|
労働新聞 2007年6月25日号 通信・投稿
零細企業での争議はキツイ
にわか仕込みの知識で交渉
病欠中の給料勝ち取るぞ
流通企業会社員 川本 喜則
|
偏った食事はしてなかったつもりだが、長年の仕事中心の生活のツケが一気に突発、胆石をやってしまった。入院して、病院の白いベットの上で絶食などをするハメとなった。
そして先日、ほぼ一カ月ぶりに会社出勤。長いこと休んだので気が重いが、生活のためには仕方ない。
「給料払わない」…いきなりの洗礼
会社で私を待っていたのは、社長のアリガタイお言葉だった。「働いていないのだから給料は出せない、傷病手当で何とかしてくれ」…初めて出社した日、社長が私に発した言葉だ。
さかのぼって、退院後に会社にあいさつに行った時のことだ。社長は用意良く傷病手当の用紙を準備していて、「診断書をもらってきて書類に必要事項を書いて提出してくれ」と言われた。その時はピンときていなかったが。
傷病手当金とは、健康保険の被保険者が病気やけがのため仕事を休み、給料が減ったりもらえなかった場合にこれを補い生活の安定を図るための手当金で、給料を日割りにした六七%が支給されるものだ。
私の会社の給料は、二十日締めの二十五日現金手渡しの支払い。私は月末から翌月の二十日まで、病気で入院したために二十数日間の欠勤をしたことになる。
私の会社の社長は親会社からの出向で、まったく権限を持っていない。給料の計算や支払いなどの小切手の発行は親会社がやっている。給料も親会社が持ってくる。人事や経営のことなども親会社の社長の言われるままだ。今回の私への対応も、親会社の社長などの入れ知恵で「川本が休んだ間の給料は一銭も出すな」「傷病手当で何とかさせろ」と言われたようだ。
わが社は月に五十万円前後の赤字決算となっている零細企業だ。社員も数人で会社の就業規則もない(せめて就業規則があれば、このような問題が発生した時に解決しやすかっただろう)。
何度か給料アップや残業手当の支給などについて社長と話し合おうとしたことがあるが、社長はわずらわしいことが大嫌いで、のれんに腕押しのごとくノラリクラリとかわしたり、逆に「文句があるなら会社を辞めてもいいぞ」と少しも話も聞かずに怒り始めたり。けんか相手にもならない。まったく頼りにならない社長だ。
社長は昨年、ある一人の社員に嫌がらせをして退職させた。すずめの涙ほどのボーナスをゼロ円にしたり、「会社を辞めろ」「退職金を出さない」などの暴言を吐いたりした。これに怒りが爆発して退職した。私はその社員とともに社長と争うつもりがあったが、その社員は「争うのは好きではない」「自分も辞め時だと思っていた」などと争わなかった。それでも社長から辞めろといっておきながら自己都合退職扱いになりそうだったので、そこは何とか解雇にし、退職金もほんの少し支給させた。
労働組合を結成して社員の諸要求を実現しようと思ったこともあるが、そうなると経営などについても相当に踏み込まなければならなくなるようで、決断できない。
全額獲得・勝利したと思いきや…
社長の発言から数日後、今度は私の反撃の番だ。
まず労働基準監督署に行き、こんな場合の判例や有給休暇のこと、残業手当の支給などについて聞いた。そして、有給休暇は三十五日残っていること、残業手当も百二十万円ぐらいの請求ができること、判例はあるが会社での力関係でもあることなどが分かった。
そんな一夜漬けの知識をもとに、社長に詰問した。「給料の支給を結局どうするのか」「有給休暇を使ってでも全額の支給をしてほしい」「残業手当を正規に要求する方法もあるんだぞ」などと。
すると社長は「悪いようにしないから、静かにしておいてくれ」と、交渉の場から逃げた。
そして二十五日の給料日、親会社から受け取ってきた現金を社長が一人ひとりに手渡した。私には「全額出したから」と手渡された。
結局、病気欠勤中の賃金をいくらにしても、私からその明細やなぜそうなるかを問い詰められることが分かっていたので、それに応じるわずらわしさから逃げるために、給料ではなく立て替え払いのようなかたちで金を渡し、数カ月後に傷病手当が支給されたらその手当て分は会社に入れてほしいというだ。
いちおう大したトラブルもなく、また有給休暇を使うことなく、今までどおりの賃金分の収入を得ることができた。
これで一件落着と思っていた。
ところが、傷病手当が支給された数日後、今度は親会社の社長が私に直接連絡してきて、「傷病手当が出ただろう。だから今月分の給料は実際に勤務した数日分だけにしてくれ」とヌケヌケと言う。親会社の社長の言うことを聞くと今月の手取りは相当に減ることになる。当然「話が違う、給料はいつもと同じ金額でないと困る」と抗議、口論になった。
この親会社の社長も自分の都合が悪くなると最後は「お前のところの社長の判断だから」と逃げてしまった。経過をそばで聞いていた社長に詳しく話すと「給料でもめるのはイヤだ。悪いようにしないから、穏便にしていてくれ」と言われた。
社長自身の長時間労働、わずかな給料、多額の借金を考えると、少し同情もしたくなる。零細企業の置かれている現状をわが社も色濃く反映している。このままだと社員の長時間労働、低賃金も当分変わりそうにない。零細企業での争議の困難さをしみじみと感じさせられる。
さて、明日からどう反撃しようか(続きはいずれまた)。
Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2007 |
|