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労働新聞 2010年1月1日号 通信・投稿

今年は韓国併合100年

NHK「坂の上の雲」の
朝鮮支配正当化を論破

書籍紹介
「司馬遼太郎の歴史観」
〜その「朝鮮観」と
「明治栄光論」を問う〜

 読者の皆様、明けましておめでとうございます。
 昨年はひどい人種差別事件が相次ぎましたね。特に「在日特権を許さない市民の会」(在特会)がらみの事件が。四月には埼玉県蕨市でフィリピン人少女に対し「日本から出て行け」とデモ行進し、少女の通う中学校前に押しかけるという狼藉(ろうぜき)を働きました。十二月には京都市にある朝鮮初級学校(小学校)に押しかけ、児童らを「スパイの子」と罵倒(ばとう)するなどしました。またその他全国各地で排外主義を鼓舞するデモなどを行いました。
 集団で子どもらを威嚇するなど、もはや人種差別を超えた問題であり、れっきとした犯罪なののですが、これがそれなりにまかり通ってしまっているのがこの日本社会です。背景には明治以降百四十年にわたって再生産され続けている根深いアジア蔑視(べっし)があるとしか思えません。

美化される明治時代
 昨年末に放送されたNHKの「坂の上の雲」を観ましたか。「これまでにないスケールのドラマ」との触れ込みだけあって、カネと時間がかかっていそうです。一流の役者が国家創成期の熱く高い志を抱いた青年を演じ、日清・日露戦争で活躍する軍人兄弟を実に雄々しく描いています。かつて軍国少年が抱いた「軍人さんカッコイイ」というあこがれを追体験できます。
 さてNHKは総力を挙げてつくるこのドラマにおいて、事もなげに日清・日露戦争を「防衛戦」と、朝鮮半島支配を「避けがたかった」と描いています。「百年安心の年金」じゃないですが、百年前とまるで変わらないカビ臭い認識が、いまだに大手を振っていることにあ然とするほかはありません。
 著者の中塚氏は、ドラマの原作である司馬遼太郎の「封建的で遅れた韓国が大国であるロシアや中国・清の植民地にされれば、その次は日本だった。だから韓国が日本に併合されたことも、二つの戦争も避けがたかった」という歴史認識について、歴史学者として史実を一つ一つ明らかにし、論破しています。同時に司馬史観の根底に流れる朝鮮・中華民族蔑視も指摘、批判しています。また著者は、晩年の司馬の朝鮮観に変化が見られたことと、それが司馬自身「坂の上の雲」の映像化に反対し続けてきた理由である可能性も指摘しています。
 韓国併合百年の今年、そしてそこにあえてNHKが「坂の上の雲」ドラマ化をぶつけてきたこの時期に読むのにふさわしい本だと思います。内容は硬いのですが、きわめて平易で読みやすい本なので、気楽に読むことができるでしょう。

米国の属国よりはマシ?
 ところでNHKはこのドラマの企画意図として「少年のような希望をもって国の近代化に取り組み、存亡をかけて日露戦争を戦った『少年の国・明治』の物語」「新たな価値観の創造に苦悩・奮闘した明治」「日本がこれから向かうべき道を考える上で大きなヒントを与えてくれるに違いない」などと説明しているようです。
 うーん、史実を離れたお手盛り歴史観のドラマから、どのようなヒントを導き出せというのか、答えを教えてほしいところですが、私なりには一つおもしろいところがありました。
 時の外相・小村寿太郎が清の李鴻章に対し「わが国は自国の軍隊の輸送を他国に委ねたりしない」と胸を張り、英国の威を借りて戦争しようとする清をあざける場面があります。つまりこれは、米国の威を借りて中国に対抗しようとする現在の日本外交・軍事に対する、国営放送としての自己批判と理解してよいのでしょうか?(M)

中塚 明・著 高文研 一七八五円(税込)


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