20011215

 

私は派遣アルバイター(下)


若者が「派遣」を選ぶ理由

東京・川瀬 由実


■倉庫の現場で■
 別の仕事で、東京湾の方面に出かけた。倉庫街はその方面に集中している。
 冬のイベント用の飾りをつくる。ただただ、きれいな紙を通した針金を発砲スチロールの球に刺していくだけの単調作業だが、納品が明日らしく、社員の人はイライラしている。
 私が聞いていた就労時間は夕方6時まで。ところが現場に着いてみると、「夜8時まで」とのこと。聞いてないよーという具合だ。ここでも、だれに文句を言っていいのやら、自分の身の置き場を模索してもらちがあかない。これは、とにかく無意識にやるしかない。
 手の皮はむけてくるし、気を失いそうになりながら、何とか8時を迎え、ようし帰るぞ! と思ったら、「おーい、9時半まで残業していってくれないか」と社員のおっさん。おいおい、何をぬかすのか、わしゃ帰るぞ! と意を決し、かわいそうなおっさんたちを残して退散した。申し訳ないが、私ら使い捨てできるコマじゃないんです。ひどいようだが、社員じゃないので「愛社精神」は皆無だ。

■アルバイターの事情■
 ここで1つ言えるのは、私たちの直接の雇用主はだれだ? ということだ。派遣会社と契約しているので、倉庫と契約しているわけではない。そのため、現場では雑に扱われる。でも、それはここの仕事の現状なんだから、仕方がない。ところが、「今日はこれこれこういう内容で、どうにかならないか」なんて派遣会社に言っても、「はあー、私たちはそこまで関与していないもので…」と言われて終わるのがオチである。あー、腹の虫がおさまらない。先にも述べたが、派遣のアルバイトをしている人たちの構成は、学校が忙しく、固定のアルバイトを入れたくないという学生、フリーター、就職浪人、家計を助けるために来ている主婦、年配の女性などである。なぜこんなめちゃくちゃな条件のもとで、それでも働いているんだろうと思って、さまざまな人に話を聞いてみた。
 一つは、正社員になるまでの、場つなぎ的就労。派遣なら、面接日は休みが取れる。就職の面接を各地 で受けていて、蹴落とされているが、もし奇跡的にでも決まったら、固定のアルバイトをしていると抜けにくくなるから、派遣で食いつないでいるといった人たちが大勢いる。
 もう一つは、年配の女性。パートでは時間が短い、でも日勤では雇ってくれない! そんな事情がある。
 最後に、これは問題だ、と驚いた話がある。
 今の若者の考え、社会現象というべきなのか、「1つの職場で働いているよりも、人間関係が1日限りだから、わずらわしくなくてよい」という。それが仕事の動機の大半を占めているから、どんなに条件が悪くてもやっていけるとのこと。それと、きちんとした職場で働くとなると、茶髪は禁止とか、条件がつく。それが嫌なようだ。給料即日払いという点でも、とにかく自由に生きたい若者の条件を取りそろえているのが「派遣」なのだ。考えたくはないが、それが現状だと思う。

■派遣アルバイターを生む社会的背景■

 確かに、今の若者には、仲間と共に、和気あいあいと職場で働くという感覚が、欠如しているように見えるかもしれないが、それは明確に社会現象であると思う。ろくに職もなく、また就職できてもつらいという現状の中で、彼ら・彼女らがそういう選択をしているということに過ぎない。
 私が話をした男性は、「今、就職したとしても、この先どうなるかわからないし、こき使われて一日終わっちゃうからね。俺の友だちなんか、夜中まで働かされて、ストレスがすごいらしい。まだまだ遊びたいし、やりたいことがいっぱいある。だったら自分のやりたいようにやれるのが一番いい」と言っていた。
 そう思わせる世の中なのである。私だってそう思う。社会の中で働いてみたいと思わせる要因が何一つない。若者にとって、将来は暗闇だ。生活の保障とか、それ以前に、ストレス漬けの毎日に浸ることを回避しているのだ。だから、派遣アルバイターは日を追うごとに増加していく。自分がどこに「属して」いるのかもわからずに、日々使い捨てされている。

■安心して、楽しく働ける職場をよこせ!■
 いつまでこんな状況にさらされるのだろうか。若者は、好きでぶらぶらしているわけじゃない。安心して楽しく働ける職場をちょうだいよ! と、声を大にして叫びたい。
 問題が国にあるとすれば、今、職がなくて「派遣」で働かざるをえない若者みんなで、厚生労働省にでも押しかけたろか。国民年金払ってたら、今生活できないし、将来も生活できないなんておかしい。税金で肥え太っているやつは誰だ?おいしい思いしているやつはたたき出せ! と思っている。そういう人たちこそ、痛みを被ればいい。

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