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労働新聞 2007年5月25日号 通信・投稿
映画紹介
「パッチギ! LOVE&PEACE」
(井筒和幸監督)
生き抜く姿、疲れた者へのエール
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大ヒットした「パッチギ!」の続編。前作は高校生を主人公に「これぞ青春映画」という作品だったが、本作は「高校を卒業して社会に出た」ような「大人の作品」に仕上がっている。
舞台は七四年の東京。アンソン(井坂俊哉)は難病を抱える息子の治療のため一家で上京する。医者から「治療にはばく大な費用がかかる」と言われ、何とかして稼ごうと妹キョンジャ(中村ゆり)は芸能界に入る。アンソンはひょんなことから親友となった佐藤(藤井隆)とともに危険なウラの仕事に手を出す。この三人を待ち構えていたものは…。
もがく人間の尊厳描く
アンソンやキョンジャには在日朝鮮人への差別から来る困難が次々と降りかかる。右翼学生による暴力や芸能界でのイジメ、警察による露骨な嫌がらせ職質など。そこにアンソンの父が受けた植民地下の朝鮮での強制連行・徴兵、そこからの脱出劇などのエピソードも差し込まれる。主人公らは相次ぐ困難をドラマのようには解決できず、もがき、悩み苦しむ。
しかし、在日朝鮮人の歩んできた歴史と現実をなぞるようなストーリーでありながら、教科書臭い映画にはなっていない。いわばある在日朝鮮人の一家を題材に、踏みつけられ困難に遭う者が何とか乗り越えようともがく姿の美しさ、生き抜くことの執念を支える人間の尊厳、その力強さを画面いっぱいに表現している。困難に疲れた者の背中をパーンとたたく監督の姿が見えるような気がする。
井筒監督一流のスカッとした娯楽性は前作より薄まった印象があるが、スクリーンから泥臭い生への渇望がこんこんと溢(あふ)れる本作は、激情がほとばしる映画が十八番(おはこ)の監督ならでは。
差別者への強烈なジャブ
とはいえ、やはり監督の枕詞(まくらことば)とも言える「毒」を浴びないと井筒映画を観た気がしない。
映画では、次々と登場する「差別する日本人」の醜さ……歴史に対する無知と他者への思いやりのなさが、実に醜くこっけいに描かれている。痛快なぐらいに。反骨精神を忘れない監督の、強烈なけん制だ。
途中「やっぱり三国人の目だよね」というセリフが出てくる。これはもはや「差別する日本人」の代名詞にもなっている石原都知事を当てこすったセリフか。折りしも石原が製作総指揮を務める映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」も封切られている。この対照、皮肉な偶然だ。
コントラストと言えば、舞台となっている東京都江東区の枝川のコリアタウンの人びとの温かさは対照的だ。枝川の町並みと相まって、実にいい人間味を出している。映画は必ずしも絵に描いたようなハッピーエンドではないが、後味のよい余韻を残しているのはこのためだろう。(T)
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