労働新聞 2007年4月5日号 通信・投稿

働く者が報われる社会に
企業の論理・思想教育はね返そう

親会社の利益独り占め許せん
「こんな給料では…」が合言葉

工場労働者(派遣) 佐久間 幸男

【出勤】
 俺は派遣労働者。
 疲れた身体に「気合い」を入れ、いざ出勤だ。
 途中、コンビニに寄った。みんなパンやおにぎり、弁当を買っている。どこで働いているかは、作業服を見ればわかる。駐車場には運送会社の大型車両が止まっている。ハンドルを握りながら、工場団地の交差点に目を向けた。コンビニが「新装開店」している。道は、通勤の車で渋滞する。
 突然、三十数年前の風景が脳裏を横切った。
 ーー時代は「万博」が開かれたころだった。俺は中学を卒業して、すぐ大手企業に就職した。世間では「金の卵」ともてはやされ、同僚のほとんどが地方からの集団就職者だった。会社では三年間も、社内教育(職業訓練)を受けた。そこではさまざまな技術を学んだ。身体の運動もしたが、軍隊式の訓練で「大変だった」ことを思い出す。
 車窓から見える今の風景は、何かその当時と重なる。しかし、よく見ると、労働者の四割がパートや派遣社員などの不安定雇用という実態だ。昔ではとても考えられなかった事実が、俺の目の前にある。こんなことを考えながら、職場に着いた。

【会社】
 俺の働いている製造現場は、親会社の下の、さらにその下の会社だ。周辺の人の話では、今年度の売上目標は三百億円だという。だが会社のもうけは、たった三億円。一%にも満たない。さらにその黒字を稼ぐために、あと一・五億円分のコストダウンをしなければならないという。
 その中身は運送費が六割、間接費が三割を占め、人件費の削減は一割程度で、賃金はもう最低レベルなのだ。
 一方で親会社は、「計算機」がないと計算できないほどのばく大な利益を独り占めしている。

【派遣会社】
 俺の会社に目を向ければ、いくつもの派遣会社が入っている。昨年、日本経団連会長企業のキヤノンで「偽装請負」が暴露されたが、俺のところも「偽装請負」だった。内部告発をしてもよいが、この先のことを考えると、まだそんな勇気はない(?)。
 それにしても、派遣会社の「手配師」から聞いたことだが、派遣会社もあまりもうかっていないみたいだ。親企業からは「経費を削減しろ」と言われ、現場の労働者からは「賃金を上げてくれ」と責められている姿を見ている。
 派遣会社は、面接で「性格診断」と称して、その人が派遣に向いているかどうか調査し、それをもとに雇うかどうか、どこの現場へ配属するかどうかを決めているみたいだ。だが今は「人手不足」で、人を選ぶ余裕がない。
 一方では、「教育訓練」と称して、品質管理やコストダウンなど企業側の論理で思想教育もやっている。ほんの十日間という短期間だ。俺の時代は三年間もやられた。
 今はとても、技術を取得することなど皆無である。単純作業で、重労働。正社員と同じ仕事をしても、賃金格差は大きい。

【現場】
 俺は「生活保護」以下の賃金で働いている。
 しかし、現場の仲間といっしょに汗を流し、いっしょに酒を飲み、いっしょに冗談を言い合っている。「働く仲間の気持ちは同じだナー」と、日頃から感じている。「こんな給料ではとても生活できない」が合言葉だ。親会社のもうけのほんの一部でもいいからというのは、全員の思いだろう。
 若い頃から、酒・タバコ・競馬・パチンコ・質屋通い・サラ金、等々。俺も資本家のイデオロギーの影響を受けていたことに気づいた。最近では、不安定雇用の若者がデモをしたり、貧乏人が集まりを持ったりということもあるようだ。何か「世の中がザワザワしてきたナー」と感じているのは、俺だけではないと思う。
 いつの日かみんなといっしょに「働くものが報われる社会をつくろう」と言い合えれば、と願いながら、今日も工場でいっしょに汗を流している。
 まずは、職場の仲間に信頼されるようにがんばりたい。テレビの話題やいろんな機会をつかまえて、政治や社会の話をするように心がけていきたいものだ。そのためには、勉強も大切だ。
 この先の「働くものが報われる社会」が見えると、苦労など吹き飛んでしまいそうだ。
 全国の働く仲間の皆さん! いっしょにがんばろうぜ!


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