労働新聞 2007年12月15日号 通信・投稿

突然の農協合併提案
白紙撤回求めて署名活動

総会まで20日間の攻防
「合併でいいことはない」

農業者 岡垣 清光


 「農協がやっていけないから、合併に協力してくれ」と組合員への説明会が開かれたのが十月半ばでした。この合併問題に、この二カ月間ほど忙殺される毎日でした。
 今年の総会の時には、「合併に向けた検討を進める」とは決まっていましたが、それ以来、何を検討したのか何の経過説明もなく、突然の説明会で、「一カ月後に町長の立会いで合併予備調印をする。合併を決める臨時総会の開催。来年四月に合併する」という日程まで示されたのでした。
 しかも、これまで組合員が努力して築き上げた直売所の取り組み、各部会の取り組み、契約栽培、コメの買い取り制度など、県下でも私たちの農協が特色をもってやってきた取り組みをどう続けていくのかなど、具体的な説明はまったくありませんでした。
 また、合併は組合員にとって最も重要な問題であるにもかかわらず、校区単位での説明では不十分だから生産組合ごとに説明会をするよう求めても、誠意のある回答はありませんでした。何が何でも合併したいの一点張りで、どうすれば今の農協を継続できるかという検討をする気がないとしか見えず、不信が募るばかりでした。
 驚いたのは私だけではありませんでした。生産部会役員や営農組合代表などで集まり、説明会で不明だった出資金の増額問題や現在行っている農協事業を継続する具体的内容について組合長に質問状を出しました。しかし、返ってきた回答はまったく答えになっておらず、従来通りただ農協が苦しいから合併に協力してくれというばかりでした。

合併否決わずかに及ばす
 私たちの農協は組合員千人に満たない小さな農協です。県下にはこうした小さな農協はわずかで、他の農協は合併して大きな農協になっています。県中央会は将来的に県内を三つの農協に統合する構想をもっています。今回の合併劇の背景にはそうした上部からの強い働きかけもありました。数年前にも合併が持ち上がりましたが、そのときは反対が多数で合併は否決されました。私たちの農協は小さいながらも特色のある事業をやってきて、農家も比較的まとまっていると思います。
 私たちは、「合併することで、組合員のこれまでの努力が水の泡になるかもしれない。具体的なメリットやデメリットなど検討もせずに、今の段階で合併に対して賛成することはできない。本当に合併について考えるなら、何年かかっても、組合員にとって今よりも良くなるための検討をすべきである。これまで執行部が独断でしてきた手続きを、直ちに白紙撤回するよう求める」として署名活動を始めました。
 署名活動の中で「あわてる必要はない。合併して倒産したらどうするのか」「町の合併でもそうだろう。合併でいいことはない」「あなたたちについて行きます。がんばって」「国会もねじれ現象だから、国の農政も変わるのではないか。自民党が進めている今の農政は変えられるはずだ」との声が聞こえてきました。
 合併を推進する組合長側は、途中から職員をつかって(圧力をかけて)組合員の書面決議を集めて回り、こちらの反対署名を切り崩しにかかりました。臨時総会までわずか二十日たらずの攻防でした。私たちが集めた署名は、合併を否決するための三分の一にわずかに及びませんでした。臨時総会の当日の参加者も反対の人が多かったのですが、書面決議をふくむ多数で結局、合併は承認されてしまいました。

みんながよくがんばった
 こうしたことがあって、考えて見ますと、農協組合員といってもいまは農業をやってない人のほうが、実際に農業をやっている組合員より多いのです。熱心に農業をやっている人たちとそうでない人たちの温度差があることをあらためて実感しました。
 農家の中でも専業農家は一割にも満たず、大半は兼業農家で、町の内外に通勤しています。私たちのような田舎町の農協ですらそうですから、全国的にみると組合員の八割くらいが実際に農業をやっていないとも言われているようです。これがこの間の政府がやってきた農政の結果だと思います。
 総会が終わって署名活動をやった人たちで集まり、「よくやったのではないか」と総括しています。そして、今回の賛成、反対を問わず地域の農業をどうやって育てていくか、みんなで学習したり考えたりする集まりをつくろうと話し合っています。みんなの意識が高まってきているのを感じました。

バカげた農政に頭に来る
 私自身は、米二・五ヘクタールと野菜五〇アールを作っています。今はブロッコリーの収穫で忙しい毎日です。しかし、年に約三百万円程度の農業粗収入だけでは、肥料や資材、燃料代などを差し引くと、手元に残るのはわずかです。何といっても基幹作物としてのコメが問題です。今のようなコメ政策ではまったくやっていけません。
 野菜も直売所などでの販売も量が限られており、最近頭打ちになってきています。農協や農家の努力では限界があります。コメの消費拡大の掛け声だけではどうにもなりません。実際の家庭の食生活が大きく変わってきた(変わらされてきた)のですから。
 わが国の農業政策にとどまらず、食文化、われわれの暮らしのあり方も大きな転換をしなければ、農村は崩れていくばかりではないでしょうか。
 品目横断的経営安定対策で、経営が苦しくなるというようなバカげた農政には、みな頭に来ています。来年こそ、もっと明るい年になるようにがんばりたいです。


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