労働新聞 2007年11月5日号 通信・投稿

映画紹介
「ヘアスプレー」
監督・アダム・シャンクマン

差別反対の強烈なメッセージ
パワーあふれるミュージカル・
コメディ

 舞台は一九六〇年代の米国・ボルチモア。徹底した黒人差別の中で、住居も高校のクラスも公園も二分されていた。そんな町に住む主人公のトレーシー(ニッキー・ブロンスキー)は背が低く太っていて、歌と踊りが大好きな白人の女子高生。若者向けの地元人気テレビ番組「コーニー・コリンズ・ショー」のダンサーになって憧れのリンクと踊るのが夢だ。
 その番組のスポンサーがヘアスプレーの会社。スポンサーは黒人に縮れ毛を伸ばすためにヘアスプレーを売り込もうと、一カ月に一日だけブラックデーをつくり、その日だけ黒人が出演していた。そのスターがメイベル(クィーン・ラティファ)だった。
 先生から罰として居残りを命じられたトレーシーは、居残り組でメイベルの息子のシーウィードらと出会い、意気投合する。偶然にも学校を訪れたコリンズから声をかけられたトレーシーは、なんと番組のレギュラーになって人気者となる。超ビッグサイズを気にして十年近くも家に引きこもっていた母親のエドナ(ジョン・トラヴォルタ)は、娘のためにマネージャーを引き受けて、見違えるように活動的になる。トレーシーはそのことが何よりうれしかった。
 それを面白く思わなかったのが、番組制作の実権を握っているベルマだ。彼女は保守的な差別主義者で、「黒人といっしょに番組で踊りたい」などと公言してしまうトレーシーを何とかして番組から降ろしてしまおうと画策する。
 ある日、トレーシーはシーウィードからメイベルのパーティーへ誘われる。メイベルは「境界線を越えてきた」トレーシーたちを大歓迎する。娘を連れ戻しにきたエドナも、すっかりメイベルたちと打ち解けてしまう。
 メイベルからブラックデーが廃止されることを聞いたトレーシーは納得できず、テレビ局にデモで訴えようと提案する。あきらめていた黒人たちも大賛成する。
 デモの当日、トレーシーもプラカードをもってデモの先頭に立つ。デモ隊はテレビ局前で、警察に阻まれてしまう。「デモなんてやったらブラックリストに載ってしまうのでとんでもない」と止めに来たエドナも、いつのまにかデモの隊列の先頭に立つはめに。白人がデモに参加していることに、みんなが驚いている。そこで、トレーシーは思わずプラカードで警官をこずいていまい、それをきっかけに警官隊がデモ隊に襲いかかってきた…。

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 パワーあふれる歌と踊りでいっぱいのコメディ・ミュージカル。六〇年代米国のファッションや音楽を大いに楽しめる作品だ。ただし、この作品は楽しい中にも、強くメッセージが込められている。せりふや歌詞には黒人差別を告発する鋭い言葉が飛び交う。そして、保守的な白人優位主義者やキリスト者などをこき下ろして、「時代は変わらなければ」と歌いあげる。
 デモでメイベルは「これからも長い道は続く。スタートすればきっと速い」と力強く歌う。トレーシーは、「差別を甘く見ていた。私は闘う」と母親に宣言する。また、「それぞれに違うことが素晴らしいこと」だと母親を励ます。黒人差別だけでなく社会でさまざまな厳しい差別を受けている人に、前を向いて闘おうと呼びかけた力強いメッセージが、作品全体から伝わってくる。
 個性豊かな俳優たちがそろっているが、中でもトラヴォルタ演じるエドナは傑作である。特殊メイクで完全に女装した巨体で踊り歌う、そのコミカルな演技が実に楽しい。また、ラティファの力強い歌声もすばらしい。壁に描かれた絵や写真が歌い出したり、流れ星が夜空を飾ったりとファンタジーもいっぱいだ。
 楽しさと社会性がみごとに組み合わさったパワフルな作品である。百聞は一見しかず。ぜひ、映画館で見てほしい。楽しくて、元気が出て、胸がすく作品だ。(Y)

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