|
労働新聞 2002年12月15日号 3面インタビュー
|
市町村合併は万能ではない
後藤
國利・
大分県臼杵市長 に聞く
市町村合併を強制する小泉政権に対し、全国町村会など地方自治体の反発が広がっている(前号1面参照)。自治体の中には、合併強制や罰則適用の動きに対抗し、福島県矢祭町や福岡県大木町など、相互に結束を強める動きもある。市町村合併は「自治体のリストラ」であり、その強制は住民の利益にもならない。合併や地方交付税削減問題について勇気ある発言を行っている、大分県臼杵市の後藤くにとし市長に聞いた。
|
現在、国や県の強力な指導のもとに進められている市町村合併問題についての、基本的な考え方を整理しておきます。
市町村合併は1999年の地方分権一括法の制定と共に動きが始まり、2001年3月に国に「市町村合併推進本部」が設置され、動きが本格化したものであります。県においても、2001年6月に「大分県市町村合併支援本部」が置かれました。
国による半強制的な合併劇
合併の支援方法としては、当初「アメは用意するが、ムチは使わない」と総務大臣が公言されておりました。
アメとは、(1)合併後5年間は交付税を少しばかり加算する、(2)合併後10年間は、交付税を合併前の個別自治体分を合算支給する、(3)合併により格差是正などのために新たに必要となるインフラ整備については合併特例債を認める、という3点にしぼられます。
これらアメ、すなわち優遇措置にありつけるのは05年3月31日までに合併したところに限られます。
この期日までに合併しようとするなら、準備に要する期間を差し引くと、03年までには合併の相手先を決めて法定協議に入らなければ間に合いません。法定協議には入るまでに残された期間はもう3カ月ほどしかないという、まことにあわただしい合併推進の動きです。
これらの国や県の動きに臼杵市として対応するに当たり、次の3点に留意する必要があります。
第1点は、このようにあわただしく半強制的な合併劇にもかかわらず、国も県も「この合併は市町村の意思に基づくものであり、住民の主導により合併は行われるものである」と繰り返していることです。住民の主導や市町村の自由な意思によるものならば、このような短期間で検討できるものでないのは火を見るよりも明らかです。
この発言の背後にあるものを、知らなければなりません。
国や県は、この合併の結果については責任が持てない、合併が必ずしも夢のある発展的なものになるとは限らない、合併の結果に対する責任はあなた方が持たなければならない、と言っているのだと考えます。
第2点は、このような状況のもとで、あえて合併を急がなければならない合併推進の本当の理由が国の財政危機にあるということです。
国の国債発行残高が500兆円、地方債全体の残高が200兆円にも達しようとしており、その他にも、地方交付税特別会計の一時借入金などを考えると、国の財政、とりわけ地方交付税特別会計はすでに破たんしているといっても過言ではありません。
今後地方交付税は大幅に縮減されざるを得ないという厳しい現実から、目をそらすことはできません。
市町村合併は国と自治体の双方において、従来の財政運営の責任をうやむやに、新しい自治体に責任転嫁される大きな危険をはらんでいると考えます。
第3点は、地方公共団体の合併ですから、地方公共団体とは「そもそも何をするところか」という地方公共団体が担う役割を、貫徹することができるかどうかという視点です。
地方分権一括法のもとで装いを改めた地方自治法に、地方公共団体の役割が「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する」と記されています。
合併することにより住民福祉の増進が実現するのかどうか、地域の歴史や文化や人情を大事にして地域性を確保できる合併かどうかを、見極めなければなりません。
また、合併は万能ではないし、財政危機打開の唯一の方法でもありません。財政が緊迫する環境のもとで住民福祉の増進と地域における行政を貫徹する1つの手段として合併を考えることができるのならば、選択肢の1つとして合併すればよいのだと思います。
合併で財政は好転しない
以上のようなことを念頭におきながら、合併を検討することになります。
最も大切なことは、住民福祉の増進と地域性を大事に守れるかどうかという点であろうと思います。
合併が国と地方を通じての財政緊迫が最大原因によるものならば、財政がどうなるのかということが住民福祉の増進に直結するのはいうまでもありません。
合併の有無にかかわらず、財政が相当程度緊迫することは確実です。
合併することにより、どれだけ財政が好転するのかを検討すると、大きく分けて、交付税による支援措置と合併特例債による支援措置の2つになります。交付税面での特別支援は、合併直後の臨時交付税給付と交付税の算定替えの2つです。
普通交付税の特別支援は五年間に、臼杵市と野津町の場合約3.3億円、臼杵市と津久見市の場合約3.9億円程度、臼杵、野津、津久見の2市1町の場合約5.5億円程度の金額であり、全体の中ではほとんど財政好転を期待できない程度のものです。
合併は臼杵市の再建のためにするのではありません。臼杵市は、単独でも十分に元気に生き抜いていけると考えています。
合併後の交付税の算出方法についての特別支援策は、合併推進が始まった当初の話では、合併した年の各自治体への交付税額の合算額が合併後10年間にわたり保証されるように聞かされました。しかしその後、合併年の交付税ではなく、それぞれ毎年の計算額を合算するものであることが判明しました。
この算定方式では、それぞれの構成自治体が自主財源で人件費、公債費、扶助費などの義務的経費をまかない続けることができるかどうかを検討しないと、安易な合併は大きな危険を背負い込むことになります。
合併特例債については、特例債といえども借金の一種ですから、慎重に借りなければなりません。
しかし、合併特例債の性格は補助率の高い補助金と起債を組み合わせたようなものですから、住民福祉の向上に役立つ環境整備事業に充てることができれば、市民に喜んでいただけると思います。特例債があるからといって無駄な箱物などに投資することは、厳しく戒めなければなりません。
地域の歴史、文化、人情については共通基盤が大きければ合併に支障はありませんが、大きな隔たりがあれば、どちらに合流するか、お互いに譲り合って中間的なものになってもよいのか、あるいはまったく新しいアイデンティティーをつくり出していくのか、検討しなければなりません。
1940年生まれ、一橋大学社会学部卒。福岡大学薬学部中退。大分県会議員、同自民党議員会長、県議会議長を経て、97年より現職。
Copyright(C) Japan Labor
Party 1996-2002 |
|