労働新聞 2012年2月5日号 通信・投稿
非正規の正社員化を勝ち取る
やはりストが一番の力
中小バス労組役員 大橋 茂
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中小のバス会社で労組の役員をしています。組合は私鉄総連の所属です。
乗合バスは二〇〇二年に規制緩和され、参入が自由化され、バスが十台もないような小さなバス会社が増えました。一方で、バス路線は地方の過疎地を中心に年々縮小し、この十年間で地球を二周するぐらいの距離で廃止されています。採算が合わない所では子会社化し、運転手を賃金が半分以下の嘱託にするなどしています。バスも、走行距離が百万キロや二百万キロという車両を使っています。犠牲は労働者だけでなく、安全面から見れば利用者にも押しつけられています。
また問題になっているものには、高速ツアーバスがあります。分かりにくいと思いますが、たとえば東京・大阪間を高速道路を使って通常の半分ぐらいの運賃で走るバスです。これは路線バスではなく、観光バスになります。観光会社がインターネットなどで利用客を募集し、運行は小さなバス会社が請負います。
東京では、都庁前などで夜遅くまで利用客を乗せているのを見たことがあるかもしれません。こうした違法駐車によって駅のターミナルなどで突然の渋滞が起き、通常の路線バスやタクシーなどが迷惑をこうむることもあります。大阪では、自治体が駐車場を提供すると申し出たのを断った観光会社もあります。駐車場を使うと、そのために人員を配置しなくてはならないので、経費がかかるのをいやがったのでしょう。
観光バスなので停留所も置いていません。乗客には、乗るまでどこのバス会社かも分かりません。高速道路の路線バスは、たとえ利用者が一人でも走らせなければなりませんが、こうした高速ツアーバスは人数が少ないと中止したり、集合場所が突然、変更になるなど問題が多く、「集合場所が変わって、乗れなかった」などの苦情が殺到しています。
私たちからすれば、安全性や旅客に責任を持つためにも、こうした高速ツアーバスは止めるべきだと思います。国土交通省は、ツアーバスと路線バスが共存できるようにと言っていますが、バス事業と観光事業を共存させるといっても無理だと思います。
ざっとバス業界をことを述べましたが、全体でこの二十年間ほどは輸送人員数はさほど変わっていません。減ったのは私たち運転手などのバス労働者です。
相次いだ合理化攻撃
こうした状況から、私の会社でも合理化攻撃がありました。中小ですから会社の体力がありませんので、生き残るために、生首は切らないという条件で合理化を受け入れました。
まず、貸し切りバスの減車、嘱託運転手の導入です。不採算路線の委託もありました。整備部門の委託化です。整備の人は事務に回ってもらいました。さらにワンマン手当ての廃止もありました。これはワンマンバスに変更された時、運転手が車掌業務も行うので、その負担増に対して若干の手当てを実現させてきたものです。
その後、燃料が高騰しました。バス料金は自治体や国土交通省の許可がなければ値上げできない上に、他社が値上げしない中では、とても値上げはできません。そのため経営はますます厳しくなりました。
会社はさらに合理化を押しつけてきました。拘束時間を増やし、実働を増やしました。バスの運転手はかなり神経を使うので、休憩や休息が必要ですが、それを削ってきました。そして退職者が出ても補充せず、嘱託運転手を拡大しました。
また、自治体が運行するコミュニティバスも嘱託運転手がほとんどです。ちなみにコミュニティバスは採算が合わない路線が多く、自治体が採算不足分を補てんしているところはよいのですが、補てんがないところは大変です。本来は自治体の交通協議会などに労組も参加して、自治体の公共交通体系をどのように確立するのかという議論が必要です。
ストで非正規の正社員化
こうした状況を、組合は黙認してきました。嘱託運転手は低賃金ですから、途中で退職する人が続出し、人手不足になってしまいました。
会社に「人手不足になるのは低賃金の嘱託運転手を増やしたからだ。正社員を採用せよ」と申し入れましたが、会社は「分かった」と言うだけでした。
労組大会で、組合員から「このままでは人手不足で年休も取れない」「過重労働で事故が心配だ」「組合は残業を決める(労基法の)三六協定を結ぶな」との不満がいっせいに出てきました。 組合として、まず正社員の採用について会社をただしました。会社の返事はあいまいなものでした。交渉での「採用する」という返事は、その場をつくろうためのものだったのです。
組合としては組合員の不満の声と会社にだまされたという怒りが結びついて闘争強化を決定しました。
ある春闘で、賃上げ要求と併せて正社員と嘱託社員の賃金を同じにすることと正社員の採用を開始するように要求しました。会社はまともな回答を出さないので、ストライキで闘いました。
その春闘では要求は実現しなかったので、翌年も同様の要求を掲げ、ストライキで闘う態勢をつくりました。それでやっと会社は要求を受け入れ、非正規雇用労働者の正社員への登用試験を開始しました。併せて正社員の募集も開始しました。やはり労組は、ストライキという武器で闘うのが要求実現の一番の力です。
公共交通体系を求める
こうした闘いで非正規労働者の正社員化は大きな成果をあげたと思います。組合員数は、一時期かなり落ち込んでいました。労組ですから数が力です。正社員になった元非正規の労働者も組合に加入しています。また、雇用延長の人も労組に残っていますので、相当に組合員数は回復しました。
こうしたことは、職場の活性化にもつながっています。一時期は、組合員も減ったのでスポーツ大会や旅行などのレク活動も停滞していましたが、いまは復活しています。労働組合ですから、闘いが中心ですが、職場の人間同士の親睦(しんぼく)も大事な活動です。そうしたつながりが、団結の基礎になります。
もちろん、これですべてが万々歳ではありません。バス事業を取り巻く環境は依然として厳しいものがあります。高速道路の無料化によって、地域ではバス路線が廃止になったり、フェリー会社が廃業や倒産に追い込まれています。根本は公共交通体系をどうするのかということになると思います。私たち労組は、実情を知っているのですから、要求をきちんと政府や自治体に出していくことが必要だと思っています。併せて、鉄道やタクシーなどの労組が参加する交運労協の仲間たちとも連携を強めていくことが大事だと思います。
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