労働新聞 2007年1月1日号・16 面

日豪FTA
農業・地域つぶしと闘おう

地域・階層超えた国民的運動を

 日豪両政府は昨年十二月、自由貿易協定(FTA)を中心とする経済連携協定(EPA)締結に向けた政府間交渉開始を決めた。世界有数の農業大国オーストラリアは、コメ、小麦、乳製品、牛肉、砂糖などの農畜産物への関税撤廃をわが国に求めており、撤廃されれば日本農業は広く深刻な打撃を受け、農業生産にとどまらず地域社会の崩壊まで招きかねない。このFTA交渉は、わが国財界の要求で推進されている。中国や米国をにらみながら、豪州市場の確保と鉱物・エネルギー資源の安定的供給を狙っている。同時に、国内の農産物市場を明け渡し、「攻めの農業へ」と称した農業改革と大部分の国内農業の切り捨てに利用することをもくろんでいる。多国籍大企業の利益のために国内の農業生産と地域社会を犠牲にすることは断じて許されない。今年は、日豪FTAによる農業・地域つぶしと闘う国民的運動をつくるため、地域や階層を越えた連携を推進することが求められる年となる。


北海道 道ぐるみの運動めざす
西 裕之・北海道農民連盟事務局長


 政府は、重要農畜産物を交渉から除外することを明記しないまま、農畜産物の輸出大国である豪州とFTA交渉に入ることを決めてしまった。重要品目の関税撤廃は断じて認めるわけにはいかない。

拓銀破たん以上の影響も

 豪州が関税撤廃を求めている農畜産物は小麦や乳製品、牛肉、砂糖、コメなど。どれも北海道の主要な作物であり、道内のどの地域の者であれ、大変な危機感をもっている。
 これは農業者だけの問題ではない。
 農業はすそ野の広い産業で、酪農であればチーズやバターなど乳業、てん菜であれば精糖産業などの関連製造業がある。また、農業機械・資材・飼肥料などの卸売り・小売業、運輸業など、農業関連産業にも大勢の労働者が就いている。勤労者の七割が農業か農業に関連した職場で働いている町もある。
 したがって、FTAの影響は地域社会全体、全道にこれまでにない甚大な影響を与えることになる。道庁の試算では、影響額は約一兆四千億円近くにおよび、北海道拓殖銀行の破たんを上回る経済的な打撃も予想されている。

各界各層と連携強化必要

 現在、農業団体をはじめ、経済団体や労働組合も含めて十八団体で集まり、そこを土台として北海道ぐるみで組める運動を準備することで合意している。関連産業や行政、労組、消費者団体と連携を強化し、広い運動を構築していかなければと思っている。
 北海道の農業と農村を守るため、断固として闘いたい。


鹿児島 「地域全体の問題」アピール
松下 欣隆・JA鹿児島県中央会農政課長


 豪州という農業生産大国とのFTA交渉ということで心配は常にあったが、昨年末の急速な交渉開始決定までの動きには危機感をおぼえている。
 鹿児島においては、特に砂糖と牛肉の生産に大きな影響が予想されている。
 県の試算に基づけば、関税が撤廃されると県内の砂糖生産は「壊滅」、牛肉は「半減」する。サトウキビは種子島以南の島々で生産されているが、これらの離島地域は台風の影響などで代替作物がなく、きわめて深刻な問題となる。肉牛に関しては、島で子牛を産ませ、本土で肥育するというのが一般的だが、こうした構造も変化を余儀なくされるだろう。
 JAとしてはこの問題に非常に危機感をおぼえ、訴えを始めている。広報誌を通じての県内生産者への問題の周知、地元選出国会議員や県、市町村長への申し入れ、地元新聞への意見広告掲載などを行ってきた。自治体や議員など、だれもがこの問題を非常に重く受け止めている。
 これからさらに広く県民にアピールを続ける予定だ。この問題は生産者・農業者だけの問題ではなく、関連産業、さらには地域社会全体の問題だということを訴え、運動を地域全体に広げたい。


沖縄 島に代替作物ない
山城 明夫・石垣市さとうきび生産振興対策室指導員


 一言でいえば、関税がなくなれば石垣島のサトウキビは壊滅、まるっきり無くなることになる。
 サトウキビの場合、鹿児島県の種子島以南で育てられているが、この地域は台風常襲地域だ。台風や干ばつにある程度耐えられる作物といえば、サトウキビしかない。パイナップルなどの果物やカボチャなど野菜も試されたがダメだった。代替作物はない。
 したがって、サトウキビがなくなれば、精糖産業など関連産業もなくなる。地域の基幹産業だけに影響は大きく、地域経済が成り立たなくなる。作付け面積も大きく、農村風景も一変してしまうだろう。
 こうした重大な事態だが、県はまだ日豪FTAの影響による被害の試算などをまだ出していない。早くこうしたことに着手し、県民にこの問題の重要性を訴えることが急がれるのではないか。


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