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労働新聞 2007年4月25日号 通信・投稿
知的障害のある娘と生きる
ふざけるな NHK「時論公論」
無責任な施設批判許せない
東京 渋谷 清司
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渋谷と申します。東京在住で、知的障害者の娘がいます。娘は普段は奥多摩町にある東京多摩学園という施設で暮らしています。
今回、皆さんにどうしても聞いていただきたいことがあり、慣れない筆を取りました。
■身に覚えのない施設批判
先日行われた多摩学園の保護者会の会合でのことでした。一人の保護者が「この間、NHKでこの学園のことをひどい施設だと言っていた」と切り出しました。その放送を私を含めてほとんどの人は見ていませんでした。そこである人がNHKのホームページをコピーしたものを皆に配って見せてくれました。
その資料を見て、私は気を失わんばかりのショックを受けました。
それは今年二月十五日の時論公論「施設を出て街で暮らしたい」で、小宮英美という解説委員が話をしています。彼女は「日本の障害者福祉は遅れています」「中でも知的障害者は、町で暮らすのに必要なサービスが不足していて、多くの人が心ならずも施設で暮らしています」「最も際だった例は東京都です」として、「私は奥多摩の知的障害者施設を訪れましたが、近くにあるのは廃棄物の最終処分場と、特別養護老人ホーム、それに火葬場でした」「施設の大半は雑居部屋で、混乱した人同士がいっしょに暮らすことで、障害が増幅される(中略)集団生活を強いられるとパニックを起こし(中略)トラブルが絶えません」などと話しています。
保護者会の会合は騒然となりました。園長さんも青ざめています。「奥多摩の知的障害者施設」と聞けば、奥多摩町にある唯一の施設であるこの東京多摩学園以外に思い当たりません。しかし、周囲に廃棄物処分場や老人ホームなどありません。解説委員の言うようなひどい状況もまったくありません。「この小宮という人が学園に取材に来たのでしょうか」とだれかが切り出しましたが、園長さんや職員さんはじめ、だれも知らないと言います。いったいどういうことなのでしょうか。
NHKに抗議をすると、担当の人間とやらがやってきて、番組でふれたのは同じ西多摩郡の別の施設のことだと説明しました。「解説委員の話を聞くと、だれもが東京多摩学園のことだと思うだろう。謝罪と訂正の放送をしてくれ」などと訴えましたが、誠意のないのらりくらりとした対応でかわされました。後日、学園として正式にNHKに意見書を出しましたが、なしのつぶてです。保護者の間では「訴訟などになった時に備え、謝罪などはしないようにしているのでは」などとうわさしています。
また聞いたところによると、NHKの言う別の施設も、昔は指摘されたような問題もあったそうですが、関係者の努力で今はそのような状況はないそうです。
■地域の人との信頼壊すな
この件以降、私は仕事をしていても怒りや悔しさで涙が出てきてたまりません。園生や職員、私たち保護者、そして学園をつくった先輩方の努力や生きてきた道のりまでも踏みにじられたような思いです。
学園をつくる時、保護者の先輩方は「障害者が差別なしに生きていける場所」「それぞれの能力に応じて仕事を行い、生きる力を身につけていける場所」というような施設の理念と構想を奥多摩町の人に説明して歩き、理解のある地権者の方に土地を無償で借りて施設を建てました。園生のつくるシイタケや自然卵は、地域の人たちにも喜ばれています。
あの「時論公論」によって、「あの施設はひどいところだったんだね」などと受け取られ、長年かかって築いてきた地域の人たちとの信頼関係が壊れることはないか、そうした恐れが頭をよぎります。放送が深夜だったことが不幸中の幸いなのでしょうか。
私は、多くの人に多摩学園を見学してほしいと思っています。園生はのびのびと生活しています。自然の中でシイタケを栽培し、羊やニワトリを飼育し、命と向き合って成長しています。面会日には家族といっしょに美味しい食事をしています。あの放送がデタラメであることがわかってもらえるでしょう。
■冷たい福祉と重なる主張
そもそも、なぜ解説委員はあのような話をしたのでしょうか。彼女は「施設=悪、グループホーム=善」の自説を展開した上で、最後に「去年、障害者自立支援法が施行され、在宅福祉サービスを提供した場合、国が一定の財源を負担することが義務づけられました。自治体や施設経営者も以前より取り組みやすくなったはずです。もっと積極的に『地域移行』に取り組んでほしいと思います」と結論づけています。
まったく何を言っているんだと、さらに怒りがわいてきます。障害者自立支援法が看板だけのもので、実態は予算削減・負担押し付けであることは、関係者ならだれもが知っていることです。地域生活に必要な財政的措置は削っておきながら「障害者を地域へ」などと言うのは無責任にも程があります。
多摩学園は彼女の言うような「収容施設」ではありません。障害者の子どもを持つ保護者は、みんな本当に悩んだり苦しんだりするものです。そうした保護者が互いに支え合い協力し合っています。園長さん、職員さんたちもいっしょです。学園はそういう場なんです。
軽々しく「障害のある人たちの厳しい状況を他人事と思わず、理解して支えることが求められています」などと論じる解説委員には、私たちがどういう思いでがんばっているのか、思い至らないのでしょう。彼女と福祉に冷たい国が重なって見えます。
今はとにかくNHKに対し、心から謝罪し頭を下げてほしいと思う限りです。
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