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労働新聞 2007年2月25日号 通信・投稿
映画紹介 「墨攻」
日中韓合作映画
監督・ジェイコブ・チャン
「墨攻」の衝撃ーー
アジアの時代の幕開けを予感
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偶然、予備知識もなく時間つぶしに飛び込んだ映画館で上映していた「墨攻」。奇妙なタイトル。二時間十分の長さ、中国語、その字幕。はじめは慣れないが、しかし、ラストシーンまで身を乗り出し、場面、場面に引きつけられ圧倒されて見終わった。
紀元前三七〇年の中国、戦国時代、巷淹中(アン・ソンギ〈韓国〉)率いる趙の十万の大軍が住民わずか四千人の梁城に攻め入ろうとしていた。梁王(ワン・チーウェン〈中国〉)は墨家に援軍を頼んたが、墨家の革離(アンディ・ラウ〈香港〉)がたった一人で梁城に到着する。全権を粱王から与えられた革離。女性騎馬隊長・逸悦(ファン・ビンビン〈中国〉)の助けも借り、早速城を守る準備に取りかかる。趙軍の指揮官・巷淹中は革離を好敵手と見なし、やがて激しい攻撃を開始する。最後、戦いは革離、梁王側の勝利となるが、革離たちは、武器と武具を捨て農民と共に故郷へ帰っていく。
戦乱の世で「非攻」と「兼愛」(孫文の「博愛」を思い起こす)を掲げ、しかし弱者を守るためには戦闘のプロとなった思想集団・墨家。
そんな彼らを題材にした日本人の小説とコミック「墨攻」。紀元前の話とは、とても思えない。日本はやっと水田でのコメづくりを始めた頃である。その作品を、初めて、日本、韓国、中国、香港の三カ国一地域が手を結んだ壮大な映画が実現した。中国人民解放軍が参加した群衆シーン、中国の広大な大地を背景にした戦闘場面。テーマの雄大さ、ストーリーの面白さ、スケールの大きさ、画面の美しさ。アジアを代表する作品が生まれたと感じた。
日本の川井憲次の音楽もアジアの薫りがして、この映画にふさわしい。中国の映画には「紅いコーリャン」「ヒーロー」「山の郵便配達」など…それぞれ、名作、小品が無数つくられたが、この水準を抜き、今抱える東アジアの状況とも切り結ぶ、大きなテーマを秘めたこの映画に思わず引き込まれてしまった。
「墨攻」は日本の最高峰と言われた黒沢明の「七人の侍」、「影武者」を完全に超えた。「蜘蛛の巣城」では三船敏郎を狙った弓矢シーンを大島渚に揶揄(やゆ)されたが、この映画ではこの弓矢シーンがリアルにふんだんに出てくる。いよいよ本格的に、映画の世界でもアジアの時代が幕を開けたと実感する。
古い、私たちの映画世代にとって、リアリズム、叙情派、社会派などはフランス、日本映画だったが、娯楽映画は間違いなく米国映画であり、またそもそも映画の大半が米国映画であった(テレビ映画も)。その米国映画がCGの使いすぎか、またその幼稚な政治性か(戦争映画も)、はっきり言って力を失いつつある。
変わってアジアの映画は意欲的であり、実験的で面白くかつ政治的であり、また新たなアジアの映画の出現が期待される。時あたかも、核をめぐる六カ国協議。まさにこの映画の通り、歴史の推移が見事に象徴された一つの結果をもたらした。日本と米国の支配層の衰退、孤立がいっそう明らかになった。
この日・中・韓三カ国に、映画好きの朝鮮民主主義人民共和国も加わった、四カ国の作品ができればと期待したい。
全国で上映中
関連書籍
●酒見賢一著「墨攻」新潮社文庫/三百八十円
●森秀樹・漫画/「墨攻」小学館文庫シリーズ/各六百十円
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