労働新聞 2007年3月5日号 通信・投稿

映画紹介
「キトキト!」
監督 吉田康弘

肝っ玉母ちゃんと子供たち
ハチャメチャだけど愛がある

 「キトキト」とは富山弁で「生きがいい」という意味。この作品の舞台は富山県高岡市。そこに住むキトキト家族の物語だ。何事があっても子供の味方である母ちゃんと子供たちのかかわりは、ハチャメチャだけど愛がある。殺伐とした社会、忙しい日常で忘れそうになる「自分」を呼び覚まし、見る人を優しい気持ちにさせる作品だ。

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 肝っ玉母ちゃんの智子(大竹しのぶ)は高校生の優介(石田卓也)と二人暮らし。パチンコ大好きの舅の裕次郎(井川比佐志)が近所に住んでいる。優介の姉の美咲(平山あや)は、「愛に生きる」ために男と駆け落ちして以来、音信不通だ。
 夫を亡くした智子は二人の子供を育てるために必死で働いてきた。学研のおばちゃん、ヤクルトおばちゃん、生保のセールスレディ、タクシーの運転手…。そして、交際相手の佐川(光石研)の援助を受けて、念願のスナックのママとなる。
 優介は高岡の大仏様の顔にスプレーで落書きをしたことで、高校を退学となってしまった。智子は専門学校に行くように勧めたが、優介はこの退屈な町から飛び出すことを決め、暴走族仲間で親友の真人(尾上寛之)を誘って東京に向かう。
 東京・新宿に着いた二人は歌舞伎町のホストクラブで仕事を見つけ、一見華やかな世界に入っていく。そこで優介は客の藍(伊藤歩)に出会う。優介はホストとして藍の指名を受けるべく奮闘するが、不器用な優介の願いはなかなか届かない。そんなある日、突然智子が東京に出てきた…。

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 スケ番だった美咲を更生させるために、包丁を振りかざして「あんたを殺して私も死ぬ」と叫ぶ智子。「優介がクズなら、あんたらはカスや!」と高校の先生に消火器を振り回す智子、娘に再会してビンタしたものの「生きていてよかった」と涙する智子。無条件に子供を愛する母の姿がまことにほほえましい。智子にとって子供たちは宝であり、生きた証なのだ。
 しかし、そうした母の愛も、子供たちにはうっとうしいものでしかない。とりあえず家を飛び出した優介だが、厳しい現実の中で「おれは何をしたらいいか、わからんがや」と叫ぶ姿は印象深い。二人の子供たちもやがて「自由行動」の時期を終わり、大人になっていく。これは子供たちの自立の物語でもある。

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 吉田監督はどこにでもあるような親子の日常生活や感情を、刺激的にユーモラスに、テンポよく描いている。上からでもなく下からでもなく、同じ目線で描いたところに共感を覚える。
 また、登場人物たちを、それぞれ個性的な俳優たちが演じているところもみどころだ。中でも大竹しのぶの演技は迫力満点。井川比佐志のチョイ悪じいさんも味がある。
 子供が親を殺したり、親が子供を殺したり、兄弟、夫婦で殺し合うような家族をめぐる悲惨な事件が相次ぐ社会。この社会を反映して最近の映画は殺伐としたものが多いが、この作品にほのぼのとした温かさがある。(Y)

三月十七日から各地で公開


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