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労働新聞 2007年9月5日号 通信・投稿
長編ドキュメンタリー
マイケル・ムーア監督
「シッコ」
タクシーで患者を捨てる米国
保険会社のための医療制度暴く
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二時間を超える長いドキュメンタリーだが、話の展開が奇想天外で、たいくつする暇もない。sickoとは「病人」「変人」などを意味する隠語。「華氏9・11」のムーア監督が、今度は米国の医療制度にメスを入れる。「自由と民主主義の国」の住民であるムーア監督が、この言葉に大いなる疑問を感じているようすが、ありありとうかがえる。
取材は米国内からカナダ、英国、フランスへと広がっていく。それらの国は医療費がゼロ。「本当にタダなのか」としつこく聞く監督は笑い者にされる。
帰国したムーア監督は、9・11の救援活動の後遺症で苦しんでいる人びとを取材する。かれらは国からの何の保障も受けられずにいた。一方で、政府はキューバのグァンタナモ米軍基地に収監しているアル・カーイダの兵士に「最高の医療を受けさせている」らしい。ムーア監督は治療を求める人びとを連れて米軍基地を訪れるが、あっけなく無視される。
しかたなくかれらはキューバのハバナ市内の病院を、おそるおそる訪れる。「悪魔の国」のキューバの病院は、名前を聞いただけで患者たちを温かく受け入れて、タダで手厚い医療を施してくれた。その上、米国で一個百二十ドルの薬が、ここではなんと六セントで買えたのだ…。
米国の医療制度を一言で言えば、「命のさたは金しだい」ということだ。衝撃的なのは、病院に入院していた患者がタクシーに乗せられてホームレス救援センターの前に捨てられるケースだ。これは日常的に行われているらしい。法外な治療費を請求しておきながら、払えない人は死ねということだ。
取材の中で、金もうけのためには何でもする医療保険会社の汚い手口が明らかにされる。保険会社に雇われた医師は、保険給付金を削れば削るほど給料と地位が上がっていくのだ。これでどれだけたくさんの人びとが泣きをみたことか。保険会社と政治家とゆ着もはなはだしい。
米国の医療は国民皆保険制度をとっていない。ムーア監督の頭の中では「国民皆保険=社会主義=強制労働=共産主義」とイメージが広がっていく。それは米国人に教え込まれた一般的思考経路らしい。しかし、現実はどうなのか。いつまでも国民をマインドコントロールし続けることはできないだろう。
医療保険会社が大もうけし、最高の医療を持ちながらも医療を必要としている多くの国民が切り捨てられている米国社会。こんな米国には住みたくないとだれもが思うに違いない。
しかし、日本政府は医療制度を含めて社会を米国型に改革しようとしている。ムーア監督さえ眉をひそめる米国のおぞましい医療制度は、このまま進めば日本の明日の姿である。(Y)
【全国各地で上映中】
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