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労働新聞 2007年5月15日号 通信・投稿
書籍紹介
金城重明・著
「『集団自決』を心に刻んで」
軍の強制裏づける貴重な証言
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日本軍のいる島だけで悲劇は起こった
教科書検定で沖縄の「集団自決」について「軍の関与・強制」という言葉がすべて削除された。国は今後、「集団自決」が住民の意思によって行われた自発的な死であり、美しい死であると子供たちに教えていこうというのだ。
軍事大国化の道を進む安倍政権は、戦争を美化し、国民を再び戦争に動員するために、軍隊に対する日本人のアレルギーを消し去ることを狙っている。だから、軍隊が住民を死に追いやったという事実をわい曲し、歴史から消し去ろうとしているのだ。しかしこれは、「集団自決」を強いられた人びとに対して、死屍にむち打つ行為である。こうした動きに対しては事実をもって、反撃を開始しなければならない。
今回紹介するこの本は、沖縄の「集団自決」で奇跡的に生き残った金城重明氏の生々しい体験と、平和への思いを綴ったものだ。この本は一九九五年に出版されたものであるが、戦争体験者の貴重な証言として、多くの人に語り継いでいかなければならない重みをもっている。金城氏はこの体験を公表するまでに長い時間を要している。しかしながら、「あの日に死んだ人たちのために、あのような悲劇を絶対に繰り返さないためにも、集団自決の真相を一生語り続けていこう」と決心し、家永教科書s訴訟でも証言台に立った。今回の教科書検定についてもマスコミや集会に登場し、体験を語っている。
この本で語られる渡嘉敷島の「集団自決」のありさまは、まさに阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄絵である。それは一九四五年三月二十八日、米軍上陸の翌日に発生した。その一週間ほど前に、軍は村の青年たちに手榴弾を配った。軍によって自決する決心が与えられ、住民はいつでも死ねる状態に追い込まれていたのである。
金城氏は当時十六歳で、この場で両親弟妹の四人が命を断った。「カミソリや鎌でけい動脈や手首をきったり、紐で首を締めたり、棍棒や石で頭部を叩くなど、戦慄すべきさまざまな方法がとられた。母親に手をかした時、私は悲痛のあまり号泣した」「『集団自決』を遂げた住民の遺体は塁をなし、流された血は小川を真っ赤に染め、その色は幾日も消えませんでした」ーーこうして三百二十九人の村民が残酷な死を遂げた。
渡嘉敷島では住民がいち早く非業の死を遂げ、軍隊は組織的に最後まで生き延びた。金城氏が指摘するように、日本軍がいた島でのみ「集団自決」が起こったことは、「軍の強制」を証明する動かしがたい証拠だ。
金城氏は、渡嘉敷島での集団自決を題材にした曽野綾子著『ある神話の背景』について、「大きな欠陥があった。それは『集団自決』の元凶であった『皇民化教育』への徹底したメスが入れられていない」と批判している。曽野氏は「集団自決は親兄弟の愛によって行われた」と主張している人物だ。
金城氏は、「生より死を願う異常心理に追いつめた『皇民化教育』こそが、あの残酷物語の演出家だった」と指摘している。皇民化教育と、強引な教科書改ざんに共通点を見るからこそ、金城氏は警鐘を鳴らしているのだ。
また、天皇の戦争責任にも触れた上で、「米政府とマッカーサー占領軍総司令部は天皇の戦争責任を免責し、天皇制を占領政策に逆利用する目的で、その存続を認めた。これによって日本国民は歴史におけるけじめをつける機会を失った」と述べている。国家として侵略戦争への真摯な反省をしていないツケは今、噴き出している。
金城氏はキリスト者であるが、「平和構築は宗教・人種・性別をこえて、すべての地球人に課せられた最大の課題」との思いで、平和を語り続けている。
安倍政権がいう教育改革は、国のために死ぬ覚悟をもつ国民を育てることである。これこそ金城氏が警鐘をならす「皇民化教育」にほかならない。教科書改ざんを許さぬ国民運動が求められている。(U)
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