労働新聞 2008年2月15日号 通信・投稿

企業が学校と子どもを食い物 夜間塾の中止を求めます

公教育民営化の突破口
「夜スペ」に異議あり!

杉並区議会議員 松尾 ゆり


 杉並区立和田中学校で行う夜間塾(通称「夜スペ」)が昨年十二月に発表されて以来、全国的に大きく報道され、注目を集めています。学校の校舎を無料で提供して、大手進学塾「サピックス」が週四日、有料で授業を行うというもので、一月二十六日から実施されています。

成績で生徒を差別・選別
 この二カ月の間、私も多くの方から「どういうことなのか」と聞かれました。「どうせ塾に行かなくてはいけないのだから、学校が半額でやってくれるのはよいこと」と受け取っている向きも多いのですが、そう単純な話ではありません。
 まず、この塾はテストの平均八〇点以上の生徒が対象です。成績のよい子しか参加できないのです。希望したけれど、学校から説得されてあきらめたという子もいるそうです。校長は「下位のほうはちゃんと土曜寺子屋という事業でフォローしている」と胸をはっていますが、区民から「成績上位の子は『夜スペシャル』で下位の子は『寺子屋』とは名称からして差別では」との声も聞こえるように、生徒を成績で明確に選別しています。
 「上位の子を伸ばすための事業」と校長はマスコミなどでしきりに主張していますが、「都立の進学重点校や私立の中上位校を狙う」と公言しており、大手進学塾が行う授業はもっぱら受験指導に特化します。要するに有名校に何人合格させたという実績がほしい塾と校長の利害のために、参加した生徒たちは「伸ばす」どころか合格するためにぎゅうぎゅう受験勉強をさせられ「広告塔」にさせられるわけです。
 一月には東京都教育委員会から疑義が出されました。上記のような子どもの選別は教育の機会均等に反するという点、また、公立学校の施設を使って特定の企業が営業するのは公共性に反するという点などです。これらの点について区教委は、何の改善もせずに「学校が直接やるのではなく、『地域本部』というボランティア団体の事業なので問題ない」という見解を示して事業の積極的推進を表明しました。結局、都教委も一転して「区の取り組みは支援していく」と、容認してしまいました。

競争あおる民間人校長
 杉並区の教育といえば、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書を採用していることでも全国的に有名になりましたが、そればかりではなく、国の教育改革を先取りするように、教育費の削減、規制の緩和、民間委託などを進めてきました。学校希望制(選択制)や「師範館」という教員養成機関の設置、また、独自の学力テストの実施、学校給食や用務の民間委託など次々に打ち出される教育施策は、小中学校の教育現場を混乱させてきました。
 和田中学校の校長はその一環として五年前に「民間人校長」として、あのリクルートから鳴り物入りで転職してきた人です。普通の校長なら絶対やらないことをやり、学校間競争をあおる役割を果たしてきました。
 今回の夜間塾以前にも、すでに「地域本部」を通じて別の塾や企業との連携を積極的に進めており、企業が学校に入り込む手引きをしています。この事業を契機に、教育産業にとどまらない多くの企業に、学校と子どもが食い物にされていくことになるのではないでしょうか。まさに「公教育の民営化」の突破口ともいえます。
 公教育と企業との間に一線を引くべき教育委員会は、こうしたことが分かっているのに見て見ないふりをし、何一つ指導しないどころか、後追いでアリバイ的に契約書類をつくるなど、和田中校長のルール違反の手助けをしました。深刻なのは、教育委員会も区役所もいっしょになって、学校を企業に明け渡そうとしていることです。
 私は区民の皆さんとともに、夜間塾の取り組みを中止するよう働きかけていきますが、同時に、長期的には区政を転換しない限り、公立学校の教育は救われないと訴えています。全国の皆さんのご注目、ご支援をよろしくお願いします。


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