労働新聞 2007年5月25日号 通信・投稿

日豪EPA
圧倒的な耕地規模の格差
大人と赤ん坊の相撲だ

大問題、広く知ってほしい

宮崎県・農業 日野原 義文

 私は宮崎県の小さな町で農業をやっています。繁殖牛を二、三頭飼いながら、無農薬の野菜をつくっています。夏には、精米所でのアルバイトをしています。
 いま日本とオーストラリアの政府の間で、経済連携協定(EPA)交渉が行われています。世界有数の農業大国・豪州との間でコメや小麦、乳製品、牛肉、砂糖などの農畜産物への関税が完全に撤廃されれば、日本の農業は深刻な打撃を受けます。

EPA以前に深刻な状況が
 しかしこの重大な問題に対して、当の農家の反応はいまいちで、ピンときていないように感じます。その理由の一つに、日豪EPA以前にすでに深刻な状況が来ていることがあると思います。
 米価は下がり続け、今でさえ、つくればつくるほど赤字になっています。日豪EPAで関税が撤廃されれば、もう自家用米しかつくらないでしょう。
 また、酪農家も似たような状況です。つい最近、近所の酪農家の方が来られて、乳価は下がりっぱなしで、さらにエサ代が急騰しているとのことでした。聞くところによると、去年の暮れに比べると二倍近くまであがっているとのこと。自分の知っているだけでも四、五軒の酪農家がやめる、と言ってました。以前なら、こんな時には補助金などが出たりして乗り切っていたけど、今はどこも助けてくれず、子どもたちには「もう自民党なんかには票を入れるな」といっているそうです。
 また、彼が言うには、補助金についても地域格差があるそうです。北海道みたいな所の大きな酪農家は多くのお金がもらえて、自分たちみたいに小さなところには、全然回ってこないと嘆き、もう数年したら酪農はやめる、と言っていました。
 酪農家だけでなく、「えー、あの人が?」というような、良い牛を出していた肥育農家もやめるとのこと。最後に日豪EPAについて聞くと「もう、ダブルパンチやなー」と言っていました。

農業を工業の犠牲にするな
 もし、関税が完全に撤廃されれば、大人と赤ん坊が相撲をするようなものです。一戸当たりの耕地面積は二千倍近く違うのですから、勝負になりません。日本の農家には大打撃です。なんでも、農業の国内生産額が約三兆六千億円、農産加工業の生産額が二兆一千億円の減少、とか言ってもピンときませんけれど。でも食料自給率が今の四〇%から一二%まで下がるとのこと。さらにこの後には、米国やカナダとの交渉が待ち受けています。本当に大問題です。
 こんな状況を少しでもみんなに知ってもらおうと、この前、宮崎市内で学習会を開催しました。この問題は農家に限らず、農業関連産業そして地域全体に影響が出ると言われているためか、消費者の方でも強い関心を持っている人が多くいるように感じました。
 その中で強調したことは、日本経団連がこのEPAの早期交渉を提言している、ということです。どうも、エンジン、タイヤ、テレビ、自動車などを豪州に輸出する時にかかる五%から一〇%の関税の引き下げとの帳消しを狙っているらしいのです。また豪州は資源大国でもあり、そちらの方面にも強い関心があるようです。
 そういえば、ずいぶん前に経済界の大物が吐いた言葉、「食料は、外国から買えばいい」を思い出します。まさに、それが今、実現しようとしています。このことを多くの人に知ってほしいと思っています。


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