|
労働新聞 2007年9月25日号 通信・投稿
書籍紹介
本田 宏著
「誰が日本の医療を殺すのか」
「医療崩壊」の知られざる事実
医師からの熱いメッセージ
|
著者の本田宏氏は埼玉県の済生会栗橋病院の副医院長であり、現役の外科医師である。「十年後には医師になりたがる人がいなくなるのではないか」との指摘は、衝撃である。現場の医師たちは過重労働で疲れ果ててやる気を失い、過労死や自殺に追い込まれている。そこまで医療現場の崩壊が進んでいるのだ。
この本では、医療現場の現実を明らかにした上で、こうした現実をつくった国の政策を鋭く批判している。
内容を紹介しよう。
●第一章 今、医療現場で何が起こっているのか。
●第二章 どこを見渡しても日本に医師は余っていない。
●第三章 このままでは医療ばかりか日本が崩壊する。
●第四章 日本の医療費は本当に高いのか。
●第五章 医療崩壊をもたらす国の「甘いワナ」。
●第六章 日本の医療に明日はあるのか。
この本を読めば、日本の医療の直面する問題点とその元凶が見えてくる。その中でもっとも深刻なことは、医師不足の問題である。医師不足は医療労働者の過酷労働となり、医療事故などの背景にもなっている。また、最近、小児科や産婦人科が閉鎖される背景に、新卒後臨床研修制度の導入があるが、こうした医師不足はすべて国の指導によってつくられたものである。
国はなぜ医師数を制限しようとしたのか。それは国の医療費を抑制するためである。本田氏は超高齢社会に向かう中で、医療費を削減するという国の考え方を強く批判し、「高齢者の増加にともない医療費の予算を増やすというのが世界の常識である」と指摘している。
もともと日本は医療予算を十分に手当してきたわけではない。医療費を含む社会保障費が国家予算に占める割合は欧米諸国の半分程度である。そのお粗末さを棚に上げ、政府はあたかも巨額の財政赤字の責任が医療費にあるようなキャンペーンを展開し、自己負担増を強いている。また、政府は日本人の負担は少ないかのように説明しているが、これもとんでもないウソだ。日本の実質患者負担割合は一九九八年以来、G7の中で最高額であり、家計に占める医療費の割合は他先進国の倍以上となっている。こうした事実は国民に正しく伝えられず、政府に都合のよいねじ曲げた情報が垂れ流されていることが問題である。
医療制度の複雑なしくみは、国民からはわかりにくいものがあるが、現場の医師たちが語り始めたことは大きな力である。本田氏は国民に日本の医療の現実を訴え、医師と国民を隔てているさまざまな誤解を解きほぐし、医師と患者が信頼し合える医療現場をつくりたいとの思いを熱く語っている。また、本田氏は正しい情報を伝えるために、「闘う医療界のスポークスマンとして私はあきらめない」と述べているが、この決意に拍手を送りたい。(U)
Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2007 |
|