労働新聞 2003年4月5日号 社説
長期化するイラク戦争
「復興支援」に名を借りた海外派兵、
集団的自衛権行使を許すな
米英軍によるイラクへの侵略戦争が開始され、2週間以上が経過した。
開戦当初、ブッシュ、ラムズフェルドら米帝国主義の頭目どもは「10日もあれば片づく」などと豪語したが、イラク政府、国民あげた激しい抵抗戦を前に苦戦を強いられ、こんにち「終戦は遠い」(ブッシュ)と悲鳴を上げ、戦争長期化を認めざるを得なくなっている。米国は、3月27日に10万人もの地上軍の増派を決定したが、これこそが思惑が狂って、あわてる侵略者の姿を雄弁に物語るものである。
一方、焦った侵略軍はバクダッドをはじめイラク全土に対する無差別空爆を激化させている。米軍当局の発表によっても、開戦2週間で700発以上の巡航ミサイルと九千発以上の精密誘導爆弾がイラク人民の頭上に投下されたという。市場、住宅街など明かな民間施設に対する空爆で、罪もない市民、非戦闘員が犠牲となり、殺されている。放送局や発電所など非軍事、国民生活関連の施設への攻撃、破壊は、「精密誘導爆弾の使用で市民の犠牲を最小限に抑えている」などという侵略軍の説明が、いかにペテンで欺まんに満ちたものであるかを証明して余りある。さらに侵略軍は、広範囲に小型爆弾をまき散らす新型のクラスター爆弾や放射能被害を与える劣化ウラン弾、さらに核兵器に匹敵するといわれる超大型爆弾デイジーカッターなどを大量に使用し始めた。残虐な「大量破壊兵器」を現実に使用し、大量殺りくを行っているのは、侵略者、米帝国主義である。この米帝国主義に他国の「大量破壊兵器」開発や保有を騒ぎ立て、「査察」を云々する権利など微塵(みじん)もないことは明かである。
ブッシュが侵略戦争の合理化のために語った「イラク国民の解放のための戦争」などという大うそと、フセイン政権とイラク人民を分断しようとする画策は、侵略戦争の残酷な現実の前に完全に暴露された。
こうした無法で、一方的な侵略に対して、祖国を防衛するために立ち上がったイラク政府・フセイン政権とイラク人民の抵抗戦争は、当然の闘いであり、完全に正義である。侵略者の強大な軍事力に抗するイラク政府と人民は、国家の存亡と国民の生存をかけて、あらゆる手段、武器を動員して闘うであろう。
戦争の惨禍は悲しむべきだが、その責任のいっさいは侵略者、米帝国主義とその追随者たちに負わせるべきものである。
米帝国主義の侵略と闘うフセイン政権とイラク国民の正義の祖国防衛戦争を断固支持し、国際連帯を強め、侵略者、米帝国主義に侵略戦争の即時停止、イラクと中東地域全域からの無条件、完全な撤兵を強く求めて闘わなければならない。
「戦後復興」で集団的自衛権行使に踏み出す小泉政権
米本国をはじめ、全世界でイラク戦争反対の世論と行動が巻き起こり、世界の圧倒的多数の諸国が米国の軍事力行使に反対している中、わが国、小泉政権は米国のイラク侵略戦争を即座に支持し、その対米追随、忠実な番犬ぶりを全世界に示し、国内外から反発と不信を買った。しかも、それだけにとどまらず、小泉政権はこのイラク戦争を契機に、日米同盟は国益で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「脅威」に対処するためには、米国のイラク攻撃支持は当然と、売国的な世論操作を繰り返している。さらに、あろうことかイラク戦争の「戦後復興」に名を借り、わが国自衛隊の海外派兵と憲法が禁ずる集団的自衛権の行使、有事法制成立など、米国に従い全世界で戦争協力をするための態勢づくりに狂奔している。政府が開戦直後から検討を始めた「イラク復興支援法案」とは、まさにその目的にそうものである。
すでに「テロ対策特別措置法」にもとづいてイージス艦をインド洋に派遣しているわが国は、イラク戦争での難民支援を名目とした資金協力、政府専用機の派遣など実質的後方支援に着手している。さらに政府は、今国会で「復興支援法案」を成立させ、戦後の治安維持などを名目に、公然と自衛隊のイラク派兵を実現しようというのである。
しかし、イラク国民の祖国防衛戦争によって、長期化の様相を深め、戦局の帰すうも見えない中でのイラク「戦後復興」など、だれが見ても時期尚早、まったくの空論と言うべきものである。しかも、24日に開催されたアラブ連盟外相会議が米英軍によるイラク侵略を厳しく非難し、即時無条件撤退を求める決議を採択したように、国際社会の多数意見は、侵略戦争の即時停止を求めている。この時期に米国の提案に応じて、早々と「戦後復興」などを騒ぎ立てるわが国の態度は、この国際世論に背を向け、敵対し、米国の侵略戦争を擁護、合理化するものに他ならない。これは、米国とともに世界で孤立する亡国の選択である。
復興支援法の危険な狙い
法案で「復興支援」として明記される具体的な自衛隊の任務は、治安維持部隊の後方支援として物資の輸送や道路、橋などの公共インフラの復旧作業と難民への医療活動といわれている。
しかし、国民的な反侵略の抵抗戦が続くイラクにおいては、交戦当事者間の合意を必要とする国連による平和維持活動など、そもそも成立する余地がありえない。イラク国民の反侵略の抵抗戦は、長期に続くであろう。また、石油利権や「復興」需要の独占を図ろうとする米国は、露骨に自国主導の占領、統治を追及しており、この点で国連主導の「復興」を唱える英国とも深刻な矛盾を露呈し出した。急きょ開催された米英首脳会談は、「復興」をめぐる何の合意も得ることができなかった。
米国のイラク攻撃自体に激しく反発するフランス、ロシアなどが米国主導の戦後復興やそのための国連安保理での新決議などに同調することは当面ありえまい。
米欧同盟の亀裂の深まりと、安保理常任理事国内部の矛盾と闘争の激化の中で、すでに国連は機能停止に陥っているのである。
このような中での、世界の大勢に反する、「復興支援」と自衛隊のイラク派遣は、国際社会の要請どころか、露骨な対米支援であり、事実上の侵略戦争への参戦、米侵略軍との共同作戦にまで踏み込むことを意味するものである。
しかも、北朝鮮の「脅威」と連動するなどという政府の見解によれば、他国への先制攻撃を公言するブッシュ・ドクトリンの下、日米の共同作戦体制は北朝鮮にも向けられる。これはまさに、東アジアの戦争の震源、わが国を破局に導くものである。
有事法制早期成立も画策
しかも小泉首相は、24日にベーカー駐日米大使が、与党3党の幹事長に、イラク「復興支援」で自衛隊の派遣を露骨に働きかけたことを受けて、新法成立を待たず、現行法の枠内でも自衛隊を派遣できるとの考えまで明らかにしている。国連平和維持活動(PKO)協力法の「人道的な国際支援」という規定を拡大解釈しようというわけだが、これとて他国軍部隊との調整や武器使用の要件緩和など、法改正に踏み込まざるを得ない。
自民党の中川国対委員長は26日、衆院有事法制特別委員会の自民党議員らと会談し、予算成立後の最優先課題として有事法案を直ちに審議することを申し合わせた。イラク「復興」への自衛隊派兵の前提に自衛隊法改正などを含む有事法制を整備しようという狙いである。小泉は「民主党が対案を出せなければ、政府案を与党だけでも通過させる」と、民主党の審議協力に誘いをかけた。民主党内ではさっそくこれに呼応する動きが始まっているが、菅代表の「イラク戦争反対」がどこまで本当か、真価が問われることとなろう。
米国の無法な侵略戦争に反対し、わが国小泉政権の戦争協力、イラク戦争と「戦後復興」に名を借りた自衛隊の派兵、集団的自衛権行使への突破を許さない国民的な闘いをさらに強く、大きく発展させなければならない。
この闘いの最も確かで主要な力は、国民的な大衆行動にある。労働者、労働組合こそがその先頭に立つべきである。
対米基軸路線の下、無力で動揺的な民主党などの野党への幻想を捨て、大衆行動をいっそう強め、敢然として、この国の進路の転換のために闘おう。
Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2003