優先で、わが国の「国益」など歯牙(しが)にもかけない。日米安保体制下、切りなく対米従属を深めるわが国政府の下では、支配層の言う「国益」すら守れないのは明白である。

国富つぎ込みドル体制支える政府

 それだけではない、この瞬間にも、わが国は米国のための「財布」の役割を担わされている。
 首脳会談で、為替政策についてブッシュは「通貨の価値は市場が決める」と語り、わが国の市場介入を牽制した。これは、「強いドル政策を堅持」などと言いながら、実質ドル安を悪いとは思っていないことを意味している。
 これに対し小泉は、わが国の輸出競争力維持のため、円高阻止で市場介入を行う意思を表明した。
 財務省は、この9月一カ月で、過去最高の4兆4573億円もの介入資金をつぎ込んだと発表した。今年の為替介入の累積額は、13兆4828億円となり、初めて10兆円の大台を突破した。
 介入で得たドル資金の大部分は米国債購入に当てられるわけで、とどのつまり、米政府に使途自由な金を貸しているに等しい。
 わが国の介入資金は深刻化する米財政の赤字を埋め、150億ドルと見積もられるイラク戦費の多大な部分すら、まかなっている計算になる。
 大統領選を控え、米製造業者らの圧力の中で、ドル安容認に傾くブッシュだが、一方でドルの独歩安が急速に進めば、米国への資金環流が滞り、ドル暴落すら懸念される。わが国介入資金は、米財政を支え、ブッシュが安心して減税や戦費など、大盤振る舞いの財政投入を行える条件ともなっているのだ。
 米国のために円高を押しつけられ、一方で目減りし続け、紙くずとすらなりかねないドルと米国債に国民の富をつぎ込んで、どこに「国益」があるというのか。それは、米国とドル体制に依存して大もうけを続けるわが国多国籍大企業の利益ではあろうが、わが国国民経済にとっては途方もない損失、リスクである。多国籍大企業などわが国支配層、小泉政権に「国益」を語る資格などみじんもない。
 支配層、売国マスコミらが流布する、恐米論とニセの「国益論」を打ち破り、「復興支援」と自衛隊派兵に反対し、国の進路の抜本的な転換のため国民運動を強め闘おう。


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