労働新聞 2007年3月5日号 通信・投稿

ある特別養護老人ホームの実態
デタラメなヒヤリハット報告書

密告制度で労働者を監視

特別養護老人ホーム職員 今田 清晴

 特別養護老人ホーム○○の介護事故ヒヤリハット報告書の問題について述べる。これは一方的に人権侵害をするものである。
 この報告書は何の調査も審査もなく、だれでも勝手に作成することができるもので、職員が頻繁(ひんぱん)に出入りする寮母室と女子更衣室兼休憩所の掲示板に張り出される。張られた書類をはがしたり捨てたり修正したり、破棄することは許されない。しかも実名が記入されている。
 各個人の独断と偏見による一方的な視点で、想像であろうが妄想であろうが、故意にねじ曲げた話でも自由自在だ。だが、まったく根も葉もないということは少なく、遠くから見ていて危険そうに見えたとか、隣の部屋で物音が聞こえたという程度でも誇張されて書かれる。その内容はとんでもないものであり、入居者である老人が今にも殺されそうだったとか、死にかかっていたかのように平気でウソを書く。
 名指しで誹謗(ひぼう)中傷された職員は、何もわからない。突然園長に呼び出され、厳しい追及を受ける。ここでいくら弁解しても納得してくれない。結局は、このニセの報告書が事実とされてしまい、他の職員や主任などの関係者に閲覧される。つまりこの密告制度の恐ろしいところは、事実でないのに事実とされてしまい、いくら弁解しても抗議しても、まったく受け入れてもらえないということだ。
 それだけでなく、この報告書はいつまでも掲示板に張られてさらし者にされる。つまり見世物にされる。本来はこのヒヤリハット報告書は事故防止のためであったが、今では単なるいじめや嫌がらせの手段だ。
 この報告書をしつこく出す人物は、決して自分のミスは報告しない。また多くの場合、他人のミスを指摘する者は他の者と協力して仕事をしない。つまり他の人を助けることなく、周囲で傍観して、ミスを発見するとすぐに報告書を作成する。事故防止のためにいちばん良い方法は、こういう連中をなくすことだ。他人のミスを待ち続けるのなら、協力して仕事をするべきなのだ。
 この施設では、事故が起こりそうだったということで勝手に報告書を作成する。だが、実際に事故が発生してしまうと、隠そうとする。これは奇妙な態度だ。

不正なルールを押しつけるな
 私は納得がいかないので、介護職員が閲覧する連絡帳に「ヒヤリハット介護事故報告書には正しいことを書いてください」と記入した。するとたちまち主任がやってきて、これを書いたのはあなたかと問い詰めてきた。さらに「あなたはこの施設の方針に反することをするのか?」と脅してきた。かれは園長の直属の部下だ。
 しかし施設の方針とは何だろうか? それはヒヤリハット報告書によるいじめを施設として公式にやっているということなのか? 本当に事故防止が目的であるなら、きちんと徹底的に事実関係を調査し、正確なことを調べるべきだろう。それを一方的に単なる想像や妄想や誤解や偏見や幻覚や錯覚で作成したデタラメな報告書を掲示板に張り付け、強制的に読ませて確認サインや印鑑まで押させるのは異常だ。それは少しも事故防止にはならない。むしろ職員間の不信感をあおり、疑いを深め、協力して仕事をできなくする。このような汚い手口を続けるのであれば、非常にまずいことになるだろう。
 私は決してこの施設を攻撃しようというのではない。むしろ少しでも改善してほしいと願う。だが、施設独自の方針が法に反する限り、受け入れることはできない。日本国内にある限り、日本国憲法を守るべきだし、既存の法も守らねばならない。それに反して、施設独自のねじ曲がった不正なルールを一方的に押し付けることはできないのだ。
 施設という閉鎖的で陰湿な空間では、長い年月により異常で異様な独特の風習ができてくる。それは世間一般の感覚とは隔絶し、非常に奇妙なものだ。そしてそういう状態の中で慣らされてしまうと、それが普通のことになってしまう。だがそれは正しいことではない。不正が発覚すれば冷たく突き放され、どうして国のルールを無視したのかと厳しく問われることになる。そうなるのはごめんだ。


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