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労働新聞 2007年11月15日号 通信・投稿
俳句作りを楽しむ(1)
自分を表現する手段
水津 哲
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はじめに
俳句は短く、誰にでも作ることができる「詩」です。初めての人でも、五・七・五、十七音を数えて作ればいいのです。私の立場を言っておきますと、十七音の中に季語を入れるか、入れないかは、作者の自由です。そうして俳句を作り続けていると、奥も深く、やりがいのある詩の形式だということも、お分かりいただけると思います。
楽しんで作り、ときに苦しんで作ることで、また、句会という集まりに参加して作ったり、みんなで、わいわいがやがや俳句を作る楽しみを、ぜひ味わってみて下さい。
俳句という形式は生きているのです。古くさい俳句ではなく、今という時代を呼吸している俳句を作っていただきたい。俳句は短い形式ですが、自分を表現する手段の一つです。
これから、さまざまな俳句を皆さんに紹介しますので、自分自身に合った俳句を見つけて、是非、俳句を作ってみて下さい。投稿も歓迎、俳句に質問、お望みであれば、添削もします。お待ちしていますよ。
私と俳句との出会い
私は、親が離婚し、小学生のときから、親戚の家に預けられて育ちました。思えば、いくら親戚とはいえ、よく他人の子を育ててくれたと感謝しています。その家は、野菜や雑貨を売る商店と農業の両方を生業としていました。ですから私は、学校の授業が終わると、店の手伝いや、農繁期には農作業の手伝いをさせられました。中学生になると、自分の小遣い稼ぎのために新聞配達をしました。高校二年生までは、本らしい本など一冊も読んだことがありません。柔道部に所属する単なる柔道少年でした。しかし、柔道の練習中に、三度鎖骨を骨折し、体力に自信をなくし、骨折が治るまで、寝て過ごした数日間、隣の小母さんが、『青年の樹』石原慎太郎や、当時人気のあった石坂洋次郎の『若い人』などの本を貸してくれたのです。
退屈しのぎに読んだ小説でしたが、これがなかなか面白かったのです。ですから、私が、文学と名のつく本に接したのは、十七歳です。ですから、皆さんが子供の頃に読まれたような少年少女世界文学全集などは、まったく読まずに育ったのです。
それからは、太宰治や芥川龍之介、夏目漱石など、本を借りては手当り次第に読みました。
青蛙おのれもペンキ塗りたてか 芥川龍之介
有る程の菊抛(な)げ入れよ棺の中 夏目漱石
龍之介の句では、蛙の青さを、ペンキの塗りたてにたとえたことに、新鮮な驚きを感じました。
漱石の句は、友人の妻が亡くなったときに作ったものです。漱石の片思いだったという噂の女性です。教科書などで「古池や蛙飛び込む水の音」松尾芭蕉の俳句を知ってはいましたが、俳句で、こんなことも言えるのかと驚き、私が興味を抱いた最初の作品たちです。
初めて作った俳句
土手焼きの煙にけぶる葉の桜 水津 哲
田舎では、春になると、川の土手焼きをしていました。葉桜になった桜並木が、その煙にけぶっていた景色を俳句にしたのです。この句を、地方新聞の俳句欄に投句したら、たまたま入選して、それで病みつきなったのです。それからは、入選しませんでしたが、気ままに、勝手に、たくさん作っていました。人に言えないような感情を俳句で言おうとしたり、寂しさを俳句にしようとしたり、とにかく、俳句を書くことで、自分自身を慰めていたように思います。
相変わらず、毎日、店の手伝いをして、日が暮れて一日が終わり、遅くまで起きていると、電気代がもったいないから、早く寝なさい、と言われたりしました。当時は、なぜそんなことまで言うのだろうかと、ウラミに思ったりしました。今、自分の子供を育ててみると、そんなことは、どこの親でも言っているようなことです。
とにかく、詩や小説のように長い形式は、考えるのに時間もかかるし、私にはとうてい無理だと思っていました。その点、俳句は短いし、短いので覚えられるし、ちょっとした時間に考えて作ればいいので、私にはちょうどいい長さの詩の形式だったのかもしれません。
社会性俳句運動起こる
原爆許すまじ蟹かつかつと瓦礫歩む 金子兜太
昭和二十年代後半、戦後、労働運動の盛り上がりの中で、社会性俳句運動が起こります。上句で「原爆許すまじ」と決意を言い切って、その時の爆心地の瓦礫の中を這っている蟹の様子を「かつかつと」「歩む」と表現して、人びとの意志の強さをあらわしたような俳句です。また、次のような俳句も作られました。
白蓮(はす)白シャツ彼我(ひが)ひるがえり内灘へ 古沢太穂(たいほ)
内灘は、石川県金沢市郊外の海岸、米軍実弾演習用の基地建設に対して、住民をはじめ多くの支援団体が反対闘争を繰り広げたところです。白い花の咲く蓮田の中を、夏の白いシャツを着たデモ隊が、赤旗を掲げ、労働歌や革命歌を高唱しながら、内灘へ向けて進んでいる様子がよく表現されています。
次回からは、俳句の初歩から少しずつ、俳句の歴史や、上達の方法など、例句を入れながらお話しするつもりです。(十二月十五日号に続く)
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