労働新聞 2008年2月25日号 通信・投稿

日給100円上がり手当3万円減
「やってられないよ!」

正社員の賃金明細見ると……
あまりにひどい待遇差別

工場清掃労働者=契約社員
岸田 行雄


制度や手当を次々廃止
 オレはある大手企業の子会社に雇われている。賃金は一日七千三百円。一年契約の契約社員だ。親会社の工場の清掃作業をやっている。
 オレの賃金明細書は親会社と同じ形式なんだそうだ。調整給、職務手当、住宅手当、家族手当、通勤手当、いろんな手当の項目が書いてある。医療費補助金、特別手当……これって何? 親会社はいろんな手当もらっているんだな。でも、オレたちにはまったく関係ない。賃金明細書を見るたびに疑問と怒りがわいてくる。
 いま気になっているのは、忌引休暇だ。これはふつうだったら有給だろう。オレたちは皆勤手当には響かないけど、無給だ。社員はちゃんと有給になっているんだから、おかしいよ。その上、忌引きの時は会葬御礼などの証拠を出せという。皆勤手当を出すのがそんなに惜しいのか、オレたちを疑ってかかる。
 会社は都合のいい理由をつけて、制度や手当をどんどん廃止している。何でも取り上げられっぱなしだ。去年から旅行補助費がなくなってしまった。ここは全員で休むことができない職場だから、その代償として出ていた手当だったのに。
 三年前には「国民の祝日」が取り上げられた。その理由は、休むより働いて稼いだほうがいいという声が上がったからだという。でもそれは怪しい。会社が一部の人を使って騒がせたんだ。「国民の祝日」ぐらい休みたいとみんな言っている。オレたちは国民としても認められないのか。
 そんな中で、日給が百円上がることになった。二十年ぶりの賃上げだ。だけど、喜んではいられない。そのかわり、年に一回出ていた決算手当三万円がなくなった。会社にとってどっちが得か、計算すればオレにだってわかる。その上、きつい仕事が増えることになった。会社は、賃上げするから仕事も増えて当然と、押しつけてきた。オレは百円いらないから、その仕事外してほしいよ。
 この前、たまたま親会社の社員の給料明細書が落ちていた。ちらっと見ただけだけど、びっくりしたね。残業は多いのかもしれないけど、何と手取り七十八万九千円……。「やってられないよ!」。その日は仕事するのがバカらしくなり、仲間といっしょにそのまま帰ってしまった。

いじめ、ゴマすり、パワハラ……
 勤務時間は八時半〜五時半まで、五日働いて二日休むというパターンだ。毎月、出勤する曜日が変わっていく。たまには土日・祝日に休みたいけど、そんな自由はない。でも、中には月火ばかり休んでいる人もいる。主任に気に入られるとけっこう自由に変更してもらえるらしい。えこひいき、不平等がまかり通っている。
 職場はグループに分けられていて、オレのグループは二十六人。一人の社員が二十五人の契約社員を監督している。働いている人は男女半々で、ほとんどが中高年だ。六十五歳までは一年契約、六十五歳を過ぎると半年契約、七十歳を超えると三カ月契約となる。身障者もいるし、七十三歳で働いている人もいる。みんな生きるためにがんばっているのに、高齢者や障害者に対して「仕事が遅い」とか、陰口を言ったりする人がいるのは悲しい。
 仕事は毎日が「運動」だ。ダイエットにはいい職場かも。女性は十キロはやせる。オレも六キロやせた。それだけきつい職場だ。その上、ゴマすり、セクハラ、パワハラ……いろんなことがある。
 仕事は二〜三人で組んでやっている。二人作業のとき、一人が病気で急に休んだりしたら大変なことになる。主任が応援に来る場合もあるが、応援に来ない時は一人でやらなくてはならない。二人分の作業を一人でやるのはつらいし、何の手当もない。
 そんな時、親会社の担当者から「あれ、今日は一人なの?」って変な顔をされるが、病気で休んでいると言ってはダメで、「後から来ます」とか、うまいこと言えと上司から言われている。
 それって、おかしいんじゃないか。会社は二人分の報酬をもらっているということだ。だったら、オレたちに手当をつけても当然だろう。二倍働いているんだから。こんな場合は「無理してやるな、一人ではできないと言おう」と仲間たちと話している。

派遣もオレたちも使い捨てだ
 親会社には労働組合があるが、子会社にはない。親会社の労組が認めたからと、労働条件の変更を押しつけてくることもある。とんでもないことだ。
 仲間には、組合がなくても要求はできるんだよと話している。みんなにらまれるのが嫌で「岸田さん、言ってよ」と頼んでくるので、上司に談判したりしている。それで、うるさく思われたようで、ボーナスはマイナス査定され、みんなより一万円くらい少ない。
 会社は、気に入らない人間を辞めさせる場合、いじめの多いつらい職場に配転させる。そこで辞めてしまえば、その監督の評価が上がるというわけだ。そういう卑劣なことがまかり通っている。
 親会社でも派遣労働者が増えている。制服は同じだから外見ではわからないけど、派遣の人たちはオレたちに愚痴をごぼしたりするので、誰が派遣かというのはすぐに分かる。かれらもオレたちと同じ程度の給料しかもらってない。社員の給料を見たら、黙ってはいないだろうな。
 また、孫請けの会社もあるが、そこはもっとひどい状況だ。人手不足で、三週間も休みがなかったり、一カ月家に帰さないという話も聞いた。残業代があるから手取りはオレたちよりも多いけど、これは労基法違反だ。奴隷みたいで可哀想なぐらいだ。仕事を断ると「じゃあ、辞めていいよ」ということで、何も言えない状況らしい。
 結局、派遣労働者もオレたちも使い捨てなんだ。退職金もないし、在職中に病気で死んでも一円の見舞金もない。社員には五百万円が死亡見舞金として保険から出るらしい。差別じゃないか。
 上司から「おーい、七千三百円集まれ」と言われることもある。オレたちは人間として認められていない、人間としての権利を認められていない。俺はそのことがたまらなく悔しい。この状況をなんとかしたいと考えているところだ。


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