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労働新聞 2007年3月15日号 文化
映画
「パッチギ! LOVE&PEACE」
井筒和幸監督に聞く
「関西共和国が独立したら、
民兵制度をつくって…
ガキの時分からいつも
そんな夢想ばかりしている
それをそのまま映画にしたら、
おもろいやろな」

話の横路へのそれ方も大きい井筒監督
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一九六八年の京都を舞台に日本と在日朝鮮人の高校生の恋やケンカを活写した映画「パッチギ!」(〇五年)は、笑いと涙で観る者すべての心を強烈に揺さぶり、「青春映画の金字塔」と絶賛された。しかし同時に、朝鮮半島の分断を嘆く歌「イムジン河」をモチーフにし、「映画だけど映画じゃない、事実を伝える最高の教科書みたいなもの」(ヒロイン役の沢尻エリカ)など、社会の断面を鋭くえぐる作品として高い評価を受けた。そしてこの五月、舞台を七四年の東京に移した新作「パッチギ! LOVE&PEACE」(以下、「ラブ&ピース」)がいよいよ全国で公開される。「パッチギ!」と映画観などについて、井筒和幸監督に聞いた。
……前作「パッチギ!」は多くの映画賞を受賞するなど高い評価を得たわけですが、続編をつくられたというのは、監督の中に撮り残したテーマなどがあったのでしょうか?
今回の映画は「続編」という考え方じゃないんですよ。前回ではある時代の京都を描いたんだけど、その京都には京都人しかいないんじゃないよ、朝鮮人もいるんだよと。日韓併合以来百年の歴史があって、それで混在していて、京都人と朝鮮人の間には争いもあるんですよと。それをある在日の一家を通して、六八年という時代で切って描いた。
新作の「ラブ&ピース」では、その在日の一家は、なぜそこに住んでいて、その後どういう生き方をしていくのか、時代の断面を変えて見てみましょうと。さらに切り込みを入れて、裏側も見てみましょうと。そういう発想ですよ。
京都は、京都の人にとってはずっと暮らし続けるところなんだろうけど、在日の人にとっては安住の地ではない。日本社会では就職口ゼロ。芸能界かホルモン屋しかない。落ち着いて暮らしている境遇ではなく、さすらうしかない。
「ラブ&ピース」では、(映画を企画・制作したシネカノン社長の)李さんとそのお父さん、お兄さんの実体験なども使わせてもらって、主人公の一家が難病を抱えた子どもの治療のため親戚を頼って流れ流れて東京へたどり着くという設定ですね。
★枝川は在日の歴史の縮図
……新作では、舞台を東京の江東区枝川に移しています。前作が公開されて各地から「続編はうちで撮って」という声が寄せられたようですが、どうして枝川を選んだのでしょうか?
枝川を選んだのは、枝川の部落の歴史が在日の歴史を語る強いインパクトを持っているから。あそこは戦前にただのゴミ捨て場だったところに在日の人びとが強制疎開のように収容された場所。政治的に、国家の力がはたらいてつくられた部落という意味で、余儀なくされ日本に住まわされた在日の生まれた構図とかぶる。その歴史を語る迫力がある。
前作を観た若者は「強制連行とか全然知りませんでした」「朝鮮高校があるのも知りませんでした」「六八年ってすごい時代だったんですね」とか、だいたいが驚いている。サプライズばっかり。枝川にもそういう心を突き動かすものがある。
ただ、映画の中では枝川の歴史を語る時間がなかった。紙芝居の中で一分ほど紹介しただけ。残念ながら。枝川の歴史そのものに興味はつきないけれど、それとして語るには「パート3」を撮らなきゃ足りない。
……新作の「ラブ&ピース」という副題に込められた監督の思いなどは?
いや、題名は僕がつけたんじゃないけど、反語としていいなあと思っている。「憎悪と戦争」、人間はこれを繰り返している、それが世の中の実際なんだと。僕はそういうところにしか興味がない。ラブとかピースとか、そんなものはこの周り(にあるラブホテルにいる連中)にまかせておけおけばええ(爆笑)。
……監督が在日朝鮮人の歴史と現状に強く関心を持つようになったのはなぜなのでしょうか?
それはやっぱり、僕が奈良で生まれ育ったから。奈良や大阪、京都は朝鮮人と密接に育んできた長い歴史がある。そもそも日本の国家体制は渡来人・朝鮮人がつくったものだし、「あすか」も朝鮮語。
この間、NHKスペシャルでやってたけど。大化改新について。あれは「日本書紀」では、改革の障害となっていた蘇我入鹿に対する中大兄皇子や中臣鎌足のクーデターと記されておったけど、蘇我入鹿の邸宅跡の発掘調査や「日本書紀」を古代中国語から分析する最新の研究で、実は大化改新の真相は渡来人の蘇我入鹿に対する「反動的クーデター」で、その歴史を改ざんして「日本書紀」を書いたとか。いまの世界にも通じるところがある、そういうスリリングな話やった。
そうしてその後つくられた平城京の九条のあたりに僕の実家がある。たかだか千数百年前の話。歴史を知り、いろいろと考えると、おもろいでしょ。いろんな夢想ができる。
★共産主義の発想おもしろい
「パッチギ!」の中で、主人公の康介が友だちと「なんで戦争やるんやろ」「国がやるからや」「国って何」「京都だけで独立してまえばええんちゃうか」みたいな会話を大真面目にしてるけど、僕なんか、昔からいろいろそんないろんな夢物語ばかり考えている。「関西共和国が独立したら、軍隊は、憲法はどうしよう?」とか(笑)。
マルクスとかレーニンとか、彼らにも似たような発想があったと思いますよ。英国とか帝政ロシアとか、富める者と貧する者の差がとてつもなく激しくて、ぜいたくざんまいの貴族に、軍隊は暴力的。いっぺんこいつら全員殺してやろうと。どういう世の中になればええんやと。おもしろい発想ですよ。共産主義の考え方・発想までが滅びたわけじゃない。権力を根絶やしにしたい、そういう妄想はおもろいよね。
映画っていうのは、そういう発想でつくるからおもしろい。生活のため、金を稼ぐための映画づくりなんてナンもおもろない。ピカソだって、ゲルニカの町が空爆された悲惨な現状を見て、その衝動であの大作を描いた。それが芸術。値段なんて、後からついてくる話。
結局、僕はそのまま夢想し続けている感じやね。地に足着けて働くのも嫌い、ゆえにわれここにあり、というような感じで。
ただ世の中にいる以上、地に足着けて働く人びとを励ましてあげたいとか、苦しんでいる人にちょっとでも楽なひと時をあげたいとか、しょげとるやつにちょっと一日ものごと忘れさせてあげたいとか、そういうのが僕の仕事だよね。
……ありがとうございました。
井筒 和幸(いづつ かずゆき)
五二年奈良県大和郡山市出身。映画監督。代表作に「岸和田少年愚連隊」「のど自慢」「ゲロッパ!」「パッチギ!」など。テレビやラジオでも活躍中。
「パッチギ! LOVE & PEACE」
5月19日(土)より全国一斉ロードショー!
監督:井筒和幸
出演:井坂俊哉、西島秀俊、中村ゆり、藤井隆
音楽:加藤和彦
配給:シネカノン A-Line
(C)2007「パッチギ! LOVE & PEACE」パートナーズ
公式サイト
「パッチギ!」DVDも絶賛発売中!
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