労働新聞 2007年4月25日号 書評

書評
大田弘子・著
「経済財政諮問会議の戦い」

政策決定の内幕あけ透けに

 本書は、大田・現経済財政担当相が、安倍政権誕生直前の昨年六月に刊行したものである。
 タイトルにあるように、大田氏は二〇〇二年以来、内閣府の政策統括官など経済財政諮問会議(以下、諮問会議)の事務方として、小泉政権の改革政治を担ってきた。本書の随所には、三位一体改革や社会保障制度改革など、小泉政権下における政策決定プロセスの内幕が暴露されている。
 本紙ではたびたび指摘していることが、小泉政権の誕生を前後して、多国籍大企業が財界の主導権を握り、日本経団連として経済団体を統合、強力に改革政治を求めた。諮問会議には、「民間議員」という名で財界とその御用学者にポストが割り当てられることで、財界による政治介入が制度化された。小泉政権下では奥田・トヨタ会長や本間・大阪大学教授ら、今は、御手洗・キヤノン会長(日本経団連会長)や八代・国際基督教大学教授などである。
 著者は、森政権当時から存在した諮問会議が、小泉政権下で「変わった」と、明確に指摘している。毎年出される「骨太の方針」で政策論議は事実上終了、官僚などによる「調整型」の政治が変革され、スピードが上がったという。
 また著者は、諮問会議においては「民間人が土俵を設定した」と露骨に述べている。本書を読めば「小泉首相、竹中経済財政担当相、四人の民間議員」という六人が郵政民営化をはじめとする重要政策のほとんどを決めていたという実態が、だれにでもわかるように書かれている。議事録公開など「民主主義」の体裁を取りながら、改革に抵抗する閣僚がだれかをあぶり出すという「効果」について指摘されていることも重要だろう。
 本書を読めば、諮問会議が政策決定、とくに改革政治におけるにおける事実上の「最高機関」となっていることが理解できよう。まさに、諮問会議は「構造改革の牽引役」(著者)なのである。
 そして、これまでも空洞化していた国会はもちろん、政調会や総務会といった与党の諸機構、ときには閣僚さえもが政策決定プロセスから排除され、選挙も経ない「民間議員」と首相などごく少数によって、政策の大枠が決められる。ここには、形式的な民主主義さえも入り込む余地はないようだ。
 さらに著者は、本書を結ぶに当たって、国内における改革の継続と併せて、自由貿易協定(FTA)などの対外経済戦略を指摘している。手法は違えど、同じ多国籍大企業の手先である安倍政権の課題の一つは、ここに明確になろう。
 こうして「断行」された構造改革によって国民生活はどうなったのか。当然のことながら、本書には労働者の生活実感に即した記述は皆無である。とはいえ、改革政治がいかに財界のためのものであるかを理解し、小泉・安倍と続く自公連立政権の階級的性格を暴露し闘う上で、本書は非常に「役立つ」資料である。批判的に読まれることをお勧めしたい。(K)


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