「国や県が掲げる愛知万博の『自然との共生』といった理念は非常に重要な事だ。しかし、実際に自然を破壊しない形でできるのかどうか。それは極めて高いハードルになるだろう。(中略)日本の都市計画制度は、公園の緑のような『造成して草木を植える』ことは得意だが、万博で構想されているような『緑を残す』ということについては、あまり経験がないのが実情だ」(瀬口哲夫さん・名市大教授/中日新聞六月二十六日)
このような不安は多方面から叫ばれてきたが、とうとう博覧会国際事務局(BIE)は瀬戸海上の森での開催を決定してしまった。鈴木県知事の「バンザイ」姿は非常に印象的で、あのような手放しの喜びようをあっけにとられて見たものである。
最初に開催ありき。理屈はあとからついてくる。土建政治といわれるようにほとんどの大規模公共事業はそうであった。こうした行政の決定に反対するだけでも市民の側の物理的精神的負担は重いものであるが、これを白紙撤回させることなど至難のわざである。それでも「ものみ山自然観察会」をはじめとする多くの市民・県民が万博に異議を唱えてきた。
「森林生態系を壊して、どうして『自然との共生』なのでしょう」「どこまでの自然破壊なら許せますか、なんて聞かれてもとても答えられない」「森全体は一つのつながりなのです。一部だからといってどうして壊すことが認められるのでしょう」「未来は人びとがどんな自然とつきあって生きていくのか、次代の子供たちにどんな自然を残すのか、が重要な課題だと思います」(ものみ山自然観察会の曽我部行子さん/中日新聞六月二十六日)
森には百十一の古窯跡や三十五の古墳など約百六十カ所の埋蔵文化財が確認されており、絶滅危機種指定のシデコブシの群生地、オオタカ、ギフチョウなど貴重種十六種が確認されている。心安らぐ里山、大都市近郊ではまれな湿地・雑木林の残るこの豊かな自然のど真ん中で、どうして万博を開かねばならないのか、理由がいまだにわからない。陶土を掘りつくしたあとの「グランドキャニオン」と呼ばれる広大な空間がすぐそばにある。整地すればすぐに使えそうだが、この代案さえ通らない。どうしても海上の森なのである。この辺がキナ臭い。
また、万博百五十年の歴史に幕を降ろしたらどうか、という意見もある。すでに万博イデオロギーは過去のものになっている。大規模な「展示」という視覚装置は意味を失っている。万博という経済的乱用はやめる時だと今福龍太さん(中部大教授)は言う。(朝日新聞六月二十一日)
でも、海上の森でやるというのである。人間と自然のかかわり方の新たなあり方をめざして挑戦するのだと愛知県の平井敏文・商工部長ははりきっているのである。トヨタをはじめとする中部財界も、中部空港建設に、万博にと金を出すつもりらしい。橋本さんだけが「金はないよ」とおっしゃった。
結局、カネのツケはこっちにまわってくるという寸法で…。
海上の森「愛知万博」の賛否を問う県民投票を求める会(代表・水田洋さん、影山健さん)が、いよいよ条例制定を議会に求める署名活動を開始した。有権者の五十分の一(二%)の署名を集めないといけない。愛知県は約十万人以上の署名が必要となる。気の遠くなるような数字だが、県民はその努力を首を長くして待っているに違いないと、影山さんたちは意気に感じて燃えている。十万人集めても議会は否決するかもしれない。しかし、その時はその時だ、やるっきゃない。
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