労働新聞 2008年3月25日号 通信・投稿

夜間定時制高校の統廃合反対
働く生徒に多大な通学負担

生徒の学習権奪うな

教職員組合組合員 松宮 信


 三重県教育委員会は、「教育改革」の名の下で、県下各地で次々と夜間定時制高校を廃止しています。県教委のいう「教育改革」とは、小泉改革と同様、「費用対効果論」により、働きながら学ぶ生徒=社会的弱者を切り捨てる、新自由主義改革の教育版にほかなりません。
 三重県鈴鹿市・亀山市においても、亀山市のA高校、鈴鹿市のB高校という二つの全日制高校に併設されている夜間定時制高校を廃止して、鈴鹿市の別の全日制C高校に統合しようというとんでもない案が、〇八年一月に県教委から突然提示されました。唐突というのは、定時制に学ぶ生徒や保護者、地域住民、そして管理職も含めた教職員の思い・ニーズ等を一切聞きもせずにという意味です。

経済の観点のみの「改革」
 しかもC校は、AB両校よりも小規模ではるかに手狭です。そして芸術デザイン関係、英語関係の専門学科で、一人ひとりの生徒によりそった、きめ細やかな教育を行っています。夜間定時制であれ何であれ、併設できるようなスペースはどこにもありません。今でももっとスペースが欲しいほどです。C校の教職員は全員、「県教委は一体何を考えているんだ」と、怒りを通り越してあきれかえってしまっています。要するに県教委の案は、一人ひとりの人間の視点ではなく、ひたすら狭い意味での「経済効果」のみを追求する、机上の空論にすぎないということです。
 このような案がまかり通ってしまえば、高校に通えない生徒、すなわち憲法第二十六条で保障された「教育を受ける権利」を侵害される生徒が確実に出てしまいます。
 夜間定時制に通う生徒は、昼間の企業等での労働を終えたあと、さらに夜間に学校で学習する日々を送っているのです。しかし亀山市のA校から鈴鹿市のC校までは十キロメートル以上もあり、夜間定時制の授業開始の時間帯には車でも三十分以上余計にかかってしまいます。たとえスクールバスを出しても同じことです。
 この距離は単に物理的なものではありません。精神的な距離でもあります。労働を終えた後の、さらに余分な三十分。それが生徒の高校進学を断念させてしまう絶望的な距離になり得ることは、誰にでも十分に予想できることではないでしょうか。
 現在、労働を終えた後の生徒をA校まで送ってくれる会社の方もいます。しかしその方も、「C校まではとても無理だ」と発言されています。
 夜間定時制高校には、大規模な全日制高校になじめず、小規模で家族的な雰囲気の夜間定時制に居場所を見いだして通っている生徒もいます。学校の統廃合は、そのような生徒からもせっかく見つけた居場所を奪ってしまうことになるでしょう。これも学習権の侵害です。
 鈴鹿市は自動車関連を始め企業が多く、外国人人口が県下で最も多い都市です。AB両校定時制やC高校にも、様々な国籍の生徒が数多く通っています。しかし通訳・日本語指導等外国籍生徒の学習権保障のための手立てはまったく不十分です。そこで私たちは、あらゆる場で、施策の充実を訴えてきました。
 ところが県教委は「財政的に余裕がない。各校別々でこれ以上の手立ては無理なので統廃合する」というのです。すなわち統廃合によって、安上がりに済まそうというわけです。
 しかし、累進課税などによって、経済的余裕のある富裕層から社会的弱者へと富を再配分していくというのが、民主主義社会の基本理念であり、人権保障の基本理念ではないでしょうか。そして、外国籍児童・生徒を特定の学校に集めるいわゆる「拠点校方式」ではなく、どこの学校にも日本の児童・生徒と共に外国籍児童・生徒がいるというのが、真の多文化共生教育=共育の姿ではないでしょうか。
 さらにC校で学ぶ生徒にとっても、狭い学校がより狭くなり、今までのような一人ひとりによりそったきめ細やかな教育が困難となり、教育条件の著しい悪化は不可避です。これもまた教育権の侵害です。

地域ぐるみで闘いたい
 県教委による夜間定時制の統廃合は、まさにこのような民主主義・人権保障の基本理念、多文化共生の基本理念に逆行し、生徒の学習権を侵害するものです。
 このような県教委の動きに対して、私たちは、生徒の学習権を保障するために、教職員組合の該当の各分会、各支部と本部が連携し一体となって反対しています。また、保護者や地域住民に訴えて理解・協力を得たり、この問題の重大性を理解してもらえる、心ある市会議員、県会議員などのみなさんにも党派を超えて働きかけ、協力を要請しています。 私たちはこのような動きをさらに強めて、何としても、県教委による「教育改革」に名を借りた学校の統廃合、生徒の学習権侵害を止めたいと思っています。


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