労働新聞 2007年4月15日号 通信・投稿
貧乏には慣れているが 熟練技術者で月20万円では…
指定管理者導入で賃金ダウン 民営化でワーキングプア増
■金もうけと両立できぬ公的文化施設 私が公立の文化施設で働くようになってから、十五年ほどになります。最近、指定管理者制度の導入によって私たちホールで働く労働者の賃金が大幅にダウンしました。また、市民の企画への参加や文化芸術への思いも押しつぶされようとしています。 ここに至った経過ですが、私がこの仕事に携わるようになったころは、府下の文化施設のほとんどが自治体出資の文化振興財団か直轄管理でした。運営は市の職員と請負の労働者が担っていました。ところが、低金利政策のあおりで金利収入がなくなって財団による経営が成り立たなくなり、地方自治体の出す委託金でまかなわれるようになりました。 公的文化施設の経営は一般に収支が赤字というのが通常です。利用料は、例えば吹田市立の会館「メイシアター」では一日十八万円から十九万円の貸料ですが、同じ規模の民間のホールとなると百万円以上はかかります。 大阪市中之島のフェスティバルホールの場合でも、二千五百席で一日百五十万円の貸料で、毎日のように稼働していますが、それでも赤字です。その近くのサンケイホールは一日八十万円でしたがつぶれました。 利用者は、施設使用料のほかに照明など舞台付属設備の使用料として二十万円から五十万円かかります。 このように、ホールは赤字でなくてはやれない体質を持っています。 にもかかわらず国は、民間にやらせようと二〇〇三年に地方自治法の「改正」で指定管理者制度を導入しました。 〇四年に各自治体は指定管理者を募集しましたが、ほとんどの民間企業が「採算が合わない」と提示された条件を飲みませんでした。森ビルや日立ビルサービスなどの巨大ビルメンテナンス会社も入札しましたが、九割が自治体出資の財団法人が引き受けることに決まったという経過がありました。 大阪市立青少年会館の場合は館内でイカ焼き店を開いていた某ホールディングスが落札した例はありますが、「もしかしたらもうかるのでは」と参入してくる素人の事業家、ビル管理会社、それに企業の宣伝の目的で文化事業に乗り出す大企業と、三つに大別できます。大企業ではサントリーや大阪ガスも乗り出してきました。 ■お粗末な成功例 指定管理者導入の成功例と評価され、全国自治体から視察にやって来ている門真市のホールの例ですが、経営の実態は本来あるべき文化政策とはほど遠く、企業利益追求のお粗末なものです。 〇六年九月に市民文化会館の指定管理者が財団から大阪ガスに移りました。市が支出する費用は、経過措置として財団の経営当時と同じ条件となっており、ホールの貸料は全額を企業が受け取っています。会館の小規模な修理保全は指定管理者である企業が行いますが、大規模なものは自治体が行うことになっています。ですから、実際は自治体は逆に負担が増えています。 大企業の大阪ガスは舞台装置に関してはまるっきり素人の管理担当者を派遣し、責任もリスクも負うことなく利益だけが転がり込むというシステムになっています。一方、役人の天下り先となっている財団は、運営企画に関与しつつ、企画を担当してきた請負の実務担当者を少しずつ減らしています。これが全国のお手本とされている実態です。 ホールで働く大道具や照明の労働者と言えば「一人親方」が多く、セリ装置の操作や高所の照明の点検など危険が伴いますので、熟練技術者でないとできない作業です。さらに客である利用者との交渉まで任せられています。 手にする賃金と言えば、門真市から支払われる人件費の二割をカット、労働者が手にする額は平均して二十万円程度の低額で、もちろんボーナスはありません。 本来、文化芸術は経済的な制限が加わると成立せず、ヨーロッパや米国でさえ税の減免などさまざまな保護をしています。国は「民営化」で新たなワーキングプアをつくり出しているのです。芸術に携わりたくてこの世界に入り、貧乏には慣れていますが、このまま黙って見過ごすわけにはゆきません。怒りがこみ上げてきます。