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労働新聞 2008年4月15日号 通信・投稿
前号に引き続いて、句切れについてお話しましょう。
下五(座五)で切る
今回は下五(座五)で切ることを「かな」「けり」の切字を使った例で見ていきましょう。
ぼろぼろの体に熱きおでんかな
岸本尚毅
我が声の吹き戻さるる野分かな
内藤鳴雪(めいせつ)
一句目は、仕事を終えて、疲れきった体で、熱いおでんを食べている様子がよくうかがえます。上五、中七で句の内容をしっかり詠んで、上句を受けて「かな」で言い止めているのです。「おでん」は冬の季語です。
二句目は、自分の声が野分(のわき)によって、吹き戻されているようだと感じているのです。どちらの句も、上句で描写したことがらを、「かな」で断定し、詠嘆していることが分かります。下五の「かな」によって一句の内容を一瞬の感動として表現することができるのです。「野分」は、今で言う台風で、秋の季語です。
原爆地子がかげろふに消えゆけり 石原八束(やつか)
兄いもとひとつの凧(たこ)を上げにけり 安住 敦
一句目では、爆心地にゆらゆらと立つ「陽炎」(かげろう)の中に消えてゆく子どもたちの姿をよく表しています。
二句目では、兄妹で一つの凧を仲良く揚げている光景を下五(座五)の「けり」で詠嘆しています。「消えゆけり」「あげにけり」と読者に情景を提示するだけで、一句の余情を生み出します。「けり」は回想する助動詞とも言われています。「かな」は通常は下五に置かれることが多く、他の切字「や」「けり」に比べるとひびきがまろやかです。「けり」がもっとも強いひびきとなります。
「や」「かな」「けり」の併用は禁じ手?
「かな」を下五に置く場合は上五、中七ではほかの切字を使わないようにすることが大切です。詠むべき対象の焦点が定まらず、印象がばらばらになる危険性があるからです。初心者には、失敗のもとですから、君子危うきに近寄らずで、なるべく両方を一度に使わないようにした方がいいでしょう。
もちろん、例外もあります。有名な「降る雪や明治は遠くなりにけり」(中村草田男)の句のように「や」「けり」を併用した俳句もあります。俳句はもともと、どのような表現をしてもいい形式ですから、原則として、禁じ手などはありませんが、表現上、読者にうまく伝わらないという失敗を犯さないために、慣れない初心者には禁じ手として伝えられているものです。
次回は、禁じ手(?)の第二弾「三句切れ(三段切れ)」「季重(かさ)なり」についてお話しいたしましょう。(次回は五月十五日号掲載)
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