労働新聞 2007年5月25日号 通信・投稿

日本人の食の基本はごはん
農業の衰退は健康の危機

農地荒廃させて「美しい国」?

農業者・大森 澄江

■マラソンに親の承諾書
 季節の変わり目には、なんとなく体がだるかったり、仕事が忙しいと疲れやすくなったりします。元気になりたいと思ったとき、皆さんは何を食べますか? 頭に刷り込まれているのは「焼肉やステーキ」ではないですか。でも、食べた後、胃もたれして薬を飲む、なんて経験はありませんか。
 パンやステーキをたくさん食べても、日本人の私たちは元気になることができません。体が弱っているときは、胃腸も元気ではありません。例えば、もっと弱って病気になったとき、手術などして回復をめざすとき、人はオモユから始まりおかゆを食べます。日本人の食の基本はごはんです。胃腸もご飯を主食とする「つくり」になっているのです。
 米国の占領政策で学校給食はすべてパンにされ、今や日本人はパンを多く食べるようになりました。そして肉や牛乳や乳製品を多く摂取するようになり、「スタミナには肉」という概念が刷り込まれ、エネルギーを炭水化物ではなく、脂から多く摂るようになり、高脂血や乳がんや大腸がんなどが蔓延(まんえん)するようになりました。骨粗しょう症も増えています。
 子どもたちの体は大きくなりましたが、内臓は急には変わりません。体が大きくなった分血管が長くなり、心臓の大きさがそのままの子どもたちは、マラソンをさせるのに、親の承諾書が必要になっています。つまり心臓に負担が多くかかっているので、長い運動には耐えられない子どもたちがいるのです。
 身土不二(しんどふじ)という言葉があります。身と土は二つではないということです。住んでいる土地で取れた季節の物を食べるのが体にいちばんよいということです。日本人は太古の昔から肉を多食してきませんでした。米を主食に季節の野菜や魚介を中心に営々と体をつくってきたのです。この身体の仕組みを急に変えることはできないのです。
 今、病気になると、とてもお金がかかる仕組みがあります。高度な医療は保険がきかず、「命のさたも金次第」ともいうべき世の中に進んでいます。若いうちはそれでも持ちこたえることができますが、体力が落ちていく五十歳代以降は、人生そのものが大変になってきます。これからの時代、老後の保障は多くの蓄えを持たなければ、介護を受けることも、入院することも難しくなっていきます。

■お米主食の食生活を
 安くて安全な国内の「食料」を国民に提供するのは国の義務だと思いますが、政府は日本の農産物を輸出し、安い農産物を輸入するという方向をとっています。また、オーストラリアと経済連携協定(EPA)の協議をしていますが、関税が撤廃されれば、日本の農業は大きな打撃を受けます。
 今、皆さんが食べている大切なお米や野菜の多くは高齢な農業者が生産しています。また、これらを生産する地方は「三位一体改革」の下に財政難であえいでいます。水田や農地を荒廃させて、どこに「美しい国」があるのでしょう。 日本農業の衰退は皆さんの健康の危機であり、日本の危機でもあるのです。今、お米を主食とする食生活と地域の農業を守る取り組みが望まれます。


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