労働新聞 2007年6月5日号 通信・投稿

20歳代シングルマザーから相談
初めて団体交渉員を経験

企業の本性にショック
仲間と闘い続けたい

労組役員・岡田 敏美

 労働組合執行部のはしくれとなって約一年半。これまで勉強のために団体交渉に入れてもらうことは何度かあったが、先日初めて先輩といっしょに一人の相談員として団交に携わった。

許せぬ セクハラ・退職強要
 相談者はパチンコ店で働く二十歳代のシングルマザーで、相談内容はセクハラ・嫌がらせによる退職強要だった。
 上司から言葉のセクハラ、嫌がらせ、体を触るなどの強制わいせつ、暴力的言動がつづき、最終的に「今、辞めます」と言ったのは彼女自身だが、実際には辞めざるを得ない状況に追い込まれた「退職強要」だった。
 パチンコ店は警察OBや暴力団がらみが多いと聞いていたので、組合結成通知など最初のときは緊張したが、幸いややこしいバックはなく、順調に団体交渉を開くことができた。
 会社は団交を通じて、使用者にセクハラ防止義務があることを初めて知った。セクハラとは何か、どんな使用者責任があるかという点など、使用者の理解は驚くほど低かった。使用者にこうした社会的責務があることを知らせることができたのは一つの成果だろう。しかし、相談者がいちばん求めていた「謝罪」を得ることはできず、最後まで会社には上司のした行為が人権侵害であり、彼女に多大な精神的苦痛を負わせて辞めざるを得ない状況に追い込んだことの自覚はなかった(会社は彼女自身の資質の問題だと言い続けた)。
 私は、団交を通じて、労働者は使用者側にとって尊厳ある「人間」ではなく、利益追求の「道具」にすぎないことを改めて実感した。人権侵害発言も多発し、彼女自身の資質の問題であるとのこじつけが延々と続いたのである。

問題解決は行動で進むと実感
 生まれたときからの悪人なんていないし、人格は主に社会環境によってつくられるもの。私が彼女と話をする限り、彼女をとりまく職場環境は間違いなく彼女の心を暗くして、うつ状態に追い込んだ。その結果、上司を含め社内での人間関係がつくれなくなり、退職に追い込まれた。
 法的にも労働者は快適な職場環境で働く権利があるし、使用者はこれを保障する義務がある。セクハラは人権侵害であり、使用者は防止義務がある。しかし、法律はあくまで一つの武器であり、問題解決は労使交渉や行動によって進められることも実感した。
 会社の態度があまりにも腹立たしく、徹底的にとっちめたい思いがくすぶりながらも、彼女のうつ病は深刻でこれ以上長期化させることはできなかった。会社に対して労働者を、女性としての人権を踏みにじる行為を許すことはできないけれど、彼女自身に闘う気力と体力は残っていなかった。闘いの主人公は彼女であり私ではない……そう自分に言い聞かせてこの案件はそれ以上もめることなく協定書が結ばれ、解決に至った。
 長い彼女の人生を思えば、今回の解決は賢明だったのかもしれない。ただし、使用者の立場からみてみれば、単に法に触れないように対処し、はした金でやっかい払いをした、そんな現実を見たと思う。会社側にセクハラやパワハラが与える精神的苦痛がいかに大きいものか気付かせるにはどうしたらよいのか、これを伝える材料をもっと持たなければならないと感じた。
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 私は今回初めて交渉員を経験させていただき、たくさんのことを学べたのでとても感謝している。一方、使用者の本性を見た気がして、正直大きなショックを受けた。きっと今後、労働者の権利を守るためにがんばればがんばるほど、悲しい現実をたくさん知るようになるのだと思う。人を金もうけの道具としか見ない企業・資本家への怒りをエネルギーにかえて、仲間といっしょに負けずに闘い続けたい。


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