労働新聞 2008年3月15日号 通信・投稿

俳句作りを楽しむ(4)

句切れの使い方

水津 哲


 前号では、とにかく、五・七・五に言葉を当てはめて作ってみましょう、そのとき、上五・中七・下五のどこかに「季語」を入れれば、簡単に作れます、と述べました。読者の皆さんは、どのような俳句ができましたか?
 さて、今回は「句切れ」について、お話しましょう。俳句の表現において、いちばん大事なものは、五・七・五と「切れ」です。その「切れ」を創るのに、手軽な方法が切字(きれじ)を使うことです。一句の中に「切れ」を入れることによって、俳句の表現する力が大きく飛躍します。つまり、一句の中で、言葉と言葉の関係を「切って、つなげる」ことで、言葉の意味をいったん断ち切り宙ぶらりんの状態を作り出すことによって、言葉の持っている世界のイメージを大きくする効果をもたらします。上五で切れる句を「初句切れ」、中七で切れる句を「二句切れ」、一句の中に句切れが二つ以上あるものを、「三句切れ」、あるいは「三段切れ」といいます。

上五で切る(初句切れ)
 上五で典型的に「切れ」を作る「や」を使った例をみてみましょう。

古池や蛙飛び込む水の音        芭蕉
流燈や一つにはかにさかのぼる     蛇笏

 芭蕉の句では言葉の意味としては「古池に」としてもいいわけですし、蛇笏の句も「流燈が」にしても意味は通じますが、「古池」と「流燈」の象徴性が薄められててしまい、句の格調が劣るのがお分かりいただけると思います。他にも、上五で切れる例句を示してみましょう。

未来とはのびほうだいの葛の花     山口 剛
全裸なり太初の闇にひざまずき     高澤晶子

二句目で切る(二句切れ)
 次に二句切れの例句を示してみましょう。

速達は急いで来るよ青嵐        正木ゆう子
たんぽぽの大きな花や薄曇       松本たかし

 「たんぽぽ」が春の季語で、「たんぽぽの大きな花や」を「たんぽぽの大きな花に」に変えると意味ははっきりしますが、句が直線的になって、「や」を使った場合の余情がなくなってしまいます。二句切れの基本は、上五・中七で情景をしっかり描写することが大切です。そうすれば、下五の言葉とよく響き合います。

「君が代」に起つも起たぬも蝌蚪(かと)の昼  山本紫黄(しこう)

 意味を強調する係助詞「も」を使って切れを入れています。「君が代」斉唱の時に、起立しようが、しまいがどちらでも自由にすればいいじゃないか、と言っているのです。どちらにしても、蝌蚪がうようよといる昼間であることよ、という意でしょうか。「蝌蚪」は「おたまじゃくし」のこと。産卵期に蛙の声は、一段とにぎやかになります。春の昼を、古人は、朝晩にうるさいほどに鳴く蛙に目を借りられるようだとたとえました。それほど春の昼は眠く、「蛙の目借(めか)り時」という春の季語になっています。(次回は四月十五日号掲載)(


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